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1173 お茶会は淑女のコロシアム

 引き続き撲殺天使ソンゴクフォンだコラァー!


 ついにお茶会当日だ!

 誰でも来やがれ正面から叩き潰す!!


「なんでソンゴクフォンのヤツは、あんなにキルマインド高いんだ?」

「シーラ前王妃に何かしら吹き込まれたんでしょう。ヒトを乗せるのが上手い御方です、相変わらず」


 誰が何というをあーしだけは最後までパッファ姐さんの味方だー!

 旅の仲間の絆を舐めんな!

 不当にパッファ姐さんを貶めるヤツらは『神の炎』と書いてウリエルにしてやらぁー!!


「落ち着け。とりあえず茶会の準備が済んでねーから。セッティング手伝って」


 はーい。

 まったく準備まで手伝わせるなんて、パッファ姐さんは人使いが荒いしぃー、ぴえん。


「うっせぇ、アタイだって今日のお茶会に際してルンルンとは言えねえテンションなんだよ。近所のオバサンらと額突き合わせるよりもモビィやグッピーの顔を見ていたい」


 己が子どもたちの名を呼びながらパッファ姐さんは渋面だった。


 当の子どもたちは祖母であるところのシーラ前妃様が面倒を見てくださっていて。

『子どもたちのことは心配せずに全力でぶちかますがいいわ』と仰っていた。

 ぶちかますって何を?


「ソンゴクフォン、茶の手配はキッチリ済んでるんだろうな? エルフさんのファーストフラッシュ紅茶だぜ? 三級茶葉じゃ来客に舐められるからな」


 当然っすよ姐さん!

 このソンゴクフォン、姐さんのメンツを汚すようなマネをするはずがありやせんぜ!

 あーしは姐さんの忠実なしもべですから! へっへっへ!


「ギャルから、三下チンピラキャラにシフトチェンジしていますね」

「パッと見わかりづらい分、親和性高いんだろうなギャルとチンピラって」


 ランプアイさんも本日は、手伝いに加わっていた!

 旦那同士が主君と腹心って関係性なことで、自然パッファ姐さんとランプアイさんも戦友相棒の間柄。

 だからこんな戦場でこそ姿を現すんだぜ!


「わたくしだって、こんな茶番に出席するぐらいなら家で子どもや夫らと過ごしていたかったのですが。パッファさんとの友情は厄介事しか呼び込みませんね」

「うっせえ茶番じゃなくて茶会だよ! 頼むよ、こんな面倒くせえ戦場で孤軍奮闘させるなよ!!」


 パッファ姐さんが泣きながら縋るほどに、この戦いは厄介極まりないってことですぜ!


 そう、ここは戦場。

 淑女夫人たちが集い、その礼節品性智謀魔性のすべてを総動員しマウントを取り合うお茶会は、まさに女の戦場なんだ!!


 開催日の今日まで、何度も繰り返し言い聞かされてきて天使の耳にタコができたっすよ。

 ガイザードラゴンとの戦いより厳しい戦い。


 パッファ姐さんはそんな戦いを、結婚してからずっと続けてきたんすな。


「ふッ、……もう殴り合いのガチのケンカも忘れちまったぜ……」

「王妃としてはそれでいいんですよ」


 遠い目をして、どこかを見詰めるパッファ姐さん。


「今日のアタイの振る舞いを見て、王妃として成長したアタイの姿を目に焼き付けるこったなソンゴクフォン」


 ヘイ、姐さん!!


「お前自身もそうだぜ。今日の茶会、お前も何か催しをして成長を見せてもらおうと思ってるんだ。アタイの期待を裏切るんじゃないぜ?」


 もちろんですよ姐さん!

 とっておきの一大イベントを用意してありますから、楽しみにしててね!!


 あーしが、姐さん一の下僕であるってことを思い知らせてやんべよ!!


「いいえ! わたくしたちこそが!!」

「パッファ妃の忠実なる臣下ですわ!!」


 うわひぇッ!?

 なんだなんだ!?


 なんだこの女子の集団は!?

 歳の頃十代後半ぐらいで統一された女人魚どもがあーしのことを取り囲んできた!?

 なんすか? イジメっすか!?


「私たちはパッファ妃に仕える侍女集団!」

「その名もパッファチルドレン!」

「パッファ妃に仕えて、その薫陶を得て、いずれは高官や大貴族に嫁入りしたり、女官としてのエリートキャリアに就くことを期待されていることを期待されているのよ!!」


 パッファチルドレン!?

 なんすかそんな自分で名乗ることに若干の気恥ずかしさを覚える!?


 パッファ姐さん!

 ご本人にご説明を!


