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序章

一人の少女がいた。少女の名はルシェット。

その肌の色は病気にかかっているかのように青白く目は既に生気を

失いかけている。感情はとっくの昔に忘れてしまい、目で時折瞬き

をする程度に留まってしまっている。体は充分な栄養をとっていな

いせいか、胸の下にはあばら骨が薄く見えるほどに痩せていた。

その体は女性特有の柔らかさはほとんどなく、関節の辺りが骨ばっ

て見える。身体はどこも少し力を込めると壊れてしまいそうなほ

ど細かった。



ルシェットは生まれたときから親に捨てられ、その顔を見ることす

ら出来なかった。それから3年近くに渡り天然の氷の洞窟の中に保

管され、脳死という状態で過ごす。偶然にも寝ている体の側に洞窟

内にあった1つの透明な水晶石が転がっていた。その石は

不思議な光を放っており、3年もの間少女の体に生命力を与え続け

た。与えられ続けていたものが生命力だけだったため寝ていた間は

成長がほとんど出来ず、外に出るころにはどうにか這って歩く事が

出来る程度にしかならない。

頼りの水晶石はほぼ光を出さなくなってしまい、微かな魔力がある

だけになってしまっていた。


その石を握り締めながら、何もかもが手探りの状態から始まる。

成長が止まっていたために歯も揃っていなかった。柔らかな食用

の草や生のきのこを水と一緒に飲み込むように食べて飢えをしのぐ

はめになる。食べられない物はおろか、毒のあるものにも出遭い、

そして苦しんだ。時には命さえも脅かす猛毒も存在していた。その

時突然石が輝きだし一命を取りとめた。

その石の力に助けられるかのように命の危機を免れる。その後も

危険な目にあったとき、度々助けられることになった。

それから2年ほど立ち、少女は立って歩く事が出来るまでに成長し

た。

服は生まれたときに包まれていた布や捨てられていた布を使い体に

巻くような状態だった。伸びきった髪の毛でパッと見は他からは目

は見えないようだ。そして、透明な天然石を大事そうに持っていた。


いつものように森の中を彷徨っていると一際明るい光を見つける。

その光に吸い寄せられるように進んでいくと、小さな村を見つけた。

「おぉ、あのときの子供か」


少女を見つけた村の大人が口々に言う。

しかし、まだ子供だった少女は言葉の意味までは理解できなかった。

喋ることが出来ても、「あー」や「うー」等とほぼ動物の鳴き声に

近い頼りないものだ。

ずっと森の中で過ごしてきたために、親からも見離されたため挨拶

すらも教えてもらえなかったために、自分の頭にある知識は皆無だ

った。


その時村の大人に混じり、誰にも溶け込まずにいる一人の少年がい

た。

 その少年は少女を見ると、ボソリとつぶやいた。

「……お前も俺と同じか…」

「……お…な……じ……?」

言葉の意味も分からずにたどたどしい様子でルシェットが復唱をす

ると、少年が答えた。

「そうだ。俺とお前は同じ『適合者』だ」

それだけいうと少年は去っていき、あっという間に消えてしまった。

ただ、ルシェットの瞳には冷めた目をした少年が焼きついていた。

 これが、少女にとって初めての「ヒトとの会話」だ。

氷の洞窟内では、ヒトとの関わりは生まれたばかりで目も開けられ

ない状態のまま保管場所に運ばれるだけでそれ以外は一切なかった。

ただ、偶然にも水晶石が運ばれた場所の近くにあったのが幸いだ。

本来なら生まれたときに呼吸をする意味も含めて泣くのだが、少女

は一切泣かなかった。ただ、口を微かに動かしながら呼吸をしてい

た。

赤ん坊はお腹がすいたり、嫌なことがあったりすると泣いて存在を

主張するが、ルシェットの場合は泣かないままで、しかもその直後

に洞窟に運ばれ脳死状態にされてしまったため、泣きも笑いもせず

にただただ眠り続け、ようやく自力で目覚めた時にはルシェットが

生まれてから3年もたった時だった。

実はそこまでするのにはルシェットの運命を揺るがすほどの大きな

