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異世界人の忘れ物  作者: ナカG
第1章 ゼルグランの人々
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第2話 初依頼とローブさん

えっと、薬草を数種類採取する依頼を受けたわけなのですが……


「………………。」

「………………。」


不安です。


リアさんが残していってくれた情報と地図によると、街の門を出て来た道を少し折り返したところに目的の薬草は生えてるそうです。

地図を確認すると確かに森がその近くあります。


魔物。街からそう遠く離れた場所でもないので、そうそう強敵が出るとも思えませんが用心することは大切です。人の死はいつ訪れるか分かりませんからね。

と言いましても薬はある程度用意してありますから、まさかまさか……ねぇ?そんなね?ドラゴンだのフェンリルだの……ね?


「じゃ、じゃあ……行きましょうか?」

「………………。」


困りました。返事がありません。揺れてもくれません。ホントはこの人もイヤだったんでしょうか。周りを見回しても先ほどの陽気っぷりは助けてくれません。


すると何も言わずローブさん(仮)はギルドを出て行ってしまいました。


これはどうしたらいいんでしょう。と、迷っているところへギルドの冒険者さんが声をかけてきてくれました。


『アイビーちゃん。俺たちゃリアさんの命令でアイビーちゃんには付き添えねえがあいつには注意してくれ』


「あのローブの人にですか?」


『そうさ。いろいろな噂があるが真実を知ったものは誰もいねえ。とにかく魔物より恐ろしいなんて噂もあるくらいだ。リアさんもその犠牲者の1人なんだ……』

『おいバカ!それは話さなくていいだろ』

『あぁすまねえ、この口が勝手に。とりあえず十分気をつけて行ってきてくれ新人さん。魔物にも、あいつにも』


「は、はい」


ということはローブさんは付いてこいってことで先にギルドを出たのでしょうか?

だとしたら早く付いていかないと……

それにしても、噂ってなんでしょう。

リアさんが犠牲者?




さてギルドを出てすぐローブさんを見つけました。大都市の大通りで人の往来が激しい中よく見つけれたって?

いやいや、あれだけ背が高ければ誰だって見つけれるって?


ぽつんと立ってますよローブさん。

ここホントに同じ街ですか!?

まだ昼間だというのにローブさん除いて人っ子一人いないんですが!?


恐る恐るギルドの玄関前の階段を降りたところでローブさんはまたも先に歩き出して行ってしまいました。


速っ!?わたしの倍近く身長が高いだけであんなに歩くのも速いんですか。

なんて考えてる場合じゃありませんでした。


「ちょ……待ってくださいよー!」







「………………。」くるっ


びっくりしました。まさかホントに待ってくれるとは思ってませんでした。


たたた、とわたしも後に続きます。

追いついたところでまた歩き出していってしまいます。


うぅ……これでは名前も聞けません。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


追いつき離されを繰り返すうちに、気がつけば街の門のところでした。

しかし途中で完全に見失ってしまい、遠回りをしたつもりはなかったんですがローブさんを待たせてしまいました。


「すみません。お待たせしました」

「………………。」ふる


あれ?今首を振ってくれたんでしょうか?

いかんせん背が高くてよく分りませんが。


気にするなってことでいいのかな?ってまた先に行っちゃうし……


『おや、嬢ちゃん。無事冒険者にはなれたのかい?』


門番さんです。


「はい。先ほどは手際が悪くすみませんでした。」

『気にしなくていいよ。それより今から依頼かな?』

「はい。簡単な依頼を受けた方がいいとのことで薬草の採取に行ってきます」

『そうかい。……まさかあいつと?ギルドの奴らは?』

「えっと、リアさんの指示でローブの人に同行してもらうことになりました」

『くぅっ!リアさんて人は……』

「え?」

『んや、なんでもない。こっちの話だ』


なんかはぐらかされました?

ローブさんといいリアさんといい、なにか秘密があるんでしょうか。


気づけば遠くでローブさんがわたしを待ってました。


「あ!すみません!ローブさんお待たせしてしまうんで行ってきます」

『あ…あいよ。気をつけて…』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



スタスタスタスタ。


タッタッタ。


歩幅が違うとここまで差が付きますか。

何もない開けた土地にいるだけあってそのことがはっきりと分かりました。


わたしの足が短いわけじゃありません!

