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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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会社の不思議

 学校の七不思議というものは一時期どこの学校でも流行ったものだが、カワタさんの勤めていた会社には『○○の七不思議』というものがあった。○○というのは企業名なので伏せておく。


「なんというか……今では少し後悔しているんですよね」


 彼は真夏の暑い盛りに飛び込み営業をさせられていた。当然良い反応などもらえるわけがない、『帰れ!』と何の説明も出来ず言われることもあれば、営業の話を持ちだした途端手近なものを投げられて追い出されたこともあった。屈強なメンタルを持っていればまた違ったのだろうが、普通の人にはとても耐えられるような環境ではなかったという。


 その日は特に酷く、どこからも話さえ聞いてもらえなかった。そのまま無駄に時間を潰して帰社しようかと思ったのだが、上司から『契約取れるまで帰ってくるな!』と怒声を浴びせられては帰社も出来ない。仕方なく形ばかりの営業を続けた。一件くらい話を聞いてくれてもいいのにと思っていたが、自分が上司にセールスの電話を取り次いでしまった時には怒声が飛んできたので、そりゃあ自分なら話なんて聞かないよなと思う。


 どうしたものかと困っている時、ふと思いだしたことがあった。会社に伝わる怪談の一つに人を呪う方法があったことを思いだした。


「ほんの出来心だったんです」


 彼は一件になんとかパンフレットを渡し、後日話を聞いてもらう約束を取り付け這々の体で会社に帰ってきた。日報を書き、タイムカードを押してオフィスに誰もいないのを確認する。


 誰一人残っていないのを見ると自分の出来の悪さが嫌になるが、しかし今はそれが好都合だ。上司のデスクに近づき見てみると、そろそろ使い切るであろう私物のボールペンがあった。ボールペンくらい支給してくれても良いだろうに。とは思ったが、こののろいでは私物を使う必要があるのでデスクの上に投げ出してあるボールペンはとても都合のいいものだった。


 そっとそのボールペンをポケットに入れ、会社のある場所にありったけの呪詛と共に投げ込んだ。投げ込んでから後悔したが、今更取り出せるような場所でも無い。どうせ噂くらいのものだからと、気にするのをやめて退社した。


 その翌日、眠い体に鞭打って出社すると、上司のデスクに誰もおらず、後から先日卒中を起こして病院に入っていることを教えられた。


 結局、その上司は命は落とさなかったが、判断力も落ち、状況の把握さえ上手には出来ない程度に脳がダメージを受けているので退職したと後になって聞いた。


「それで、怖くなって退職届を書いてタイミングを見計らって提出して逃げるように辞めました。上司にあんなことをするんじゃなかったと今になっては思っています」


 私は一つの疑問を伝えた。


「あの、呪いをかけるためにボールペンはどこに投げ込んだんですか?」


「勘弁してください! それはどうしても言えないんです」


 彼の取り乱す様を見て、一体その会社にはどんな呪いを抱えた場所があるのだろうと思った。なお、その某社は今でも営業の成績が良いそうだ。ただ、離職率も結構なものだった。

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