ゴースト冷菓店
アサダさんは子供の頃妙な体験をしたそうだ。解決も解明もされていない話で良いならと言う条件だが、全く問題無いのでお話を伺った。
「何か害があったわけじゃないんですが……一体何を食べたんでしょうね」
まだ小学生の頃になります。褒められたガキじゃなかったですよ、犯罪こそやってないものの、模範的とは言い難い子供でしたね。夏休み前のことです。学校帰りに冷菓店に寄ってアイスを買ったんですよ、ほら、あの真ん中から二つに折って食べるヤツです。正式名が何だったかは知りませんが分かるでしょ?
一応買い食いはダメなんですけどね、そんなものが守られているかといえば……お察しでしょう。何しろ通っていた小学校には万引き常習犯までいましたからね。買い食いならきちんとお金を払っている分マシだと思います。褒められたこっちゃないですが……
アイスを吸うように食べながら帰宅したら鍵を開けて入りゴミ箱にアイスの空を投げ捨てて宿題をやりました。結構な量がありましたよ、もしかしたら宿題に割く時間が大きければ悪いことが出来ないとでも思っていたんでしょうか? どーせそんなヤツは宿題をまともにやってこないと思うんですけどね。
とにかく、その日の宿題を終わらせるとその日は寝たんです。
翌日、遊んだ帰りに昨日の冷菓店で今度はカップアイスでも買おうかなって思ったんです。暑い時にはどうも耐えられなくってねえ。
それで冷菓店に向かったんですが……今の人って宮方霊柩車って分かるのかな? ほら、上の方がキンキラになっているいかにも霊柩車であると一目で分かるデザインのヤツです。それが店の前に止まっていたんです。流石に霊柩車の止まっている店で何か買おうという気はなく、そのまま帰ったんですよ。その晩のことでした。
「あそこ、何かあったの?」
そう母に問いかけたんです。
「あそこってどこ?」
「ほら、帰り道にあるでしょ、アイスとかいっつも買ってたところ」
「ああ……あそこね。この前おじいさんが亡くなったんだって。今日が葬儀だったそうよ。あんまり人にその事を言わないようにね、いくら偏屈な人だって亡くなったら神様なのよ」
母の言いたいところはなんとなく分かりました。つまりそういうことなのでしょう。
その晩考えたんですけど、あの時冷菓店でアイスを買った時には店主の爺さんが白黒に見えたんですよね。どうしておかしいと思わなかったのかは分かりませんが、生きている人だと思ったのに思い出の中の色がその人だけ白黒になっているんです。店の中はしっかり色づいている記憶なんですけどね。
それから間もなく冷菓店は崩されて駐車場になったんですけど、たぶんあの買い物をした時には爺さんのヤツ、もう死んでたんじゃないかなって思うんですよ。
最後に彼は『まあ、今となっちゃ確かめようのないことですけどね』と自嘲気味に笑った。




