表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1093/1420

1091 動き出す膿・魔族編

 私の名はダンパール。


 古くより魔国に仕える官僚である。

 その経歴は輝かしいもので、各部署の重要ポストを歴任し、着実にキャリアを積み上げてきた。


 魔国の内政は私のお陰で回っていると言っても過言ではない!


 それなのに周囲の脳みそが足りない連中は……。


 ルキフ・フォカレ、ルキフ・フォカレ、ルキフ・フォカレと!!

 宰相の名前ばかり挙げおって!


 アイツだけがそんなに偉いというのか!?

 国政というのは一人だけで回せるものではないというのに!!


 ルキフ・フォカレが魔国史に残る名宰相だということは、私だって認めてやらんこともない。


 しかしアイツだけの力でどうこうできるほど国家運営とは甘いものではないんだぞ!

 ヤツの他にも無数の有能な人材がいることから目を背けてはいけない!


 有能な人材!

 そう私とかな!


 そんな風に、日々報われることの少ない私にある時チャンスが巡ってきた。


 ある時魔国内で何故か大量の赤子が同時に生まれ、その対処を取る必要に駆られた。


 御前会議ではいくつかの案が浮上した。


 魔都を拡大するとか、手つかずの土地を新たに開拓するとか。

 おおよそありがちな平凡案ばかりであったが、一つだけ画期的な案が浮上した。


 遷都案だ。


 実はそれこそ数百年前、我が魔国は一度遷都を行っている。

 しかも深刻な事情からやむを得ず。


 ……ある時代の魔王が常軌を逸し、みずからの意思で成り果てる究極の不死者ノーライフキングへと変貌してしまったのだ。

 かつての魔都は、死と混乱の坩堝と化し、多くの民が命からがら脱出していった。


 そして逃れ生き延びた民が新たに建設したのが今の魔都だ。


 あれから数百年、情勢にも変化が起きた。


 何より重大なのは数百年にわたって旧魔都に君臨しつづけたノーライフキングが滅び去ったこと。

 おかげで旧魔都はもはや危険はなく、再び人の住める肥沃な土地に生まれ変わったのだ。


 そうなったのなら放っておく手はない。


 原初に魔国の中心地だった場所であれば、取り戻せた以上そちらへ舞い戻るのが筋であろうという主張。


 そして一から年を直すのだから増加する人口に合わせてより巨大な首都とするのも可能。

 結論から言って今の魔都を拡張するよりもずっと壮大な新首都を建造できるという。


 私も会議出席者として聞き、目から鱗が落ちた。


 まったくその通り!

 かつて、不死王によって中心から追い立てられた苦渋の歴史。

 その因縁を払しょくし、かつての旧首都に立ち帰れば誇りも取り戻せて、魔族はより高みへと上がることができよう!


 人口問題を解決し同時に、魔族のプライドを満たすことのできる一石二鳥の政策、見事!!


 私は遷都案に賛成だ!

 魔王様もきっとお気に召すこことだろう!!


「私は反対する」


 誰だ!? こんな景気のいい案に水を差すのは!?

 はッ!?

 ルキフ・フォカレだと!?


「実際に遷都を行い、新しい魔都を一から作り上げるとすればかかる費用は莫大なものとなる。いかに戦争が終結して戦費を抑えられるようになったとはいえ、そのような浪費を許していては財政の健全さは保たれぬ」


 浪費とは失敬な!

 我ら魔族がかつての都へ還るための一大事業なんだぞ!

 無駄遣いなどでは決してない!!


「そもそも旧首都が解放されたからと言って、首都機能をそちらへ戻すというのはけっして理に適った話ではない。情勢は常に動いている。新たに発見された魔島や、国交が本格的に始まった人魚国とのやり取りを考えれば、より海に近い現魔都の方が使い勝手がよいのは明らかだ」


 う……。

 それはそうかもしれないが……。

 しかし魔族の誇りという観点では……。


「旧魔都は、当時戦争中だった人間国への警戒から、彼の国に近い場所にある。現在人間国とは友好な関係にあるから距離が近いのもそれなりに意味はあるものの、人魚国や魔島との関係を脇に追いやってまで重視すべきことでもないし、何より人間国との交易拠点は既に別に出来上がっている。よって首都を人間国へと近づける意義も大きくない」


 いや、だから……。

 誇りが……。


「私としては現魔都の拡張を進めつつ、辺境の開拓に力を注ぐことが最良と考える。……魔王様、ご裁可を頂きたく」


 ルキフ・フォカレめ、上座へおられる魔王様へとお伺いを!


