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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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蹴飛ばす

 エビナさんは昔、奇妙な体験をしたそうだ。ただ、その事も忘れかけているので私に話しておきたいということだ。


「本当にあの子が居たのか自分でも自信がなくなってきているんです。でも記憶には確かに残っているんです」


 あの子……ああ済みません、どうにも名前が思い出せないんです。女の子だったのは覚えているんですけどね。とにかくその子は私と遊んでいたんですが、何というかとにかく残酷な子だったんですよ。虫を見れば踏み潰しますし、トカゲを見れば尻尾を引きちぎるような子でした。本当に何であの子に付き合っていたのか分かりませんが、小学生なんてそんなものなのだと思います。


 ただ、その子も次第に残酷さを増していって、ついには小動物を見れば蹴り飛ばすような子になったんです。道を歩いていて子犬が歩いていれば飼い主が見当たらないなら思い切り蹴り飛ばしますし、捨て犬なんて……いえ、気分の悪くなる話はこのくらいでいいですね。とにかくそんな子が私の友達だったんですよ。


 その子が誉められたものではないのが確かなんです、でも人には暴力を振るわなかったんですが、酷いものでした。というより、人にさえ暴力を振るわなければ何をしてもいいって子でした。あの子、私が一緒に帰っている時は必ず生き物を痛めつけていたんです。しかも必ず私が一緒の時に見せつけるようにやるんですよ。


 ある時なんですけど、道を二人で歩いていると白い犬みたいなものが歩いていたんです。その子は首輪がないのを見て迷わずそちらに向かって行き、蹴飛ばしてから足を乱暴に掴んで思い切り投げ飛ばしたんです。私が止めようとすると、首輪も無いし飼い主がいないならいいでしょと言っていたんですが……それがその子が記憶に残っている最後の日です。


 それ以来なんですが、どうしてもその子の思い出が出てこないんですよ。それどころか、同級生の誰もその子のことを覚えていないんですよ。あの子、本当に居たはずなんですよ。ただ、先生までそんな子はいないとはっきり言われると自信がなくなるんですよ。その子の家も知っていたはずなんですけど、どこなのかさっぱり思い出せないんです。


 それからついに私の中の記憶も薄れていっているんです、始めはイマジナリーフレンドということも考えたんですが、そんな子を私の想像力が生み出したとでも言うんでしょうか?


 ある程度歳を重ねて知ったんですが、あの近所に寺があるなって親に言ったら『何言ってんの、アレは神社よ。お稲荷さんを祀っているの』と言われたんです。そこでお稲荷さんという言葉で、あの白い動物はキツネだったんじゃ無いかと思うんですよ。神罰が下ったといえば話は簡単ですけど、どうもそんな問題じゃないような気がしてならないんですよね。


 あの、怪談をたくさん知っているんですよね? じゃあアレが私の想像が生み出したものだったか、もしかしたらお稲荷さんが皆の記憶を改ざんしているかどちらか分かったりしませんか?


 私もそこまでのことは知らない。『ご期待には添えませんが、そう言ったこともあるでしょうね」としか言えなかった。果たして本当に神様の使いだったとして、日本の戸籍から抹消することなど一介の神に出来るのだろうか? よく分からないことが多すぎる話だった。


 なお、彼女は最後までその女の子のことを覚えている一人だそうだ。今では他の誰に訊いても相手にさえしてもらえないのが当然になっているという。

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