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ラスト
「弓花!」
呼び止められた。初めて、彼があたしを、名前を呼んで止めた。
「弓花、ごめん。」
彼は謝る。どうせ、謝る意味さえも理解できてないのに。彼はバカだ。
「拓、」
名前を呼べば、許してもらえたのかと勘違いした彼は、顔をあげた。心なしか口角が上がっている。
そんな顔したって、許せないよ。
「君の行動には理由がない。」
謝ることにも、名前を呼ぶことにも。
――――――――女性と手を繋ぎ、歩くことにも。
もう、許せないよ。
「あたしは曲げる気はないよ。別れること。」
「弓花、まっ」
「もう、十分待ったし、許したよ。」
君は酷い。泣きそうな顔をして見てくるなんて。まるであたしが悪いみたい。
「さようなら、佐野くん。」
ごめん、悪役ができるほど、演技に自信はないから。
あたしに悪い人を演じさせないで。
久しぶりです。
これにて、この作品は終わりです。
今までありがとうございました。




