第八章「遂に」
優太は地図を指でなぞりながら、眉間に皺を寄せていた。
ひめゆりの塔から、沖縄美海水族館の道のりを見ている。
「遠いなぁ…」
優太は呟いた。
優太達はしらゆりの塔向かいの
「優琵堂」
の飲食コーナーに居る。
この寒いのに…雨が降ってるのに…正紀はさとうきびアイスを食べている。
とても嬉しそうだ。
地図を眺めていると、水族館への通り道に千座毛があった。なら、千座毛から行ったほうがいい。
「正紀、次は千座毛を頼む。」
正紀は、アイスの食べかすを付けた顔で黙って頷いた。
優太達は、それから無言で立ち上がり、歩き出した。
千座毛へは、車で1時間程で着くだろう。
優太達が車に乗り込むと、さっきまで降っていた雨がやみ、眩しい太陽が、顔を出した。
視界がぼやける。
頭は、霧がかかったようにもやもやしていた。
「……………」
…遂に見つけた。彼女を。
「着いたぞ。」
「うわ!」
誰かの声で、夢から離脱した。
正紀が訝しんでいる。
「夢か…」
それに、同じ夢を2度も…
一度目は…そう、あの料亭でだ。
外を眺めると、駐車場だった。
駐車場の奥に、南の島特有の林が広がっている。沖縄にきて、幾度となく見かけた木々だった。
千座毛は、観光ルートにある崖から見える岬が、象の鼻のように見える事から、そう呼ばれていた。優太は(正紀は高所恐怖症ということでついてきていない)駐車場から、先ほどの林の中を突き進み、道を歩くこと5分。
「え……。」
…彼女は居た…
…泣いていた…
潮風に髪がたなびいていた。
あの時のままの…彼女が居た。