理由があるが、彼女自身はまだ分かっていないのが現状である。


さらに3ヶ月後、森の中を散策しているときにルシェットは1軒の

小屋を見つけた。中に入ってみると8畳ほどの大きな部屋があり、

その中には小さな釜戸と鉄製の水洗い場(現在で表すと水道のない

シンク)の付いたキッチンテーブルがあるがそれ以外のものは見当

たらない。更にその奥には薄暗い小さな部屋があった。広さは3畳

ほどだろうか。むやみに大きな釜と部屋の隅にテーブルと椅子があ

ったがそれ以外は部屋の中にめぼしいものは見当たらない。

ルシェットは雨宿りの時にたびたびその小屋を利用したが、他の人

物が先客としていたり、途中から小屋に人が入ってくるということ

もなかった。どうやら、相当前から使われていなかったらしい。と

りあえずその小屋にしばらく住んでみることにした。


 小屋は相当古く、歩くたびに木製の床がギィギィと悲鳴を上げる。

壁は板がいくつか外れていて隙間風が小屋の中に入ってきていた。

埃まみれの小屋の中で少女はベッドも毛布もないまま寝泊りを続け

ることになる。夜は相当冷える外よりも、小屋の中のほうがいくら

かマシだった。

何回か寝泊りを続けていると森の中の自分以外の人の気配が消えた。

どうやら世間では少女が森の中の小屋に住み着くようになったとい

う噂が広まっていたのだ。しかし、そんな事実を幼いルシェットが

知る由もなかった。


 そしてそれから2ヵ月後ルシェットは初めて都会に足を踏み入れ

ることになった。さすがに毛布すらないのでは体にこたえるのだろ

う。森の入り口にあった看板を見てここにやってきたのだ。

 街の中を歩くたびに人々の視線が少女に突き刺さる。伸びきった

ボサボサの髪の毛。ボロボロの布を体に巻いただけの服装。靴も履

いてなく汚れた素足。そしてなにより、世界を変えるほどの力がこ

の少女の中に秘めているとゆう噂が街中に広まっていた。

 その本人がここに存在しているともなれば否応なしに注目が集ま

るだろう。ルシェットの年齢はまだ6歳。周りの冷たい視線よりも、

今は毛布を手に入れることで頭がいっぱいだった。


 ルシェットは森で採った薬草や木の実を体に巻いた余りの布に包み

やってきた。以前村の中で木の実とルクス(この世界の通貨)を換

金している場面を見かけて、自分が取った薬草や木の実をルクスに

換金してもらおうと考えているらしい。しかし、どこで換金すれば

いいのかは分からなかったようだ。街の人は少女の存在すらも無視

する者ばかりだった。

 看板を見ようとしたが、街に来るときは看板の中に地図が貼って

あり、森の外の地図の中に街の絵が描いてあったので、わけもわか

らぬままそこに行ってみたら偶然着いたが、街の中の看板は地図は

あったが文字だけで書いてあったため、まだ文字の読めないルシェ

ットには文字だけの看板はあまりにも難解だ。


 看板が読めなかったので、街中の建物を探した。まだ店と普通の

家との違いが分からず、何度も間違えて他人の家に入ってしまう。

しかし、それを何度か繰り返しているうちに「看板がある家=店」

ということを理解した。幼いながらもルシェットは生まれつき頭の

回転が非常に良く、物事をあっという間に理解することが得意だっ

た。


 そうこうしているうちには換金所を見つけることが出来た。

 中に入ってみると換金所の中は大勢の人でごったがえしになって

いる。ルシェットが入ってきた途端に人々の視線が集中し、少女を

恐れるかのように自然と道が開かれる。

 カウンターに近づき布を台に置く。紐を結ぶことさえ出来なかっ

た布包みは手で握っていた部分が自然に開き、中に入っていた木の

実や薬草が台の上に広がる。

「うー……」

 それだけ言うと木の実を台の奥に押した。いや、それだけしか言

葉が分からなかったというのが正しいか。ルシェットは挨拶も物の

名前も分からなかった。

「了承しました。鑑定が終わるまで少々お待ちください」

 換金所の職員は顔色ひとつ変えぬまま淡々と事務的な対応をした。

