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115 農場の人間関係 その二

 我が農場の平穏具合をチェックするために行うことにした住人観察だが……。

 初っ端から濃いのに当たってしまった。


 やはりエルフとオークの組み合わせは鉄板だった、何かが起こるという確率に掛けて。


 今度はもっと平和な組み合わせを見て行こう。


              *    *    *


 大地の精霊たち。


『大地の加護』によって実体化した彼女らは、見た目は小さくて可愛い小人。

 大地の精霊だけあって夜中は土の中にいて、朝になるとゾンビか泥田坊よろしく這い出してきて働いて、夕方になると潜っていく。


 彼女ら自身の説明によると、土の中にいる時は埋まっているのではなく、実体化を解いて土に溶け込んでいるらしい。


 そんな小さい彼女たちにお願いしている仕事は、屋敷の掃除や片付け。

 皆がそれぞれのメイン作業に没頭するためにも、住まいの整理に専従してくれる精霊たちの働きはとても助かる。


 世間一般で言うところのメイドみたいな職柄だが、だからだろう。


 精霊たちは屋敷内でメイド服を着ている。

 手作りだ。

 ハンドメイドのメイド服で、略してハンドメイド服だ。


 当然作ったのは、我が農場の被服担当者として今や絶大な存在感を持っている……。

 魔族娘バティ。


「きゃあああああ! 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛い♡♡ 可愛いッッ♡♡」


 今日も自分で作ったメイド服を自分で精霊たちに着せて身悶えしている。


「おいファッションマニア、仕事しろ」


 前回は陰から人知れず見守っていた俺だが、今回は表に出ていくことにした!


「何を言ってるんですか! 仕事してるじゃないですか!! この子たちに可愛いメイド服を着せているじゃないですか!!」


 過剰にな。

 バティが精霊たちのために用意したメイド服。

 全五種類。

 これからも増える予定。


「キミに作ってほしい服は他にもいっぱいあるんだが。ゴブ吉たちが着替えが足りないって困ってたぞ」


 外仕事は着るものが傷みやすいんだ。


「そうは言いますが! メイド! 小さな女の子! 可愛いじゃないですか! その二つが合わさる! なお可愛い!!」

「さっぱりわからん」


 いや、気持ち的にわからないでもないが、ここでわかったら一生バティを止められない気がする。


 というか、この子こんな子だったっけ?

 最初は、魔族軍のエリート副官でもっとまじめな印象だったんだけど?


「わかっていませんね聖者様……」


 わかったような口ぶりで現れたのは人魚のガラ・ルファ。

 何故現れた?


「創作系作業は、人格を曝け出すのです。かつては軍人としてシステムの一部だったバティさんの心は、服を作ることで自由の空に舞い上がったのです!」

「さすがガラ・ルファさん! 研究者として私の心を理解してくださっている!」

「クリエイティブ万歳!」

「クリエイティブ万歳!」


 二人は固い握手を交わした。

 なんかシンパシーが芽生えておる。


「では私は、酒造りの作業がありますので」

「お、おう……!」


 ガラ・ルファは用が済んだらさっさと帰って行った。


「あたしたち、うれしーです!」

「おようふく貰えてうれしーです!」


 片や精霊の女の子たちは、着せて貰えたメイド服にご満悦だ。


 精霊にとって、労働のお礼として一欠片のバターを貰うのが何よりの喜びだが、それ以上に嬉しいのが自分用の服を仕立てて貰うことらしい。


 それは精霊界の決まり事であるそうなのだが、だからと言って際限なく服を仕立てていいわけでは……。


「ならば見てください聖者様! 私がこの子たちのために作った、メイド服の数々を!」


 だから数々作るなと。

 一種類でいいじゃん。


「まずはオーソドックス! ロングスカートタイプ!!」


 おお。

 でも基本デザインが幼女の精霊たちが着ると、メイド服って感じが。


「次にカウンターカルチャー、ミニスカ!!」


 おお!


「さらに魔国の幼年学校制服を意識したメイド服に、ねこみみ獣人風メイド服! シスター修道服の衣装を取り入れたメイド服も作ってみました!」


 メイド服がゲシュタルト崩壊を起こしていた。


 バティはただコスプレを楽しみたくて、いろんなジャンルのコスチュームをメイドにこじつけているだけではないか?


 試しに、ちょっとカマをかけてみよう。


「……このねこみみ風メイド服さ」

「はい?」

「エルフに着せても似合いそうだよね?」

「!?」


 バティは覿面に反応した。


「やっぱり聖者様もそう思いますか!! ですよね、そう思いますよね!? 実は既に、エルロンさんのサイズに合わせたメイド服を作製予定! 型紙は取ってあります! あとは聖者様の御命令一つで作製実行に……!!」

「…………」

「あっ」


 そこでバティはやっと気づいた。

 余計なことを喋ってしまったことに。


「バティ。そのメイド服の型紙、没収ね」

「あの……、待ってください……、聖者様……!!」

「それから、しばらくの間、注文を受けた服以外の作製を禁止」


 趣味に走るのも結構ですが、必要なものを作り終えてからにしてください。


「待ってください聖者様! リビドーが!! 私の中の『可愛い服を作れ』という魂の叫びが抑えがたく! この気持ちわかってくれますよね聖者様!? せめて現在作成中のプラティ様専用、前衛的ネグリジェの完成は許してええええッッ!!」


 ……ッ!!

 プラティ専用のネグリジェとかいうフレーズに心揺らいだがなんとか推し留まった。

 エルフ数人を被服チームに回して生産力を上げてるんだから、ちゃんと仕事すれば、すぐに趣味の作業をできる余裕は作れるはずでしょう?


              *    *    *


 進化したバティのキャラの濃さだけがピックアップされて、ニューフェイスの大地の精霊たちの暮らしぶりが語られなかった。


 大地の精霊たちは、メイド服を着てしっかり働いています。頼りになります可愛いです。

 以上。

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