1047 祝いの連報
後日。
農場から離れたところでも無事出産の報せが続々と届いてきた。
まず人魚国。
人魚王夫妻の第二子誕生に人魚国全土が沸いた。
全海?
いや、どっちでもいいか……!?
とにかく人魚国の未来を背負って立つ王直系の新生児、全国級の慶事であることに間違いはなかった。
人魚王妃パッファが新たに生み落としたのは女の子。
人魚王女であった。
先の第一子が王子様であったためにいい塩梅と言えなくもない。
第二子はグッピーと名付けられ、正統なる第一位人魚王女として存在を認められることとなる。
先代人魚王妃シーラさんも、まず最初に男子、次に女子を生み、その双方が英邁に育って現在の人魚国を栄えさせていることから、それになぞらえ今世代の王子王女も英邁に育つだろうと国中が沸いているのであった。
まあ偶然の一致に過ぎないであろうが、好意的に受け止めてもらえているなら良しとしよう。
その話を伝え聞いたプラティも『まあ、アタシに似るならさぞかし有能でしょうねぇ~!』とまんざらでもなかった。
何故かというと他でもない前世代の第一人魚王女こそプラティであるからだ!!
しかし『プラティに似る』と言われて当の本人の母親であるパッファは心中穏やかじゃないだろうがな。
絶対嫌だとか思ってそう。
そしてもう一件、人魚国に生れ落ちた新たなる命は、ヘンドラーランプアイ夫妻の第二子。
男子が生まれ、マーブルと名付けられた。
ヘンドラーくぅんの実家はベタ家という、人魚国有数の名家。
多数の高位軍人を輩出して、ヘンドラーくぅん自身も紆余曲折ありながら現在は人魚王アロワナの右腕として大活躍している。
さらに昨今はゾス・サイラの産休中、宰相代行を務めているそうでヘンドラーくぅんの評判は人魚王宮でうなぎ上りだ。
そんなベタ家の最新世代に、初めての男子として出生したマーブルくんに、御家はお祭り騒ぎだという。
ヘンドラーくぅんのお父さんに当たる現当主も『跡取り誕生じゃああああッ! これで御家も安泰じゃぁああああ!!』と騒ぎ散らかし、家族を困惑させているという。
何故ってヘンドラーくぅんはあくまで次男坊であり、ベタ家の家督は長男であるワイルドさんが引き継ぐはずなんだが、それなのに次男の息子が跡取りになったら差し障りありまくるだろうって話。
周囲は『早まるな』って抑えているんだが、もう今にも当主の座をヘンドラーくぅんに引き継がせようという勢い。
こんな勢いだけの当主とっとと引退させちまえよ、という意見ももちろんあるが、引退させたあと、誰が代わりになるかでまた一問題あるそうな。
前述の長男ワイルドさんが新たな当主となるのがもっとも順当なのだが、そのワイルドさんがまだ結婚すらしていないのが相当なネックとなって代替わりできないらしい。
ヘンドラーくぅんはいまや現人魚王のもっとも信頼厚い忠臣として飛ぶ鳥落とす勢いだし、結婚して男子まで生まれて次期当主に任命したい気持ちもわからんではないが、いかんせん一度は出奔した過去を持つヘンドラーくぅんとしては、素直に父の望み通りベタ家を背負って立つことには抵抗があるのだろう。
すべては長男のワイルドさんが結婚さえしてくれればすべて丸く収まるんだが。
早く結婚しろワイルドさん。
さらに人魚国を震撼させたのは、先代人魚王ナーガスさんとその妃シーラさんに、今さら新生児が誕生したことだった。
子だくさんで知られる前人魚王夫妻だが、アナタたちもう既に孫もいるんですよ!?
そんな中で励まれんでも! と妊娠のご報告を受けた時は戸惑ったものだ。
そして実際生まれたのは男子。
既に世代交代してからの先王の息子という、あまりにも微妙な立ち位置の子どもが生まれてしまった……!
アロワナさんもプラティも、このあまりにも年の離れた弟をどう捉えていいか頭を抱えている。
プラティなどは……。
――『いやぁああああッッ!! ジュニアとノリトに年下の叔父さんなんていやぁあああああッッ!!』
素直に絶叫しておった。
ナーガスさんシーラさん夫妻としては……。
――『国王とか王妃とかしがらみなく子育てできるなんて新鮮だわぁ』
と純粋に楽しんでおられた。
この人魚王族のパワーバランスに一石を投じる子どもが以後どのように育つのだろうか?
それを俺たちはまだはかり知るすべを持たないのであった……!