職員は慣れた手つきで布包みに入っていたものを種類別に仕分けし、

秤りと計算機を使い一つ一つの値段を決めていく。

「お客様、鑑定が終わりました。全部で52ルクスですがよろしい

でしょうか」

 ルシェットはただ静かに頷き硬貨をもらい換金所を出た。


 換金所を後にしたルシェットは店という店を探し歩き回り、よう

やく目的の毛布を見つけることが出来た。

 毛布の値段は一番安い物でも200ルクスはする。商品が入って

いる籠の外に値段が書いてあったが、文字の読めないルシェットに

数字が読めるはずもなく途方にくれそうになる。

 めげずに毛布を1つ取り、レジに向かった。毛布と手に握り締め

ていた硬貨をカウンターに置き見つめる。

「駄目だ。」

 店の主人は首を横に振り、まるで虫を追い払うかのようにシッシ

ッと手を振った。

 露骨な態度だ。極力関わりあいになりたくないとでも言っている

かの様な視線を感じる。ルシェットは何もしてはいないのに。それ

ほど怖いものだろうか。この少女の中にある力は。


 しばらく歩くと小さな露店を見つけた。そこには菓子や雑貨を中

心に絵本や子供用のサンダル等が置いてあり、親子連れの客がちら

ほらといる。小さな子供を対象に商売をしている露店のようだ。そ

の露店に近づき。1つの商品を見つめてから注文した。

「……」

 無言で1冊の本を指差す。幼児向けに作られた、ひらがなやカタ

カナ、数字を勉強するための絵本だ。

「こりゃ40ルクスだな」

「んー……」

 握り締めていた硬貨を店主に見せる。

「おお。毎度あり」

 絵本と水晶石、それに残りの硬貨を換金所で使った余り布に包ん

でその場を後にした。


 しばらく歩いているとどこからともなく甘く香ばしい香りが鼻を

くすぐる。歩き続けたため腹は今にも音がなりそうなほどすいてい

た。その香りに誘われるようにフラフラと香りのある方向に歩いて

いった。

 香りのもとをつきとめると、そこはパン屋だった。店の中に入る

と良い香りが一段と強くなる。は手持ちの硬貨をじっと見つめる。

先ほど絵本を買ってしまったために残りの硬貨はほとんどない。絵

本の数字のページを開き、しばらく手持ちの硬貨と絵本と値札を見

比べた後、一番安いパンを1つ買い店を後にした。


 まさか少女は絵本を読んだだけで数字を理解してしまったのだろ

うか。ルシェットには数字を教えてくれる親もいなければ、高い学

費のかかる学校に行けるはずもない。先ほどのように物を買うため

には引き算を理解していないといけない。確かに絵本には引き算の

方法は書いてあったが覚えるのは相当時間がかかるはずだ。

 これも、『適合者』の力なのだろうか。


 余った硬貨で乗り合い馬車に乗り、小屋へと戻った。

 ドアを開け中に入ると埃が舞い上がる。ケホケホと咳をしながら

大きな部屋にある小窓を開けた。

 部屋の大きさに不釣合いなほど小さい窓はキィキィと悲しそうな

音を立て、ゆっくりと開く。それと同時に部屋に小さな光が入る。

まるで一筋の光のように。

 ルシェットは光を眩しそうに見つめた後、埃だらけの部屋をぼう

っと眺めていた。視線を部屋から自分自身に向けてみると泥だらけ

な事に気がつく。このままでは病気になってしまうのも時間の問題

だ。

 小屋から外に出て森の奥に入った。5分ほど歩いた所で小さな湖

にたどり着く。ここへは水を飲みに何度もお世話になっていた場所

だ。水を飲んだ後、何かに惹かれる様に足を湖の中に入れてみる。

しばらくたって足を出してみると完全ではないが足が綺麗になって

いた。水を飲むことは知っていても顔や体を綺麗にする方法は知ら

なかったのだ。

 今度は右手を中に入れてみて、しばらくしてから出す。やはり右

手は綺麗になっていた。

 ルシェットは物覚えが非常によい。常人離れしているのかと思う

ほどその能力は高い。

 一度理解してしまえば後は楽だ。布を体につけたまま水面に入り、

しばらく経った後に地上へと出た。

 布を体に巻きつけたまま小屋へと戻る。保温のために幾重にも巻

