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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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人柱の効果

 カグヤさんが住んでいる町には橋が架かった川がある。その川は昔は増水しやすく度々かけた橋が壊れていた。近年になって架かった橋はコンクリートで頑丈に作られているので川に流されたりはしないのだが、一本の古い橋には謂れがあるそうだ。


「あの……人柱って信じますか?」


 人柱、つまり橋を作る時壊れないことを願って人を埋めるという生贄だ。そんな行為はとっくに消え去った風習だと思うが、彼女の済んでいる町ではまことしやかにその橋には人柱が使われていると語られていた。


 私が頷いたのを見てから彼女は話を始めた。


 その橋もコンクリート製なんですけど、昭和に作られたというのに人柱が使われたと噂になっているんですよ。不気味でしょう? それに昭和ですよ、いくら元号が代わったとは言え、もう機械の時代が来ていた頃ですよ、そんな時代に人柱なんて正気じゃないと思うんですけどね。


 噂だとは分かっていてもどうしても不気味なのでその橋を迂回して生活していたんです。幸い川を渡る必要が頻繁には無かったのでたまに橋の向こうに行く時は遠まわりをしても困らなかったんです。


 ただ、高校に入ってから塾に通えと言われたんですが、その塾が橋の向こう側にあるんです。成績が悪かった自分が悪いんですけどそうなると毎日のように遠まわりするわけにもいかず、その橋を使うしかないんです。はっきり言えば嫌なんですが、面倒くささと気持ち悪さを比べたら楽な方に流れちゃったんです。


 それでしばらくはその古い橋を渡っていたんですが、別に何事もなかったんです。噂は所詮噂だと思って一月もすれば気軽にその橋を渡るようになっていました。


 ただ、問題が起きたのはその年の台風です。台風が近づいているとニュースになっていましたが、その日はまだ上陸していなかったので普通に塾に行ったんです。暗くなってからの帰り道に橋を通ったんですが……


『何でだ……誰も使わない……橋』


 何故かそんなことをブツブツ言っている人が橋の真ん中に立っていたんですよ。怖くなって隅の方をコソコソ通ったんですけど、そのときに男の顔が見えちゃって、ニタニタ笑っているんですよ。怖くなって駆け足で橋を渡って家に帰ったんです。そのときは変な人も居るなと思うくらいでした。


 翌日は台風の直撃で川は増水して塾どころか学校も休校になりました。結構な雨が降って、いよいよダムが放水を始めると放送があったんです。家の中にこもってその台風をやり過ごしたんですが、台風が通った後は……


 橋がその古い橋から近いところだけ壊れていたんです。でも一番古いはずのその橋だけは普通に川の増水に耐えたんですよ。それで仕方なく皆その橋をつかうようになりました。


 落ち着いたら塾も再開したのでその橋を渡っていたんですが、普通に人が通るようになった橋の真ん中にあの笑う男が立っていて、今度はニタニタした嫌らしい笑みではなく恵比寿顔で満足げに立っていたんです。ただ、誰もその男のことは見えていないようでした。私は無視して橋を渡ったんですが……やっぱりあの男が人柱にされたんでしょうか? そりゃ命を賭けたのに誰も使わないなんて悲しいですもんね。


 彼女はそう言って話を終えた。興味が湧いたのでその町の歴史について調べてみたのだが、ついぞ人柱の記述は見つからなかった。そんな後ろ暗い風習を記録に残すのかという疑問もあるので完璧な調査ではないが、彼女の話した男が人柱かは疑問の残るところである。

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