以上が人魚国の出産事情。
もちろん他にも、クロノス神の余計な気遣いで子宝に恵まれた人魚族の夫婦はたくさん腐るほどいるが、もちろん割愛だ。
次にスポットを当てるは魔族。
何よりまずは魔国の頂点に立つ魔王さんのご家庭事情。
魔国の王さまだけあって魔王さんには二人のお妃がおり、第一魔王妃のアスタレスさん、第二魔王妃のグラシャラさんが同時に懐妊したということで、魔国はちょっとした騒ぎであった。
何しろ王様の妃が二人以上いるって、権力争いの中心にしかならなそうな状況。
その中で次期国王候補という“弾丸”が増えるとなったら誰だって警戒するし緊張する。
まあ、そういうのは先を気にする一部の層だけであって、大半は国の頂点である魔王の家庭が賑やかになることを純粋に祝っているだけだが。
しかし、そんな心配症な人々の憂いは、結局杞憂として霧消していくこととなる。
生まれたのが双方、王女だったからだ。
第三魔王女グレモ。
第四魔王女パエモ。
生まれたのがほぼ同時期であったため、どっちが第三か第四かで揉めかねなかったが、そこはしっかりと記録がつけられタッチの差でグラシャラさんの次女グレモちゃんが先と認定された。
アスラタレスさんの第三子パエモちゃんが後塵を拝し悔しくならないかなあ? と心配されたがむしろ、
第一魔王女マリネ←グラシャラさんの娘。
第二魔王女ベルゼビア←アスタレスさんの娘。
第三魔王女グレモ←グラシャラさんの娘。
第四魔王女パエモ←アスタレスさんの娘。
と順繰りになってれば記憶しやすいとむしろ好評とか。
どういうこと?
この件にも長女であるマリネちゃんが『家族は仲よくしないとダメなのーん』と締め付けをおこなっていたとか。
彼女が手綱を取っていれば魔王家は安泰だ。
何より、今回も女児のみが誕生したことで魔王子ゴティアくんの後継者としての立場は安泰だしな。
本当にそう?
日を追うごとに指導力、カリスマを強めるマリネちゃんを見て思うのだった。
そんな今日も安泰の魔王家の他に、その魔王家に仕える四天王の一人マモルさん御家にもめでたく子宝を授かった。
なんと双子。
結婚してから長く子を得られなかったマモルさんとアリアスさん夫婦であったが、長い我慢のご褒美と言わんばかりに一気ににぎやかとなる。
しかも双子は男の子だというので、跡取り問題もすんなりクリア。
マモルさんも今までの苦労がやっと報われたなあ、順風満帆じゃん……と思ったのだが、しかしどうやら苦労は続くらしい。
「跡取りの第一候補が二人だなんて絶対揉めるじゃないか!……一体どうしたら……!」
とのこと。
たしかに双子なんてぶっちゃけほぼ同時に生まれたようなもんだし、でも跡取りには一人しかなれないし、本人たちの心理によっては相当揉めそうだなあ。
血を見ることになるかもしれない。
しかしそうなるかどうかは子どもたちが成長しないとわからんし、マモルさんが今から心配してもどうにもならないとは思う。
やっぱり苦労症というのは、自分から苦労をしょい込む性格なんだろうなあ。
一方で、かつての我が農場被服担当のバティも嫁ぎ先で首尾よく男の子を出産。
跡取り問題を華麗にクリア。
口うるさい親戚ポジションを一挙に黙らせたという。
バティとしては是非とももう一人、女の子を生んでファームブランドの被服事業を継承させたいと思っているらしいが、まあ気を長くして頑張ってくれ……としか言えなかった。
魔国もまた賑わいが増してよりよく栄えていくことだろう。
……そして人間国!!
もっとも気になるシルバーウルフさんとブラックキャットさん夫妻の間に生まれる子ども!!
オオカミ獣人とネコ獣人が交わって生まれるのはどっちなの!?
あるいはイヌネコ両方の可愛さを併せ持った!?
と色々、期待と不安のない交ぜになった先に生まれたのは、ごく普通の人族の男の子だった。
そういうもん? と思った。
獣人であろうと人族である基本は変わらないので、オオカミ獣人とネコ獣人の間に生まれても普通に人族の形質だけ持って生まれてくるのはあり得ること。
すべてはメンデルの法則だけが知っていることだ。
あと、領主ダルキッシュさんとヴァ―リーナさんとこの夫妻にも元気な女の子が生まれた。
あそこも子だくさんで満ち足りた生活を送っている模様。
世はなべてこともなく平和だ。







