第十四話
は??
「棗を・・・??な・・・んで・・・??」
「アイツには色々と仮があるんでね。」
「か・・・仮??」
もう訳が分からなくなっていた。
「そう。俺ねー。アイツの親父とやり合ったことがあるんだよねー。」
そういうと目の上にある傷を触って説明し始めた。
「この傷ねー、アイツの親父がつけたの。ナイフでね。
でもその親父はもう居ない。
だからアイツを、ね??分かるかな??」
信じられなかった。
棗を何故・・・
「だからあの時、棗を殺そうとしたんだけどね。
とんだ邪魔が入って。その邪魔って奴は君だよ。舞ちゃん」
じゃぁあの時、あたしが入らなければ――
嫌、今はそんなことより棗に来させてはいけない。
あたしは必死にポケットから落ちる携帯電話を隠していた。
「それで、俺等棗の携帯番号を知らないわけ。
教えてくれない??」
そういうと、あたしにナイフを突きつけた。
どうしよう
どうすれば良いの??
棗に害を与えてはいけない。
でも死にたくないよ・・・
「早く。さっさと教えろ小娘が」
「い・・・や」
「あ??」
恐怖に脅えながら、それでもシッカリ棗を守ろう。
そんな気持ちからは、ちゃんとした言葉が出なかった。
「教えろや。死にてぇのか?!」
――――――――
棗が冷蔵庫を開ける。
あぁ・・・何もねぇなオイオイ。
・・・暇。
っつか舞来るの遅い。
何やってんだ、アイツは・・・
でも唯衣と優の帰り道って・・・
あんま良い噂無いな・・・
もしかして不良に絡まれてるんじゃねぇの??
・・・電話した方が良いか
そう思いながら携帯を取り出す棗。
慣れた手つきで電話番号を押す。
プルルルルルルルル
―――――
舞の着メロが鳴る。
「おっと誰からだい??舞ちゃん。」
手を後ろで縛られるため、携帯を取り出す事が出来ない。
それを他所に不良は携帯を取る。
今も着メロが鳴っている携帯に出る不良。
「もーしもーし」
『あんた誰??』
棗??
電話から音が漏れている。
この声は棗――・・・
「あんた誰ってねー。君から電話掛けてきたんだよ。
普通自分から言わなーい??棗ちゃん」
『テ…テメ、舞は?!舞は何処にやった!!』
「此処にいるよー。弟分がナイフつきつけていまーす」
『…ハ??舞が何かしたのかよ!!』
「いーや??なーんにも。」
『じゃぁ何で舞に!!!』
「さぁ??はーやくしないと死んじゃうよー。」
電話の向こうから玄関を開ける音がした。
『場所は?』
「この前の と こ ろ よ 」
語尾にハートを付けるように喋る。
『今行くから。手出すんじゃねぇぞ!!』
棗が怒鳴っている。
此処まで怒ったのは初めて見た・・・
―ピッ
電話を切る音が大きく聞こえた。
―棗、来ないで
来ちゃ駄目だよ
「ねー、舞ちゃん。舞ちゃんさぁ」
俯いて聞いていた。
「棗のこと、好きなんでしょ??」
「ッ!?」
「図星、梅干、煮干??フフ、アイツは確かにカッコイイもんね」
「・・・」
「殺す前にアイツ使って金儲けしようか??」
「・・・は??」
「あらら、強気ねぇー。アイツなら体も良いだろうな。
アイツはクールキャラだから別に余計な笑顔振りまかなくても・・・ね」
何コイツ・・・
「1回10万くらいで売れるだろうね。」
「舞ッッッッッ!!!!」
ドアが大きく音を立てて開く。