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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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通話プラン

 カリンさんは配信者だ。スマホに配信用アプリが出てから長くなるが、いろいろと機材を買えるようになったのは最近だそうだ。ついついバイト代をはたいてスマホ用のマイクやストリーミング用の機材をいろいろ買ってしまった。


「配信は楽しいんですけど……やっぱり変なこともありますよね」


 太客が付いていたという。その人は、配信の度に高額の投げ銭をして応援してくれていた。リスナーがファンとして長く付いてくれることは少ないが、その人は数ヶ月経っても離れることはなかった。それに甘えてついつい長く配信をしてしまった。


 彼は所謂通話プランにも入ってくれていた。月額でそれなりの金額を払うことになるが、直接通話アプリ経由で月に一回話が出来る権利だ。


 そこまで熱心な人なのだが、決してこちらの情報を聞いてきたりしない、マナーの良いことだし、聞いてこないにこしたことはない。しかし彼はあまりにマナーのいい人だった。時には配信用機材をギフトとして送ってくれたりもした。こんな都合のいい人がいるのだろうかと逆に不安になるほどだ。


 なんでこの人は自分のリアルに関わろうとしないんだろう? そう不思議に思うこともあった。こういうガチ恋ファンは結構リアルに探りを入れてくる人がいるが、彼は決してそんなことはしない。私のことを知ろうともしないし、彼も自分のことをほとんど語らなかった。だから匿名同士の関係みたいなものだった。


 彼と別に何があったわけでもなく、配信の度に投げ銭が入ると彼の名前を読み上げて、コメントを読む程度の関係が続いた。


 しかしある日、SNSに潜っていると彼のアカウントを見つけてしまった。全くの偶然であり、彼は検索に引っかからないよう慎重に書き込んでいたし、こちらのことを推してはくれているのだが、名前を置き換えるなどして美味く検索から逃げていたのだが、たまたましたエゴサで彼の書き込みが引っかかった。


 SNSはしていないのだろうと思っていたので、興味が湧いて彼のアカウントを開いてみた。そこで絶句する書き込みがあった。


 それは彼が先月に急病で亡くなったという家族からの書き込みだった。きちんとアカウントの存在を家族に伝え、引き継ぐ根回しをしていたのだろう。彼の死を悔やむ書き込みが大量についていた。


 しかし彼とは一週間前に通話をしている。毎週数回の決まった配信にも現れて投げ銭をしてくれている。別人だろうか? 誰かが彼を引き継いでわざわざ投げ銭をしてくれている? どう考えてもおかしかった。


 よく見ると、彼のアカウントが引っかかったのは、引き継いだ人が検索に引っかかってしまうように自分の名前を書き込んでいたからだった。投げ銭は一応故人を引き継ぐことも出来るが、問題は通話の方だ。間違いなく先週いつもと同じ人の声で通話をしていた。


 怖くなったのでそっと使っていたアカウントを消して、界隈で言うところの転生を行った。今のところ旧アカウントのファンは付いてきてくれているが、太客だった彼はそちらにはついてこなかった。


「あの人には悪いと思うんですが……やはり亡くなった方のアカウントから投げ銭をもらうのは気が引けますから」


 なんとも後味のよくない話だが、ネット上で完結している出来事なので彼が死んだのかは半信半疑だそうだ。出来ることなら生きていてほしいと彼女は最後に言った。

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