「……いや、説明するまでもなくアタイの侍女だよ。王妃ともなれば自分専用の侍女の一ダースぐらい抱えるもんさ」


 侍女って言うと、偉い人に仕えて着替え食事色んな生活の世話をする女の人ってことっすね!?

 さすがパッファ姐さん、人魚王妃は伊達じゃない!!


「全然凄かねーよ。この子らはアタイの世話係ってよりは丁稚奉公の意味合いが強いからな」


 でっちぼうこう?


「要するに、コイツらが世間様に通用するようアタイの手で育てろってこと。一応コイツらマーメイドウィッチアカデミア卒のエリートなんだけど所詮学校で習ったことだけじゃ社会に通用しねーからな。その分を、アタイの下で補うのさ」


 はぇー。

 つまりこの小娘ども、パッファ姐さんの下で修業編ってことね。


 でもそれだとパッファ姐さんの方が負担大ってことじゃね?

 むしろ主人である姐さんの負担を軽くするための侍女じゃねーの?


 そう考えているとランプアイさんが補足。


「新しい世代の魔女がいるでしょう、ディスカスとかベールテールとか。あの子らを一人前に仕立て上げたのはほぼパッファさんの実績なんで、人を育て上げる才に関して一定の評価を得ているパッファさんなんですよ」

「うっぐ……!?」

「というわけで、その才をもっと人魚国のために振るえと言われていましてね。それで見込みのある若芽十数人をパッファさん預かりということになってるんです」

「納得がいかねえ! いくら王妃だからって、自前の子どもを育て上げるのも手一杯なところに余所様のでっけえ子どもまで世話が回るかッ!!」


 キレ気味の姐さん。

 何故だろう、誰とはハッキリしていないが、それを姐さんに指示した人物が目に浮かぶようなんだけど?


「大体ディスカスどもを育て上げたのだってアタイ一人の手柄でもねえ! 農場にゃプラティもいたしランプアイもガラ・ルファも指導してたろうが! そして何よりゾス・サイラのヤツが持ち前の面倒見のよさを発揮して一番ものを教えてただろうが、当時住み込みでもなかったくせに!!」

「だからゾス・サイラさんは現在、人魚宰相として官僚候補の育成に取り組んでいるじゃないですか。数十人単位でですよ」


 何故だろう、誰とはハッキリしていないが、それをゾス・サイラに指示した人物が目に浮かぶようなんだけど?


「アナタなどはまだいいでしょう。ちゃんと見込みのある人材を回してもらえるんだから」


 ランプアイさんのその口ぶりから察するに……!?


「そうです、愚昧であったり怠惰であったりとにかく世間様に出せない人材はわたくしのところに回ってくるんですよ。徹底的なスパルタで性根を叩き直せるようにね。そうしていつの間にやらわたくしが指導する場のことが『ランプアイ塾』と呼ばれるようになったのです」

「塾生でいる間は、人権がないということで有名な?」


 ……これって人材活用に魔女を最大限活用してるってことじゃね?


 未来の実力者嫁候補をパッファ姐さんに育てさせ……。

 官僚候補をゾス・サイラに育てさせて……。

 どうにもならない性根腐った連中をランプアイさんのしごきでリサイクル……!?


 これで人魚国の人材育成は盤石じゃん!?

 誰だよこのシステムを組み立てたヤツ!?

 なんかもう特定の顔が目に浮かぶわ!!


「そういうアナタだってアロワナ陛下の武者修行に同行してパッファさんに色々モノを教えてもらっていたんですから、アナタもまたパッファチルドレンということができるでしょう」


 あーしも!?

 ヤベェよ、あーしまでこの面白集団に組み込まれていたなんて。


 あの集団の真ん中で変なキメポーズでも取らされるんか!?


「てなわけでソンゴクフォン、お前の責任は重大だぜ。今日のお茶会で行われる催し、ここにいる小娘どもへの手本になると思いな」

「下手なことをすればそのまま悪い事例として永遠に残るということです」


 ぐわっす!?

 パッファ姐さんとランプアイさんのW詰め!?


 くっそう、他ならぬあーしも人材育成上手の二人に占められてる真っただ中だった!


 しかしノープレだぜ!

 あーしにはつい先日思いついた最高のプランがある!


 大船に乗ったつもりで見守っていてくださいよパッファ姐さんもランプアイさんも!!


「アタイら人魚は大船には乗らねえけどな」

「それより自分で泳ぎますからね」


 そうして開催される人魚国のお茶会!

 招待されるのは人魚国の名だたる貴族夫人たち!


 その権力は結託すれば王様だっておいそれと口出しできない!


 だからこそパッファ姐さんは人魚王妃としてお茶会を成功させて王家の求心力を保たないといけない!


 それに尽力するのがこのあーし、ソンゴクフォン!

 さあ見ていろよ! 我に秘策あり!!

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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