やさしい婚約破棄
閲覧ありがとうございます。戦闘もの書いてたはずなのにどうしてこうなった。
「すまない、ベラ=シェリアク。私との婚約を破棄してほしい。」
物がなく質素だが、気品のある白を基調とした部屋でその言葉は寂しく響いた。
「それはやはり、後ろにお連れの方が関係なさっているのでしょうか。」
そう言うのは、肌は絹のように滑らかで白く、その流れる白銀の長い髪を煌めかせ首をかしげているベラ=シェリアク公爵令嬢。
「彼女は君に用があるようだ」
返事をするのはこの国の第一王子アータイル=アルシャイン、そしてその後ろについている平民であるアルビオ。
「そうね。わたくしはその子に散々酷いことを言ってきたものね。清々した?あんな言っていた人間がこんな事になるものね」
ベラは多少顔色が悪いが、気丈にもベットから上半身を起こしてこちらを見ている。
「ふふ。愉快でしょうね。動けない相手に色んな事ができるんですもの。」
「わたしは、そんなことしません」
「あら?じゃあ罵詈雑言でも浴びせ「わたしは!そんな事言いに来たんじゃありません!」
「ベラ様は、色んな事を教えてくださいました。貴族としての振る舞い。貴族のあしらい方。他国とのかかわり方などたくさんのことを。」
「まるで、わたしが正妃になったとしても失敗しないようにといわんばかりに!」
「訳がわかりませんでした。わたしはただの平民ですし、なによりベラ様はとてもお辛そうにしているのですから」
「それはアータイル様があなたの事を好いているからよ」
「そんなことありません!アータイル様はベラ様のことがお好きなんです!」
「じゃあなんで婚約を破棄にされたの!」
「それは…」「それは私から言おう」
ヒートアップする二人を手で制しながら第一王子が一歩づつ近づいていく。
「私は君に相応しい優しく賢い王になろうと思い、学園に入ったならば弱きものに手を差し伸べ、秩序ある学園生活を送ろうとしていた。」
「だが、私が不甲斐ないせいでベラ、君に勘違いをさせてしまったようだ。」
「君は、私の婚約者となってから王妃としての勉強に不満を漏らさず完璧に努めてきていると思っていた。その姿は自信にあふれ、輝いて見えた」
「しかし、君は心のどこかで不安でいたのだろう。私はそんなことを見抜けず君が酷い人になったのではと一時でも考えた自分を罰したいよ。許しておくれベラ」
「許しておくれベラ。私は君しか見えていないのだ。白く輝くその髪は、女神と見紛うほど美しく、英知を宿したその瞳は、良き未来を見通してくれ、慈愛に満ちたその心は、すべての民を幸せに導いてくれるだろう。共にこの時代を良くしていかないか。不甲斐なき私を支えてくれないか。私は、政略結婚ではなく、王子や公爵家という立場でもなく、ただただ一人の男として君を必要としている。どうか私と結婚してくれ、ベラ=シェリアク」
膝をつき手を取り懇願する王子。
「…アータイル様。あなた様が道を間違えたときわたくしはひっぱたいてでも戻してあげますわ。」
「ああ、頼むよ私の女神」
そこには涙を流しながらも笑顔で答える女性とハンカチで涙を拭いながらこちらも笑顔で答える男性と
「ふふ。これで仲直りですね!」
と空気を読まず堂々と言うアホの子がいた。
ちなみに、ベラはただ足くじいて保健室っぽいところにいるだけです。