第十章「迷い…そして。」
優太は今、沖縄美海水族館に居る。
彼女に連れてこられて…。
ただ、彼女は居ない。
彼女は泣きながら、走っていってしまった。
「……………」
絶望だった。
まさか………。
正紀も、もう居ない。
彼は優太達をここに送って、実家に帰っていった。
彼なりに気を使ったのだろう。
今、僕は一人ぼっちだった…。
そして今、究極の選択をしている。
彼女か…人生か…
大半の人は人生を取るだろう。
多分、昨日の僕だったら、後者を選んでいた筈だ。
ただ、今は昨日と状況も自分も違う。
彼女は、多分海辺にいるだろう。
それだけは解っていた。
何度となく、夢にでてきたからだ。
優太の頭の中は、4文字の塊が堂々巡りしていた。
政略結婚……。
彼女と最高の時を過ごしていた優太に絶望を齎した暗黒。
そう、これを抜け出すには、駆け落ちという名の4文字で対抗するしかなかった。
多分、今では殆どないことだろう。
駆け落ちなんて有り得ないと、優太自身思っていた。
ただ、こうやって現実を突きつけられている。
駆け落ち…つまりそれは、全てか、彼女かということだ。
「まさか…、そのまさかだな…。ドラマみたいな展開になっちまったよ…」
一人で皮肉りながら、笑った。強がりだ。
僕の腹は、決まっている…筈だった。
沖縄には、日本円を海外の金にできる所もあるし、国際線の空港もある。幸い、バイトで貯めた金が100万程ある。
それに、去年彼女と共に、外国へいったからVISAはまだ有効だろう。
この金で駆け落ちを、海外に行くしかない。
日本では直ぐ見つかってしまうだろう。
だけど…
優太の頭は、恐怖と迷いで震えていた。普通は迷うだろう。色々な絆の糸をすべて断ち切るのだから…。
「……………」
優太の心の中が、戦争をしている。
あの時、誓った決意が揺らいだ。
迷うな……。
諦めるな………。
自分を必死で励ます。
「行こう」
優太は、ベンチから立ち上がった。
水族館を見回すと、幸せそうなカップル達が目に入った。
多分、優太は目を羨ましそうに、細めていただろう。
優太は心が絶望に走る前に闘うか、逃げるかの決心をつけるため、
「彼女の所に向かおう」
と、呟いて海辺へ向かった。




