SNS規制後の世界を征く
※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。
昨年、世界に先駆けて16歳未満のSNS利用を禁止する法律が施行されたO国。
ネット上でのコミュニケーションの場を奪われた若者たちの生活は、どのように変わったのでしょうか。
現地の今をお伝えします。
まず、やって来たのは首都郊外。
住宅街に住むマーサ•ブキャナンさん(14)宅です。
「今は30くらいね。もっともっと増やしたいわ。」
そう言ってマーサさんが指さすのは、庭の一角を占める大きな倉庫。
昨年改装したというそこでは、鳩が羽を休めていました。
伝書鳩の鳩小屋です。
「友達とSPNSをするのに使うの。たくさんお喋りしたいから沢山飼わなきゃ。」
両親は、鳩の餌代に悲鳴を上げていると苦笑い。
今、首都の空は伝書鳩で一杯です。
街ゆく人は、飛び交う鳩に糞を落とされないよう、傘が欠かせません。
伝書鳩の活躍の場は、メッセージのやり取りだけに留まりません。
イラストをぶら下げた鳩が飛んでいます。
絵師が所有する宣伝用の鳩、通称【絵師鳩】です。
液晶モニタを首からぶら下げ、動画を流す鳩。
こちらは、かつてのユーチューバーが運用していると思われる、通称【動画鳩】。
鳩の身体には有名飲料メーカーのロゴがペイントされ、広告収入も得ているようです。
と、ここで一羽の鳩が猟銃で撃ち落とされました。
アダルト動画を流していた鳩が、当局により削除(物理)されたのです。
「BANですね。最近増えています。」
現地の人が言います。
SNSに代わる交流媒体として、今最も勢いのあるSPNS。
しかし、飼育問題や糞害など課題も多く、SNSの代替手段として覇権を握れるかは未知数です。
ところ変わって、次は首都中心部。ビルの屋上で必死に手旗信号を送る少年が居ます。
ビル街を中心に圧倒的なシェアを誇る手旗信号です。
顔を真っ赤にして、猛スピードで旗を振る少年。どうやら『煽られ』ているようです。
“Shit!!! Shit!!!“
“Noooooooo!!!!“
多人数を相手に応戦する少年。やり取りは数時間に及びました。
ビルの管理人は、昼夜問わず旗を振り続けるこの少年を、手旗信号依存症になりはしないかと心配しています。
ただ、日焼けして、日々たくましくなっていくその姿を見ると、止めようかどうか悩んでいるそうです。
都心部では手旗信号の利用増に伴い、16歳未満のマッチョ化が顕著という調査結果が出ています。
SNS規制で台頭するアナログ交流手段。
一方で、それが犯罪や事件に繋がるケースも増えています。
先日、飲食店チェーンの経営者が逮捕されました。
チキン料理と偽り、街の伝書鳩を勝手に捕獲して調理していたのです。
しかし経営者逮捕後も、行方不明になる鳩は後を絶たず、警察当局は類似犯が多数存在すると見て調査を進めています。
また、慣れない手旗信号による誤訳トラブルも日常茶飯事。
「了解しました」が「死ねアホ」と伝わり乱闘騒ぎへと発展する、といったトラブルは後を絶ちません。
こういった騒動を受けて、国は現在アナログ通信用の情報リテラシー教育カリキュラムの策定に追われています。
最後に、今回世界に先駆けてSNS規制に踏み切ったO国政府関係者が我々に語ってくれました。
「世界初と言ってもですね。SNS規制が『伝書鳩』や『手旗信号』に発展するなんて予想、一体誰が出来るって言うんですか?」
SNS規制の難しさに困惑しつつ、国民に対してさらなる理解を求めていく姿勢が窺えました。




