1216 鉄道を作ろう
というわけで鉄道を作ることになりました。
まあ、単純ながらこれよな。
運送の革命児といえば。
かつて騎馬が世界を縮めたのちに、さらに世界を縮小させたのが蒸気機関車。
荷駄を遥かに超えるスピード、馬力でもって文明を進めることに貢献した。
レールの敷かれた道こそ、人類の進歩の道と言っても過言ではない。
「というわけで、これから鉄道を作ろうと思います」
俺の宣言に、関係者の大半がキョトンとした表情だった。
頭上に浮かんだ『?』が見えるかのようだ。
ただ一部の人々は慣れた様子で『旦那様がまた変なこと言い出したわねー』『ご主人様がまた変なこと言い出したのだ』という感じですべてを受け入れてくれた。
「あの……聖者様?」
困惑が支配する会議室で、勇ある者が口火を切っておずおずと手を挙げる。
「その……鉄道というのは、何なのでしょう?」
「てつのみち?」
「道を鉄で舗装するのか? なんでそんな酔狂なことを?」
と農場関係者だったり、各国の使者として出席する人々は混乱し、首を傾げるばかり。
「わかった!」
と言って立ち上がる者一人。
絶対わかってないと確信を持てる。
「鉄は表面がツルツルするだろう! それを利用して道の上をツルッと滑っていくんだ!」
「そうすれば移動の体力を節約できて、ひょっとしたら移動時間も短縮できるかも!」
「なるほど!!」
なるほどじゃねーよ。
そんなの曲道一つあればアウトじゃねーか。猛スピードでコースから飛び出すぞ。
俺は鉄道の何たるかを噛み砕いて説明した。
皆に伝わるかわからないけれど。
「伸ばした鉄の棒の上を車輪が辿っていく?」
「どうしてそんなことを?」
「普通に地面の上を走った方がいいんでは? 馬車みたいに?」
それはそうなんだけれども……。
俺もそこのところはようわからん。
でも歴史上、あそこまで鉄道が大繁栄したことを考えればきっと凄まじいメリットがあるんだよ!
そうに違いない!
だから俺はこのファンタジー異世界に鉄道をもたらして見せるんだい!
やるべきことは二つ。
一つ、線路を敷くこと。
線路はどこまでも続かないと列車は走っていかないからな。
二つ、列車を製造すること。
線路と列車、両方が揃って鉄道は完成する。
他諸々細かいことは山積するけれども、それらを片付けて必ずや異世界鉄道を実現して見せる!
* * *
そういうわけで鉄道を作っていきます。
いきますとは言ってもね。
どうしていいかサッパリわかんねえ。
だってそうじゃん?
いくら異世界の知識を持ち込んできたマレビトと言えども、何でも知ってるわけじゃないんだよ。
知ってることだけしか知らないんだよ。
列車や線路の製造法なんて専門家でなければ知りようがないわ。
ならば俺たちの異世界鉄道計画は早くも頓挫してしまうのか?
そんなことはないご心配なく。
俺には頼もしい味方が付いている!
俺は農場のわが家へと戻り、その一室に祭ってある神棚へと向かう。
この神棚は我が氏神にして造形神ヘパイストスをまつる神棚だ。
俺は毎日ここへ手を合わせ、日々を健やかに過ごせることへの感謝と、明日の平穏を祈って幾年。
俺の信仰と敬虔さの象徴ではあるが、この神棚にはもう一つ機能がある。
ここへ神様の大好物……おむすびを方法すると、そのご褒美として機械の設計図が空から降ってくるのだ!!
それは造形神ヘパイストス様だからこその有難いご利益!
俺はかつてこのご利益で大型船の設計図を手に入れ、見事完成させることができた!
その時と同じ奇跡を再び!
造形神ヘパイストスよ!
こないだアロワナさんからお裾分けしてもらったワカメから開発したワカメおむすびを奉納します!
その代価として鉄道関連の設計図をもたらしたまへ!
たまへ……!
まへ……!
……。
俺の祈りが通じたのか、天から光と共に降り注ぐ神託があった。
――『RGマイティストライクフリーダムガ○ダム待ってるんだな……』
ん?
何の話?
神の物欲にまみれた呟きとは無関係なところで、なんかが空からヒラヒラと落ちてくる。
……これは!
これこそ鉄道の設計図!
ありがとうございます神よ!
この神が一番頼りになる!!
なんか煩悩っぽい独白が聞こえたような聞こえてないような気がしたけれども……!
よし! 天命は尽くされたのでここからは人事だ!
与えられた設計図を基に、異世界鉄道を完成させるとするぞ!
さてそのためにも与えたもーられた設計図を凝視しているところなんだが……。
思ったより複雑だな、列車の構造って……。
いう手も俺は以前、動力船を完成させた実績があるので『今度も大丈夫!』とタカを括っていたんだが。
どうやらそれより遥かに複雑な工程になりそう。
何故ここまで複雑に?
変形ロボットじゃあるまいしここまで複雑な機構取り込むことある。
……まいったな。
想定したより全然製造が大変そう。
冬の運送事情もあるのでできるだけ早く……できれば一週間以内に開通させたかったのに、これでは予定に間に合わなそうだな。
……え? 鉄道建設舐めすぎ?
「ご心配ありませんぞ我が君!!」
うわぁビックリした?
何?
気づけばオークボ率いる農場オークたちが俺の前に居並び、跪いている。
「我ら農場オーク、建設については一朝秀でたところがあると自負しております! どうか我が君の偉業を達成するお手伝いをさせてください!」
皆!
そうだ、一人では不可能なことも複数人で協力すれば、どんな困難だろうと乗り越えられないことはない!!
「我々ドワーフにも協力させてください! 鉱物の扱いなら全種族の中でも我らの右に出る者はいません!」
「精密な測量が必要なら、魔法でお手伝いできることもあるかも……!?」
「エルフ族だって、こう、自然の趣ある装飾を!」
皆が手助けしてくれる。
よし、この勢いなら鉄道もすぐに完成するぞ!
力を合わせて鉄道という線で都市と都市を……人と人とを繋ぐんだ!!
「ふーん……これならアタシにも手助けできる部分がありそうねえ」
あッ、プラティ?
プラティまでいつの間にか鉄道の設計図をのぞき込んでいた。
手助けって?
……あッ、もしかして列車の中に水槽を作るとか? 観賞用?
「いやそうじゃなくて……ここに書いてあるじゃない。人工知能の搭載って」
へえ……どこどこ?
あッ、本当だ。
人口知能搭載部分……って。
なんで?






