ⅠのⅤ
やあ、来たのかい?
待ちくたびれたよ、僕は。
さあ見なさい、この――――――を。
いま、何を見たい?
あぁ、今日はむしむしと湿気が多く暑い。夏独特の暑さが僕の水分を奪っていく。
僕は部活のために学校にいる。今から向かうのは学校の北側にある防音対策の施されている音楽室。僕がいたのは屋上。音楽室に行けば先ほど買ったスポーツ飲料が、クーラーボックスの中に入っているはずだ。
「・・・ったく、クソ暑いな。」
僕の声は静寂に包まれているこの廊下に響いた。僕は口が悪い。本当は僕なんて言わないで俺、という一人称を使うが・・・もう気にしない。
「元沢、おっす!!早いな、来んの。」
音楽室の前に来て、ドアノブをふれた時に話しかけられた。
ドアノブはまだ冷たい。声のする方へ振り向けば、そこには部活仲間であり幼馴染の男がいた。
「声がでけぇよ、藤木」
苗字で呼び合うのは、少しおちゃらけている時の合図。藤木は相変わらず目立つ赤い髪と耳に輝くピアスを数個、していた。
「お前今来たのか?集合時間より5分遅刻してるぞ。」
俺の言葉に藤木は、お前はどうなんだよと笑って言った。その言葉をスルーして俺は自身の熱を受け冷たさを無くしたドアノブをひねった。
「あ、モッちゃん。アレ?後ろに変なのがいるけど・・・元の場所に戻しておいで」
同じ部活の少女は俺の後ろにいる遅刻常習犯の藤木に少し怒りを覚えたようで、可愛い顔で毒を吐いた。僕をモッちゃんと呼ぶのは彼女だけだ。
「柚木、あんまり怒んなよ。てめぇも謝れ。」
藤木に言うと、ケラケラと笑いながら謝り始めた。
「柚木 香澄さま、申し訳ありませんでした。目覚ましを壊してしまって。」
またか、という僕のツッコミは心の中で留めておいた。
「あー、元沢くん。おかえりなさい」
「お、司。また屋上か?」
「モッチーだ。・・・藤木くん、いたんだ。」
おかえりと言ってくれた少女Bは自分の楽器を手入れしていたが、隣りの“司”と俺の事を呼んだ男に邪魔されていた。モッチーと俺を呼ぶ少女Cはさりげなく藤木に毒を吐きつつ、2人を止めていた。
「・・・司。クーラーボックスの飲み物、差し入れありがとう。」
クーラーボックスを指さしながら言う少女は幼馴染だ。クーラーボックスの中身は俺とみんなの飲み物で、差し入れでもある。俺はふらふらとクーラーボックスに近づいて、それをあけた。ひんやりとする空気は俺にあたる。その中にあるスポーツドリンクを手に取り、飲む。
「・・・生き返った。やっぱウマめぇな。」
フゥと一息つく。今日も暑さに戦いを挑まれている気がする。憂鬱だ。
今日も僕は夏の暑さに勝とうと戦いに向かう。
・・・なんなんでしょうね、これ。
日常を描いてみたものです。
読んでくださった方、有難う御座います。
感想を頂けたら乾杯ものです。
面白くないものがほとんどだと思いますが、これからもよろしくお願いします。