いてあるためか、布は全然透けてはいない。小屋の中でパンを食べ

ようと思ったがまだ小屋の中は埃が残っている。仕方なく小屋の外

でパンに齧りつくと、口の中にほのかな甘さとバターの風味が広が

る。やっとまともな食べ物を食べることができた。森で採取できる

野草や茸、木の実も不味いわけではないが、火の扱い方など知らな

いために生で食べたことしかない。

 日光浴をしながらのんびりと味わうようにパンを食べる。そのう

ちに満腹感と日光の暖かさがやってきてウトウトと首を傾けだした。

今に眠ってしまいそうな所で、体に巻いてある布の冷たさに気づき

目を覚ます。布はまだ生渇きであり、手で触れるとひんやりと冷た

い。もう少しで危ないところだった。

 時折目を擦りながら布が乾くまで待つ。布を絞ったりすることは

できない。

 握力が圧倒的に弱いという原因もあるだろうが、なにより絞る方法

が分からない。手探りで行動するか、パンを買った時のように本等で

調べるか、それしか方法はない。

 やっと布が乾いた頃にはドアと窓を開けたままでルシェットは採取

に出かけていた。

 両手で抱えられるだけの薬草や木の実を持ち、小屋の中へと運ぶ。

だがその小さな体ではいくらも持ち運べない。けれども何度も何度も

繰り返す。

 森はとても広く、人が自然と寄り付かなくなっているため、自動的

にルシェットが資源を独占することとなってしまった。他人から忌み

嫌われる存在。だが今はそれがルシェットにとって好都合な状況を作

りだしてしまった。

 広い森の中に一人しかいない。しかも小屋まで付いてきてしまって

いる。大きな財産を手に入れてしまったものだ。たとえそれが彼女の

本意でなくとも。


 朝早くに起き、食事をとった後に何度も小屋と森の中を往復し採集

を続け、疲れたら寝る。そんな日々を繰り返す。

採集したものが貯まってきたら街へと売りにいく。少し使っただけで

あっという間になくなってしまうほどの僅かな金額だ。けれどもあき

らめずに繰り返す。

 同じ年頃の子供なら遊びたい盛りだろう。けれどルシェットにはそ

んな余裕などあるはずがなかった。

いや、そもそも遊ぶという言葉自体さえ知らない。

 ルシェットには親も友人もいない。それが当たり前になってしまっ

ている。ただ生きたいという理由だけでここにいる。

 街へ行くことを繰り返すうちに罵倒を受けることや無視されること

にもいつのまにか慣れ始めようとしている。それと同時に心の奥で湧

き上がるような思いが姿を現し始め、時折胸の奥を針で刺されたよう

な錯覚すら覚えてしまった。けれど、なぜその様な錯覚を感じたのか

はルシェットには理解できなかった。


 数日後には貯めた硬貨で、やっと毛布を買うことができた。買い物

など、ただの生活の一部でしかないのに、なぜこうも達成感が強いの

だろう。

 一つ目標を達成すると別の欲求が生まれ出る。また同じ日々を繰り

返し、ひたすら硬貨を貯める。

 ルシェットは極度の疲労により丸一日寝てすごす事も少なくなかっ

た。朝早くから活動し、ごく少量の食物を食べ深夜に眠りにつき約4

時間の睡眠を取る。それを十数日繰り返した後に丸一日眠るという極

端な生活サイクルができていた。

 食事は少量しか体が受けつけない。茸や木の実、山菜が主食だ。明

らかにバランスが偏っているにも関わらず、疲労以外で寝込んだこと

がない事が不思議だ。

 数日後には大きな白い布をルシェットは買っていた。そして街の外

れにある乗り合い馬車の停留所に入った。

 停留所のなかに入るとやや青臭い臭いが鼻につく。それは隣の小屋

から匂ってきていた。小屋へと移動すると更に臭いは強くなる。その

臭いの正体は小屋の中に大量に積まれている藁だった。更に奥へと進

むと2頭の茶色の毛並みをした馬がいた。鼻を覆いたくなるほどの強

烈な臭いが襲ってくる。その内の1体の馬は藁の上に足を座らせて休

んでいた。しばらく馬の様子を観察した後、ルシェットは停留所のほ

うへと戻った。


停留所の中に入ると木製の簡素なベンチと支払いを済ませるためのカ