ローブさんが長すぎるんです。

いえ、ローブに覆われててちゃんとしたことは分かりませんが、それでも身長は180くらいあると思います。わたしの倍っていうのは盛りましたね、すみません。

それだとわたし1メートルないじゃないですか。

これでも150あります。背伸び?してませんよ。ちゃんと50いってます。ここ重要ですよ。49と50といったらぜんぜん違……


そうこうしてるうちに目的の場所に着いてしまいました。地図要りませんでしたね。ここからでもまだ街の外壁が辛うじて見えます。


今日はここで初依頼。薬草の採取です。

まぁなんだったらゴブリンくらいならかかって来いって感じです。


するとそこでローブさんに無言で袋を一つ渡されました。はて?なんでしょう。空っぽです。


「………………。」


ローブさんは黙々と薬草を探し始めてしまいました。その手には同じような袋が、


あぁ!

採取品をまとめておくものを持ってきていなかったです。

なんという痴態。冒険者になれたことに浮かれ過ぎてました。


「あの……ありがとうございます」

「…………。」



はぁ……大人しく薬草探します。



・・・・・



思ったより群生してました。

これならすぐに目標数を採取できそうです。


ローブさんの方はどうだろうと思ってそちらを見ると何袋分集めてんですかあの人!?どこにそんなにあったんですか!?

時間も全然経ってませんよ!?


いったいどうやって集めてるのかとしばらくジッとローブさんを見てました。


袋は口を開けて草原に放置してます。

そして見つけた薬草をしげしげと観察してます。まさか選別までしてます!?ちょっとローブさんすごすぎませんか!?


あれ?右手しか使ってない。

左手は……?

それと立っている時に気がつかなかったけど、しゃがんでるとローブを押して背中側になにか飛び出てる。剣の鞘かな?


「………………。」

「あ。えっと、その薬草集める秘訣みたいなのってあるんですか?」


いつの間にかローブさんは手を止めてわたしの方を見ていました。とっさに誤魔化しましたけど、これローブさんも困りますよね。

申し訳ないです。


するとローブさんはスッと立ち上がりわたしの方へ近づいて来ました。え?なんでしょうか。集めた量少なすぎますか!?


ザッザッザッと近づいてきます。

もうダメです。蛇に睨まれたわたしです。しゃがんだ状態から立ち上がることもできず、ローブさんの表情を窺うこともできません。


ここでギルドのみなさんや門番さんの言葉を思い出しました。


『あいつには気をつけろ』


ザッ!

「(ひぅ!)」


………………ん?あれ?

なんともない?


ぎゅっと瞑っていた目を開けるとローブさんはわたしのそばでしゃがんでいました。

そしてちょいちょいと手招きしてきます。


なんでしょうか?手元を見ろと?


「光って…ますよ?」

「………………。」

「あれ?」


光ってるのって目的の薬草です。

そしてすごい勢いで成長してる!?


「え!まさか…自分で薬草を?」

「…………。」

「それであんなにたくさん集めたんですか?」

「………………。」


会話が………


「魔法なんですか?」

「…………。」



待ってください?すっごい今さらですが、この人1度でも喋ったでしょうか。

ギルドであった時から門を通った時だって1度も声を聞いてません。


「あの、いまいちローブさんの言いたいことが分からないんで、できれば話して教えて欲しいんですけど…」

「………………。」ふるふる


あ、首振りました。

ヤダってことですか?


「喋っちゃだめなんですか?」

「…………。」ふるふる


フードが横に揺れる。


「声を聞くとわたし呪われちゃうんですか?」

「………………。」ふるふる


あれ?これも首を横に振られたました。


すると突然手を掴まれてしまいました。

わたしはあまりの早業に避けることもできずされるがままでした。


手のひらを指でなぞられる。くすぐったい。


トントン!と手のひらを指で突かれてはっとしました。どうやら文字で伝えようということらしいです。


『こえ、ない』


辛うじてそれだけは伝わりました。


「ない。というのは声が出ないと?」

『はい』

「えっと……理由を聞いても?」

「………………。」


返事は無く、手を離されてしまいました。

どうやら教えてくれないようです。



ローブさんは置きっ放しにしてあった袋の元へ行き、その袋を懐に仕舞っていました。そしてスッと立ち上がるとまたわたしの方へ近づいてきて街のほうを指差しました。


「……帰りますか?」

「…………。」こくこく


次にローブさんは空を指差しました。

気づけば日が沈み始めています。時間が経つのは早い。ホントですね。


「じゃあ帰りましょう」

「…………。」こく


こうして初めての依頼は難なく?終わったのでした。

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