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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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鐘は信じられる

「地元の話なんですけどね、廃寺があるんですよ。不思議な事にその寺の鐘が鳴るんですよね」


 イトウさんはそう言って話を始めた。


 廃寺なのに何で鐘があるままなのかは不思議だったんだけどね、おばあちゃんが『あの鐘の音が聞こえたら気をつけんさい』って言うんです。あの鐘は危険を知らせてくれるそうなんですよ。


 ただ、その謂れとかいうものは分かっていないらしいんですが、とにかく大昔からあそこは廃寺で、それでも崩れず建物がそのままらしいんですよ。おばあちゃんが大昔というのにその鐘は随分と立派な作りの建物に吊されていますよ。不思議じゃないですか? どうして手入れもなにもされていない鐘が無事なのかってね。


 始めは信じてなかったんですけど、ある日その鐘がなったんですよ。ゴーンと小さく聞こえた途端家族は全員家を出ていったのでついていくと、周囲の人も出てきて鐘の音が聞こえた家の人を探していました。それからウチが一番大きく聞こえたと言う家が名乗り出て、そこに行くと隣の空き家から火が出ていました。


 大急ぎで消防を読んで消火したので小火で済みました。空き家だったので被害者もいませんでした。火元は教えてもらえませんでしたけど、放火ではないかと噂になっていました。


 それからも交通事故が起きた場所の近くの家なんかで鐘の音が聞こえたと話題になっていました。ただ、一番問題だったのは皆が聞こえた時ですね。


 ある日、コーンと小さな鐘の音が響いたので、『また何かあるのか……ヤダなぁ』と思いながら家族に確認すると家族全員が聞こえたそうなので表に出ました。まわりの家の人も出てきていたんですが、全員が鐘の音を聞いたと言うんです。


 それから周囲に訊いていくと皆が小さな音を聞いていると答えたんです。尋ねた人皆が聞こえたというので町はパニックになりました。


 怖くなって全員が気を張ったまま一晩過ごしました。翌早朝に小さな地震が町に来ました。ブロック塀が破損する程度の被害しか出ませんでしたが、あと、町の人全員が聞くという異常事態に一安心していましたね。


 以降も時々鐘が鳴ったらしく町では聞こえるなり急いで避難するようになったそうです。


 それから一息置いてから彼女は声のトーンを落とす。


『みんな鐘が災いを予知してくれているって言いますけどね、私は思うんですよ。もしかしたら鐘が災いをもたらす家に向けて音を鳴らしてるんじゃないかってね。だって火事があった時空き家で火の気が全く無い家が燃えましたけど、燃やす理由なんてないでしょう? だからもしあの鐘が教えてくれていたんじゃなく災害を起こしているのだとしたら……怖いんですよ』


 そう言って彼女は身を震わせた。私は『あまり悪い方に考えない方がいいですよ』と言って話を受けとったのだが、その町の近況を調べた時、廃寺が取り壊されたという記事が見つかり、それ以降事件が目に見えて減っていた。果たしてあの鐘は一体何がしたかったのか? それは人間にはわかり得ないことなのだと思う。

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