第7章
資金が尽きてきたので依頼を受けることにした。
「ゴーレムを倒していただきたい。できるか?」
「ゴーレムですか……」
「今の魔法で倒せる?」
「無理でしょうね。上位魔法がなくては倒せません」
「エリュニス、上位魔法知っているの?」
「ええ、一部だけですが上位魔法を唱えられますよ。それか、
魔力上昇させて倒すかですね」
「魔力上昇……。エリュニス知っているの?」
「ええ、使えますよ。マナブーストと言う名前でした」
「問題なさそうだな、行ってこい」
「はい、分かりました」
「行ってきます……」
街を出て3時間は歩いただろうか。大きな岩を見つけた。
いや、岩ではなくゴーレムだった。体の中心にコアの様な宝石
がはめられている。コアを壊せば倒せそうだ。
ただそのまま呪文を唱えても倒せそうにない。そこでエリュニス
が提案した。
「今からマナブーストを2人分かけます。その後風属性の魔法で
倒しましょう」
「うん、分かった」
「では早速、マナブースト!」
エリュニスが呪文をかけると水色の膜のような物が2人を包んだ。
「ではいきますよ」
そういうとルシェットはコクリとうなづいた。
「「エアスラッシュ!!」」
2人の魔法が同時にロッドの先から放たれた。ゴーレムはガラガラ
と崩れコアと思わせる宝石も地面に落ちた。
それをエリュニスが拾い上げショートソードで突き刺した。と同時
にゴーレムは動かなくなった。
「これで依頼完了ですね」
「ただいま……」
「おう、戻ってきたか。ゴーレムを退治してくるとはやるな」
「そうですか?」
「お前ら2人はよくやっていると、依頼所でも人気だ。俺も期待し
てるからな、頑張れよ」
「あはは……頑張ります……」
「うん……頑張る……」
苦笑いで依頼所を後にした2人だった。
依頼所を出た2人は貸住宅へと戻っていた。
「何か食べたいものはありますか?」
「あったかいスープがいいな」
「では作りましょうか」
「何か手伝う」
「では玉ねぎの皮をむいてください」
そういうとエリュニスはトマト缶を取り出していた。封を開けると
赤いトマトがぎっしりと缶の中に入っていた。
「皮、むき終わった」
「ではみじん切りにしましょう」
ルシェットから玉ねぎを受け取るとエリュニスはそれをみじん切りに
した。ついでに人参もみじん切りにした。
鍋に玉ねぎ、人参、ホールトマトを入れて煮込んだ。15分ほど煮込
んだところで塩コショウで味を整えると器に盛った。
今日はこのスープとパンにメニューが決まった。
「いただきます」
「……いただきます」
そう言ってスープに口をつける。野菜だけのスープだが美味しいこと
には変わりない。
食後にはカフェオレにした。コーヒーだけだと飲みづらいものがある
がカフェオレにすると飲みやすくなって美味しい。
「僕は紅茶派なんですが、コーヒーも美味しいですね」
「どっちも美味しいけど、紅茶の方が飲みやすいかな……」
カフェオレを口にすると、抑えられているが苦味を感じる。ルシェット
は砂糖を入れて飲んだ。
エリュニスは砂糖を入れずに飲んでいた。ルシェットよりは苦味を感じ
にくいのだろうと思われる。
飲み物を飲んだ後はシャワーに入って後は寝るだけとなった。
「……おやすみなさい」
「……はい。僕はもう少ししたら寝ますから」
しばらくしてから部屋のカンテラの火が消えた。
次の日、2人は喫茶店に入って、チーズケーキと紅茶を注文していた。
「……美味しい……」
そう言ってチーズケーキを頬張るルシェットは普通の女の子のように可愛ら
しかった。
「ここはパフェもあるんですよ」
「そうなんだ……」
そう言いながら興味有りげに目をきらきらさせるところは、ごく普通の
女の子のようだ。彼女が適合者という事さえ除けば。
エリュニスは土産として瓶の中に入った飴を買ってルシェットにあげた。
瓶の中は小さな丸い色とりどりの飴が入っていた。
「綺麗……大事に食べる」
「気に入ってもらえたようで何よりです」
喫茶店を出た2人はメルカの実を買っていた。ルシェットにはこれから毎食メ
ルカの実というメニューが待っている。だが、マナの容量を増やすためなので
仕方ない。
「またメルカの実……」
「我慢してくださいね。マナを増やすためにはこの方法以外思い浮かばないん
です」
「うん……我慢する」
そういいながらまたメルカの実を齧り付くルシェットだった。とはいうものの
毎食メルカの実だと栄養も偏ってしまい、結局は体調を崩す結果になったとい
う。
「困りましたね……」
「はぁ……はぁ……苦しい……」
「そういえば南の街に温泉があるとのことですね。療養に出かけますか」
そうして2人は乗合馬車に乗り、南の街に療養に出かけたのだった。
乗合馬車に乗り、半日が過ぎた頃南の街に到着した。
「つきましたよ」
「……うん」
温泉のある宿に泊まることにした2人。
「いらっしゃいませ。ゆっくりしていってください」
「しばらくの間お世話になります」
「お客様にはこの部屋へ使っていただくことになります」
そう言われ部屋まで案内された。部屋にはしらゆりと名札がかかっている。
部屋の中へ入ると意外にも中は洋風の作りになっていた。
風呂以外は貸住宅とあまり変わらないようだ。ただ、プライベートの貸し切り温
泉が付いていることは違っていた。
入って早々に風呂に入るルシェットだった。エリュニスは本を読んでいるようだった。
風呂に入って満足した後はベッドで眠るルシェットに、エリュニスが風呂に入る事に
なった。
その後夕食が運ばれてきた。がルシェットは眠ったままで、エリュニスだけが先に夕食
を取った。その2時間後にルシェットも夕食を取った。
ルシェットは眠ることが多かった。食事が運ばれてきてもあまり食べないし、1日1回
風呂に入ること以外は寝ているばかりだった。
それでも着実に体調は回復に向かい、2週間後には完全に復活した。