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第六章「料亭にて」

…彼女が…居た。

…彼女が…泣いていた。

潮風に、長い髪が、たなびいていた…




僕達は、正紀のお薦めということで、首里山城近くの

「首里そば邸」

という飯処に寄った。

12時という昼時なのに比較的に空いていて、すぐ食べられたのが救いだった。

なにせ、急ぎの旅だ。

「うまいだろ、ソーキソバ。」

近くの土産屋で買った、

「さーたあんだぎー」

をかじり、僕に箸を突きつけながら、正紀が言った。

「うん」

僕は頷いた。

確かに、旨い。

ソーキソバは、そばという割には、うどんに近かった。

トッピングにかまぼこらしきものと、豚の骨付き角煮が入っている。

そうかそうかというように、正紀が頭をぶんぶん振り、またさーたあんだぎーに挑み始めた。

そのとき、ちょうど観光を終えたのか、団体客が狭い店内に入り、店内を埋め尽くしていく。

少し暑くなったように感じた。


ここを出たのは、午後1時だった。

雨が、優太を慰めるように降っている。もしかしたら、神様の叱咤激励かもしれない。

つぎに向かう所は、しらゆりの塔だ。

なんとなく、胸が痛くなった。

しらゆりの塔は、戦死者達の慰霊碑だ。聞いたことはある。よく社会の教科書に出ていた。

胸が痛んだのは、行くことが苦痛なのかもしれない。

だが、それだけじゃない…。

そんな気がした。

けど、そんなことも言っていられない。彼女に逢いたい…、その気持ちは抑えられなかった。

一刻も早く…

「正紀、次はしらゆりの塔に頼む。」

「………あぁ」

しらゆりの塔と聞くと、心なしか正紀は元気がないように感じた。

さっきまで元気だったのだが。

車は、鈍いエンジン音を立てて、ゆっくり、走り出した。



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