最終章「わがまま」
沖縄美海水族館は、海洋博記念公園の中にある。
記念公園には、色々なレジャー施設があり、その一部にビーチがあるのだった。
そこに居るはずだった。
……やっぱり居た。
彼女は泣いていた。
潮風に髪がたなびいている。
そう、いつか見た景色。
「ゆ…」
一瞬止まった。
優太が彼女を呼ぶ前に、彼女から近づいてきた。
戸惑った。彼女の顔が、余りにも憂いに満ちていたから。
彼女は顔を近付けて、唇を当ててきた。
生まれて初めて、彼女と唇が重なった。離れた後の彼女の顔を見ると、胸が痛んだ。
「ありがとう…、最後に、あなたとここへこれて良かった。優太、バイバイ」
彼女は手を振っていない。
涙が、手を振っていた。
もうすでに、10時を廻っている。
彼女は月明かりに照らされて、輝いていた。
後ろ姿さえも…。
すべてが……、伝わってきた。その…背中から………。
優太の中で、追いかけようと決意したあの時のように、何かが弾け飛んだ。
そうだ、なんで迷ってんだろう。
『おいかけろよ』
正紀の声が響いた。
「まって!」
僕は叫んだ。
叫びと共に、一陣の柔らかい風が吹く。
彼女が振り向いた。信じられないほど綺麗だった。
すべてが。
「ごめん、ずっと、ずっと!沖縄にきてから、ずっと迷ってた。今、答えが出たんだ。…由紀」
彼女が、振り向く。切なそうに。
「俺の、わがまま聞いてくれる?」
由紀が目を閉じて、ゆっくり頷く。
「なに?聞いてあげるよ。」
……………………………
僕達は今、オーストラリアに居る。
静かに、酪農を営みながらの、生活を送っている。
予想はついていると思う。
そう、それが、俺のわがまま。
去年、子供が生まれた。双子の男の子だった。
今日は、クリスマス。
僕と雪と子供達で、静かに、いや、賑やかに、盛大に祝っている。空は、花びらが舞うように、儚く、美しい雪が踊っている。地面は、その雪が延々と続く草原に薄く積もり、綺麗な薄い青空の色を映し出している。
夜の帳に散りばめられた星が、クリスマスという日を祝福していた。
今日は、クリスマス。
今という幸せを、クリスマスという幸せを。
これが、この幸せが、クリスマスの奇跡なのだから………。
この度は、未熟な文章に最後までお付き合い頂いて有難う御座いました。
初めてということで、緊張もあり、度々ミスをしてしまい、申し訳ございませんでした。
えー、今回は、物語が2日間だったので、書き上げたのも2日間でした。
少しベタになってしまったかも…と内心焦ったんですけどね(笑)
楽しんで頂ければ、幸いです。
では、これからも機会があれば、書き続けていきたいと思いますので、応援の程、よろしくお願いします。