第四章「沖縄県」
軽い振動と共に、キュルという着地音が響いた。那覇空港に着いたのだ。
空は、闇を消し去った太陽が浮かんで、微笑んでいた。
コバルトブルーの青空。綿飴が、空に浮かんでいる。
「ふ〜」
優太は、大きく深呼吸をした。着いたのだ。沖縄に。
優太はシートベルトを外し、人の波に乗った。
CAが、ひきりなしに、微笑んでいる。優太は、
「どうも」
というように軽く頭を下げ、機内から那覇空港内に降り立った。
「あ〜、疲れたぁ。」
少し遅れて、正紀が搭乗口から出てくる。
疲れたと言っている割には顔がすがすがしい。
那覇空港内は、まだ9時だというのに、賑やかだった。
空港内は意外と広く、待合室にテレビが何台も置いてあった。
それにクリスマスということもあり、ツリーなどが飾ってある。
この小さな島の、どこかに…由紀は居る。そう思うと、胸が高鳴った。
「お〜い!優太!」
正紀が左の曲がり角で、手招いている。
搭乗口から、道なりに歩いて、1階の到着ロビーへと向かい、手荷物のバックを取って、とりあえず外に出た。
沖縄の気候は、やはり南の島なだけあり、12月だというのに、暖かかった。
「沖縄の12月は、平均18度らしい。」
正紀が何気ないうんちくを言って、立体駐車場らしき所に歩いていく。
立体駐車場は2つあり、その間に挟まれたように那覇空港駅があった。
僕は正紀と別れて、レンタカーを借りるつもりだった。
正紀は、実家に帰るだろう。
迷惑はかけられない。
「じゃ、正紀。ここで別れよう。」
すると、正紀は残念そうな顔をして、
「そうか…、お前と久しぶりに逢ったし、観光でもしたかったんだけどな。」
…一緒に観光でもしたかったんだけどな?
実家に帰るんじゃなかったのか?
「ま、まてよ!やっぱ一緒に行く。」
正紀は、最初からこうくることが解っていたかのように、ニヤリと笑った。
「そうかそうか!やっぱり、持つべきもんは、友達だな。」
僕は、こいつ、と思った。
最初からこうなることを解ってやがった。
長いつきあいだと、相手の考えがよく解ってくる。
僕は、思わず吹き出してしまった。
それに合わせて、正紀も笑い出す。
そして僕達は、立体駐車場に向かった。