第十二話
ピ――――
医者が今まで以上に忙しく動く。
あたしは医者に「下がってください」と言われ命令に従う。
何が起きたの??
何してるの??
お母さんによく分からない機械を当てて電気ショックを与える医師
それと共にお母さんが大きく飛び跳ねる。
ちょっと待ってよ。
こんなに飛び跳ねているんだよ。
生きてるんじゃないの??
怖い。
怖いよ。
怖いよ、棗
何がなんだか分からなかった。
事実を知るためにあたしは踵を返して走った。
目の前の大きなドアを開ける。
現実しか見ない棗に
問いかけようとしたんだ。
「棗・・・」
「おかあ・・・・・・舞・・・??」
棗はあたしの名前を呼ぶ前に
『お母さんは??』
って言おうとしたんだね。
目が真っ赤で
流れ落ちる涙
呆然と立ち尽くしているあたしを見て
言うのを止めたんでしょ??
ねぇ棗・・・
「機械のメーターの緑の数字がね、0になったの。どういう意味なの??」
棗は黙って俯いた。
教えてよ。
「舞・・・」
「ねぇ!!教えてよ!!!」
「あれはな、心臓停止の合図なんだ。心臓停止しても一時的な物かもしれない。
だから行って来な。」
「・・・うん」
もう一度・・・
勇気を振り絞った。
「お母さんッッ!!!」
―ピピッピピッ
メーターに記された緑色の文字は
「73」
ものすごく気が抜けたような気がした。
「お母さんっ!!!お母さんッッ!!!!」
あたしはお母さんを必死に揺さぶった。
医師が口を開いた。
「北野さん、今はお母さんを安静にしておいてください。
まだ安全な状態だと言うわけではありません。」
あたしはお母さんから手を離した。
「ま・・・い・・・」
空耳??
お母さんの声だった。
お母さんに目をやった。
そこには虚ろな瞳でこちらを見ていたお母さんが居た。
何度も目を擦った。
その一つの理由は
現実か幻かを見分けるため。
もう一つは
お母さんがあたしを見たときに涙を見せないため
「舞・・・」
目を擦り終えるとちゃんとした目で見ていたお母さんがいた。
「お母さんッッ!!」
医師も少々驚いていた様子だった。
「お母さんっ、お母さんッッ!!」
「舞、お母さんね・・・」
「うん、うんっっ!!」
鼻水を啜りながら聞いた。
嬉しいはずなのに、涙が溢れている。
その涙がお母さんの頬に――
「お母さんのお葬式、しなくて良いよ。」
「え??お葬式??」
何で?
生きてるじゃない。
「私達のお家はお金少ないのよ。でもね、舞の貯金に丁度、昨日
210万円ほど通帳に入れておいたわ。
もうちょっとで高校生よ。それまで1人ならそれで暮らせると思うわ。」
意味が分からなかった
「高校生になれば何とかアルバイトも出来るはずよ・・・
何とか頑張って・・・
中学三年生なんだから1人暮らしも出来るわよね??」
あたしは、うん、うんっとしか言う事が出来なかった。
「舞は自由が好きでしょう。施設なんて嫌でしょう。
友達と一緒が良いよね。高校には何とか入れると思うわ・・・
でも私達の家はもう・・・
だからアパートか何か探しなさい・・・
ごめんね、押し付けちゃって・・・」
私達の家はもう・・・ もう何??
分からない・・・
お母さんは何度も「ごめんなさい」と謝っていた。
「舞」
お母さんが真剣な目つきであたしを見る。
「大好きよ。」
ピ―――――
医師がまた忙しく急ぐ。
意識が再び遠のいた。
数分後
お母さんの顔には白い布が被っていた。
もう涙なんて出さないよ。
出したら心配するもんね、お母さん。
あたしは何時の間にか廊下に出ていた。
隣に棗が居た。
棗の目の前でも泣きたくなかった。
だから頑張った。
「泣けよ」
棗が一言ポツリと言った。
涙がどっと溢れた。
「お母さんっ、お母さんッッ」
膝をついた。力が入らなかった。
棗はあたしを見下ろしていた。
でも無言で同じように膝をついた。
ちょっと首を傾げたような格好をしていた。
泣きじゃくっていたあたしはもう自由が利かなかった。
ダメだと分かっていたのに
我慢しきれなかった
あたしは棗の首に手を回して
棗の胸に顔を埋めて
棗の服がビショビショになるくらい泣きじゃくった。
棗に嫌われちゃう。
ゴメンね、棗…
ごめん、ごめん…
でも頭の上に温かくて大きいものが触れた。
棗の手だった。
ポンポンっと、頭を撫でてくれた。
抱きしめてくれる事は無かった。
でも贅沢だった。
数分後、棗が立ち上がった。
「行こう」
あたしも立ち上がる。
――――――――――――――――――――
もう火葬もした。
お葬式したかったけど、お金に余裕がなかった。
お母さんに何度も謝った。
でも窓もちゃんと開けて、魂が出るようにしてあげた。
そのくらいしか出来なかった。
でも悲しいときはすぐ隣に棗が居たよ。
まだマンションは決めてないけど、
家は言われたとおり出るよ。
お母さん――
―――
「あの、家賃は・・・」
「5万円ですね。」
「そうですか・・・」
5万円か・・・高いなぁ・・・
辛い・・・
でも隣には棗が居てくれた。
「なぁ」
「ん??」
「俺ん家来る??」
「え・・・」
「部屋空いてるし。」
「でも・・・迷惑でしょ・・・」
「家賃1000円」
悩んだ。
女嫌いの棗にとってあたしという存在が言えに居るってことはかなりの迷惑だ。
でも棗はそれを承知して言っているのだ。
第一、中学生の女の子が男子の家に・・・
でも棗は何もしない。
棗の家は都会だけど、田舎のアパートくらいの大きさはあるはずだ。
部屋もかなり余っている。
本当にいいのかな・・・
それから5日間、毎日毎日話し合った。
そして・・・
「おじゃましまーーーーすッッ!!!」
「・・・早くない??まだ9時・・・」
「まぁまぁ」
「で、そのダンボールの中は・・・」
「化粧品と洋服とヘアゴムと携帯とマクラです!!」
「・・・あとダンボール何個??」
「わからない!!タンスとかは本当に棗の借りていいの??」
「うん、まぁ・・・」
「有難う!!」
ベットや、まだ必要としないものは今から引越しセンターで頼んだ。
とりあえず棗に指摘された部屋は5つ。
その部屋を自由に使えと。
家具はそろっている。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
今日から新しい一日が始まるんだ。
スクロール、お疲れ様でした・・・;;
かなりやりすぎてしまいましたかね・・・
なんとなく行がいっぱいあると
雰囲気でると思いまして・・・;;