ⅠのⅧ
たまには恋の話、いかがですか?
さぁ、用意が整ったようですね。
ご案内いたします。
私は普通の女子高生。でも、恋愛とかは苦手な女子高生です。お化けとかは、映像やお化け屋敷じゃなければ大丈夫。オシャレと友情が大切だと思う女子高生なのである!!
でも、そんな私が苦手な恋をした。過去を持つ私と過去を捨てようとする彼との恋。
―――ある日―――
「千夏、私に彼氏ができたんだよ。」
私に嬉しそうにしゃべる親友の水波。水波は私が男嫌いなのを知っている、数少ない人。水波に彼氏が出来たのは初めてだ。昔から大好きだった初恋の彼のことだろうか?
「へぇー、ダレ?」
あまり興味はないが、全然ないというわけでもないので聞いてみた。水波は嬉しそうにニコニコと笑っている。恋をするとキレイになるというのは、もともと綺麗な水波も同じようだ。普段の何倍以上も綺麗に見える。水波は照れたように笑いながら言った。
「ずっと好きだった、隣のクラスの斎藤 進くんだよ。」
「やっぱりあの人なんだ。良かったね、やっと恋が叶ってさ。」
水波はうん、と首を縦に振った。私が恋をするきっかけになったのは、この親友とその彼氏のおかげである。そして、今日がその運命の日だった。彼との出会いのきっかけは一言だった。
「今日ね、彼を千夏に紹介したいの。彼にも千夏を紹介したいし。」
アレ?水波は私の男嫌いを知ってるはずなのに。話すのもなかなかダメだし。嘘だろ?!
「彼も、親友を紹介したいんだって。勿論私にね。」
いや、そうに決まってんでしょ。あぁ、これじゃあ本当に連れて行かれるじゃん。今日ってなんか予定なかったっけ?手帳を試しに開いても、携帯のカレンダーもメモをみても、予定は無し。あ、来週はお母さんの誕生日だ。
「水波ぃー。ウチ、お母さんの誕生日プレゼント・・・」
「明日、土曜日に一緒に買いに行けばいいじゃん。買い物行くって約束してたし。」
あ、ヤバい。このままじゃ本当に逃げられない。じゃあ、部活だ!!
「それに部活は今日と明日は休みなんでしょ?」
先を越されてしまった。水波のほうが一枚上手だった。いつもは私のほうが一枚上手なのに、男と会うと聞いて、焦りが止まらない。・・・動揺するな、私!!
「じゃ、行こうか!!」
水波は私の腕を引っ張り、連行していった。勿論、私のカバンと自分の物を手に持って。
―――とあるカフェ―――
扉を開けば、静かで程よい気温の店内。珈琲のいい香りを漂わせている。この店の名前は「とあるカフェ」という、少し・・・だいぶ珍しい名前だ。店内に入れば、背が高い茶髪の幼さを残す男が手を振っていた。
「あ、進くん。」
いち早く男に気がついた水波は、彼に駆け寄る。私は重い足を無理やり動かさせ、2人のもとへ歩いて行った。そして、2人ではなく3人であることに気がついた。ちょうど私の死角には一人の藍色の髪をした男がいたのだ。気がついた私はつい、小さな悲鳴を上げた。そして、藍色の髪をした男はこちらをむいて驚いたような表情を見せた。
「あ、初めまして。水波の彼氏になった、斎藤進です。よろしく」
「・・・神楽 千夏です。」
私は内心、よろしくなんてするかっ!!と思っていたのは秘密だ。あぁ、早く帰りたい。ま、叶う訳ないですがね。だって、斎藤くんとかいう奴は藍色の髪の男を紹介してきたし。
「あ、こいつは俺の親友ね。ほら、自己紹介」
「あいあい。笠野 夕です。千夏さん、よろしゅうな。」
そう言って、右手を差し出してきた。それを、私は過剰反応してしまった。そこで水波は、
「ごめんね、夕さん。千夏は男のひと苦手で。」
あ、覚えてたの?と思ったのと、なら連れて来ないでよと思った。夕さんはきれいに笑って
「そうなんか。そら、悪いことしたな。」
といって、謝ってきた。なんか悪いことをしたな、と胸が痛くなった。これが恋でだったのか、良心が痛んでだったのか定かではないが。そして、何故か話は変な方へ。・・・どうしてこうなったのやら。
「ねえ、過去に戻れるならいつに戻りたい?私はこのままがいいけどさ。」
と水波が言うと、斎藤くんとやらはオレも!!とか言い腐りやがった。そしてなぜか私に振ってきた。
「神楽さんは?」
「ウチ?・・・過去に戻って、今が変えられるなら中学入学の頃に。」
少しだけ慣れてきたのは言うまでもない。先ほどまで無視を続けていたのだから、まだマシだ。私は中学生の2年の時に、何故か男に酷いことをされた。何、とまでは言いたくないが。そこに彼が入ってきた。
「中学ん頃かぁ、俺も戻って勉強すればよかったなぁ。でもぉ、過去は思い出しとうないなー。」
すこし、意外だった。彼がそんなこと言うタイプに見えなかったからだ。それなのに、私は何故か口を出してしまった。ほとんど無意識で。
「過去は捨てられないよ。」
「・・・そうやな。あんさんも、捨てへんで頑張っとるみたいやし。オレも頑張ってみようかな?」
そしてまた、美しく笑った。次は少し幼い様な笑顔だった。これを合図のように、私たちは少しずつ心を開いていった。
これが恋の始まりでした。
いかがでしたか?
やはり長かったでしょうか?
是非、感想をお願いします。
読んでくださったみなさん、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
このお話はいつか、数年後を書いてみたいです。
・・・かけないかもしれませんが(笑)