 大丈夫だ、魔王様ならきっとわかってくださる!

 魔族数百年の誇りを取り戻す、遷都事業の意味を!


「……首都が移れば、この魔都に暮らす多くの人々も移動を余儀なくされる。住み慣れた生地を離れ、新たな場所で生きることに戸惑いも大きければ散財も増そう」


 魔王様が言う。

 えと、それは……!?


「民に多くの負担を強いる遷都を、我はよしとせぬ。人口増加対策へは兼ねてからの計画通り、魔都拡張と辺境開拓の二策でもって当たる。皆の者もそう心得よ」


 魔王様の鶴の一声でそのように決まってしまった!


 後々ルキフ・フォカレが語るには……。


 ――『旧魔都が本当に都市機能に優れているなら、遷都を議題に挙げるまでもなく再開発が始まっているはずだ。そして一都市として隆盛を極めていることであろう』

 ――『しかし現実は、再開発も始まらず今なお野原のまま』

 ――『これは今の時代、旧魔都に場所柄の旨味は何一つない証拠のようなものだ』

 ――『それを無視して遷都など進め、民の血税を無闇に投入するなど失政でしかない。発言者はよくよく見詰め直すように』


 ……とのこと。


 なんだこの!

 嫌なヤツ!

 過ぎたことをネチネチとあげつらいおって!!

 自分の主張が、魔王様に認められたことがそんなに嬉しいのか!?


 ルキフ・フォカレ、本当に嫌なヤツめ。

 あんなヤツが宰相としてデカい顔をしていれば魔国に未来はない!


 こうなれば何としてでもルキフ・フォカレにケチをつけ、ヤツのキャリアに汚点を残してやる!!


 だが一体どうすればいいんだ……?

 ……と思っていたら渡りに船な人物が現れた。


 人間国の官僚であった。

 彼には独自の考えがあり、人魔両国で進められている開拓事業を何としてでも頓挫に追い込みたいらしい。

 それで協力者を密かに募っているとのこと。


 そこで私はピンときた。

 我ら魔族側から見た開拓事業は宰相ルキフ・フォカレ肝煎りの政策。


 もっともアイツは魔都拡張も肝煎りで、両方を同時に押し進めているからやっぱし『なんだアイツ、バケモノか!?』てなる。


 しかしどっちにしろアイツが指揮している政策の一つが失敗に終わればアイツの減点にもなる。


 そして重要なことに気づいた。

 開拓事業は人口増加対策の二本柱の一つ。

 その一つが倒れれば、代案として再び遷都案が浮上するのではないか?


 ルキフ・フォカレに恥をかかせ、遷都が実現するかもしれない。

 一石二鳥の手ではないか!


 これは乗らない選択肢はない、と開拓潰しに協力することにした。


 人族側の妨害工作に呼応して、開拓事業の人魔協力の情報共有を断った。

 これでお互い現地では認識できず、上手くいけば共倒れに持っていけるかも!


 さらにはルキフ・フォカレは魔都拡張事業の方にかかりきりにさせて、開拓事業から遠ざける。


 ふん、好きなだけ拡張していればよいわ。

 旧魔都に遷都が決まればすべてが無意味になるんだからな。


 私自身も水面下で遷都の準備を進めておく。


 今のうちに土台を固めておけば、いざ遷都が本格始動した際にすべての事業を、我ら遷都賛成派で占有することができる。

 後発組を締めだせるというわけだ。


 もちろん締め出される後発にはルキフ・フォカレだっていよう。

 遷都反対派で一番前面に立っているんだから当然だ。


 新しい魔都の中心で、どこにも立場がない。

 そんな宰相聞いたことありませんなあ?

 新しい首都では新しい宰相を選び直さないと。ルキフ・フォカレさんはそのまま引退かなあ?


 魔族史に残る名宰相も、最期は惨めなものとなりそうですなあ?


 そんな未来に胸ときめかせていた矢先。


 我らの下へ報告がやってきた。


 なんだと?

 開拓事業は順調? 魔族の開拓者も人族の開拓者も一致団結して仲よくしている!?


 そしてなんと……!?

 農場の聖者が現れた?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
bgb65790fgjc6lgv16t64n2s96rv_elf_1d0_1xo_1lufi.jpg.580.jpg
書籍版19巻、8/25発売予定!

g7ct8cpb8s6tfpdz4r6jff2ujd4_bds_1k6_n5_1
↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