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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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実家の禁足地

 クドウさんの実家には立ち入ってはならない、所謂禁足地があるそうだ。昔一度そこに入りかけて勢いよく走ってきた母親に引っ張られて家の中に連れ込まれて父親に頬を張られたそうだ。


「悪いことがあったわけじゃないんですけど、あそこには絶対良くないものがあるんだと思いますよ」


 俺はその日以来近寄ることさえ無かったですし、実家に親戚が揃ってもあそこは話にさえあげないのが当然だったし、触れない方が良い話題だとなんとなく分かったんですよ。


 なんとなくあそこは『危ない場所』なんだなって思いながら毎年実家に帰った時にそこをチラリと見て気分が悪くなってたよ。でも親戚の間でタブーみたいになってるわけで、興味は尽きなかったんだよなあ……


 でさ、俺には従弟が居るんだよ。ソイツがまた褒められたヤツじゃなかったんだよ。原付をパクって乗り回してその辺に捨てるようなヤツだったな。まあ、ブリーチしてあまり綺麗じゃない金髪にしているだけでも良い印象は無いな。身も蓋もなく言えばヤンキーだったんだよ。


 それでアイツは実家に帰ると説教されるのをうざがっていたんだがな、爺さんがあんなのでも孫だからと金を渡すんだよ。だから反省なんてしないし、素行不良も全く治らない様子だったな。


 ただな、ある時アイツが禁足地に入ろうとしたんだよ。家の隅に注連縄で囲まれた場所があったんで興味が湧いたらしい、ヤンキーの考えることはよくわからんが、アイツはそこに入ろうとして父親に思い切り殴られてたよ。それが随分不満だったんだろうな、その晩泊まっている部屋から庭を見下ろすとアイツが庭にいるんだよ、禁足地に近づいて行っているのを見て止めようと『やめろ!』と言おうとしたんだが……言えなかったんだよ。そこから光る青白い手がニョキニョキ生えててさ。アレは『見ちゃいけないものだ』と一瞬で分かってそれからずっと震えてたよ。


 ソイツが問題かって? もっとおかしな事が次の日にあったんだよ。帰省から帰る日だったんだが、朝俺が起きると食卓にその従弟が居るんだよ。なんか妙に礼儀正しくなっててさ、一晩でそんな人間って変わらないだろ? ましてアイツは深夜まで起きてたんだぞ? 俺だって朝がつらいのにアイツはしれっとした顔で朝飯を食べてるんだ。ありゃ何かあったなとすぐに分かったさ。


 アレがなんだったかなんて事は考えたくもないね、どうせクソみたいなものに決まってる。ただなあ……アイツは何故か礼儀正しくなったんだが、その両親は酷く悲しそうな顔をしているんだよ。たぶんまだまだガキだった俺以外の大人はあそこがなんなのか知ってたんだと思うよ。


 でさ、その従弟なんだけど礼儀正しく社会人やってるんだが、俺はあの日帰る時にあの禁足地を見たんだよ。そうしたら土まんじゅうみたいに底に土が盛ってあったのが見えたんだ。たぶん従弟はあの場で生まれ変わったんじゃねえかな。ま、全部俺の想像だがな。あそこに何かあるのは確かだよ。


 誰かが酷い目に遭ったりもしていないんだがなあ……どうにもアイツは素行が悪いままの方が良かったんじゃないかなんて今更になって思うんだよ。


 クドウさんはそう語り、遠い目をしてビールをあおった。彼は実家に帰る事は出来るだけ避けているらしい。ただ、正月は帰ってこいと言われるのでゲンナリしながら行くのだが、彼にとってはあの禁足地より礼儀正しくなった従弟に会う方が怖いそうだ。

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