ウンターが目に付く。ルシェットはカウンターの傍まで近寄った。

カウンターの内側で煙草を吸っていた職員と目が合う。

「馬車に乗りたいのか? 残念だがまだ馬車はこないよ」

「うー……うー!」

とっさに首を振りルシェットは否定する。

職員はルシェットの持っている布に目線を移した。そして少女の存在

も。

(噂には聞いていたが、まさかこの子供が?)

「……寝床が欲しいのか?」

店の主人が尋ねてきた。

「……?」

「……藁の上に布をしけば寝床ができる」

そう言って職員は小屋の中へ入っていき、程なくして藁を両手に持っ

て戻ってきた。

布の上に藁を置き、包むように布を結んだ。

「ほら」

不思議そうな顔をして見上げてくるルシェットに職員は藁の入った布

包みを渡した。

「あ、……あー……」

話しかけようとしたが職員はそれ以降は何も話そうとしない。

仕方なくベンチに座り、馬車の到着を待ち、ルシェットは森にある小

屋へと帰った。



小屋の中へ戻ったルシェットは藁が詰まった大きな布包みに頬をすり

寄せていた。 

布の中からやや青臭い草の匂いとひだまりの様な安らぐ匂いがする。

布包みの結び目が解け藁の上に布が広がる。そこが寝床だと言わん

ばかりにルシェットは感じた。

その上から毛布をかぶせて眠りについた。



それからルシェットは硬貨を溜め続け、文字を勉強するための本や

サンダルを買った。会話もややぎこちない感じではあるが上手に

喋れるようになっていた。看板も読めるようになってきた。

驚くべきスピードで成長していくルシェットに街の人は恐れを

感じていた。

またチクリと胸を刺すような感覚がする。ルシェットの中に黒いも

やもやとしたものができていた。街に来るたびにもやもやは大きく

なっていった。

いつものように買い物を終えたルシェットは図書館に入った。そして

薬草学と簡単な調合の本を借りて小屋……いや、自分の家に帰った。

そして薬草の採集を自分が食べる分だけ取ってそれ以外の時間は

本を読むことに熱中した。本を返す頃には本の内容をしっかりと

覚えていた。


本を返すついでに調合した物を売っている店に入った。

「ああ、噂の少女は君の事か」

「はい」

「君は薬草に詳しいんだろ?調合もできるとか」

「その通りです」

「もしよければここで働いてみないか?」

「働く?」

「薬草集めや調合をしてみないか 調合に使う器具は自分でここで

買ってもらうがな」

「やってみます」

「よし、商談成立だな。」

ルシェットは調合用の器具を買い、他の店で大きなバッグを買いそろ

え家に戻った。ちょうど金が溜まっていたので買うことにはそれほど

苦ではなかった。


ルシェットは家に戻った。あの店の主人はルシェットに対して悪い印象ではなかった。

器具を取り出していると1枚の紙が入っていた。内容は

[薬草を濃縮したものを1セット作って欲しい]

と書かれていた。

早速外に出て採集へと向かった。

たくさん採れたのでやや嬉しそうな様子で小屋に帰った。

そして藁の寝床で眠った。


翌日ルシェットは調合に取りかかっていた。

薬草をちぎり水と共にビーカーに入れ、魔法でアルコールランプに小

さな火を起こし煮詰め、乳鉢で磨り潰し、漉した物を試験管に入れた。

余った時間で木の実を取りに森の中へと入っていった。

そして明日街へ出るために早々と眠った。


そして翌日。

ルシェットは調合した店へと入った。

「調合したものはできたのか?」

「はい、ここに」

バッグから試験管を1本取り出すと、店の主人は試験管を振ったり

しながら確認していた。

「これは1本30ルクスだな」

ルシファーはバッグからさらに1本取りだした。

「余分にできたものです」

「それでは60ルクスだな。期限はもうけないがしばらくはこの調合をして欲しい」

「わかりました」

主人から金をもらうとルシェットは家へと帰った。


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