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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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続いている理由

 カガさんの住んでいる地域にはしょっちゅう店が入っては出ていく土地があった。


「今は落ち着いてはいるんですけどね……」


 あまり良い気分では無いが何とかやっていけているらしい。


 始めは何だったかな? 小さめのスーパーだったかな? そんな物がたっていたんですよ。大店法がいろいろ変わった時期だったかな? その煽りに巻き込まれて逃げていったんです。


 その後できたのは居抜きでコンビニが出来てましたかね、時代を先取りしていたんでしょうが、先取りしすぎてお客さんが定着する前に撤退しちゃいましたね。コンビニが増えた頃にその付近にコンビニが乱立しているのはなんとも皮肉な話ですね……


 それからもなんだかんだ店は変わっていったんですよ。地主さんもバブルが弾けて売れない土地を遊ばせておく訳にもいかないのでなんでも良いからと入れていたんですよ。あるときは霊感商法みたいな悪徳店が入って売るだけ売ってすぐに逃げていくというトラブルまで起きたんですが、流石にそこまで来るとなかなかそこを借りようとする人が居なくなったんですよね。


 一時、トランクルームが出来ていたんですが、出来たてなのに雨漏りで中に入れていたものがダメになったと酷く揉めていたのを覚えていますよ。そりゃ新品同然に視えるのにそんなトラブルになったらクレームも出ますよね。


 ただ、ある時その土地に占師が店を構えたんです。地元の人は、ただでさえ入れ替わりが激しいのによくあんな物を建てたなって反応だったんですけど、意外なことにその占い店だけは長続きしているんですよ。中には興味半分、残りは冷やかしくらいで占ってもらった人も出てきましたが、結構あたっていると言っていました。そんな偶然あるのかと思ったんですがね……


 その占師は別に過度な装飾も無くパワーストーンのようなものも無く、占師が客の顔を見て言い当てるというものなんですが、これがあたるらしいんです。そんなことがあるのかなと思っていたんですよ。


 ある日、夜にちょっとコンビニまで酒を買いに行っていたら、占師が店を閉じているところを見たんです、思わず『精が出ますね』とその占師に言いました。ごく普通のスーツを着た女性で一見占師になんて視えませんでした。


「ええ、ここは随分と都合の良い場所ですから」


 その言葉が引っかかったのでつい聞いてしまったんです。どうしてここまで店が変わっていく土地で長続きしているのかってね。


 そうしたらその人は言うんですよ。


「でしょうね、ここは普通の店をやるには向いていませんよ」


 その言葉が妙に気になったので説明をしてもらえないかと訊いたんです。するとその人は近くの居酒屋で奢ってくれるならという条件で教えてもらいました。


 席に着くなりその人は唐揚げとビールを頼んで私の方を見て言うんです。


「あそこはね、元々墓場だったんですよ、随分巧妙に隠しているようですけどね」


 その言葉には驚いた。あの土地は昔から何か建物が建っていたので墓場だったなどにわかには信じられなかった。


「その顔は知らなかったようですね。まあ地主さんも言葉を濁すくらいだから隠したいんでしょう。ただ、それが占いにちょうどいいんですよ」


 それは何故ですか?


「ふふふ、占いをするのにお客さんの悩みを言い当てるんですが、そこにいる霊たちがいろんな事を教えてくれるんですよ。大抵占いに来る人というのは何か悩みがあってきますからね、そう言うのは霊たちの大好物なんですよ。だからそれを与えていれば霊も悪さをしないですし、何に気をつけるか伝えるだけで感謝されるんだから良い商売ですよ」


 悪びれずも言う占師に驚きの顔を見せ、彼女はそのまま出て行った。


 結局そこに墓場があったのかは確かめられませんでした。でも、その占い店は未だに繁盛しているようですね。


 彼はそう語った。私は、霊よりもそれを利用する人がいるものなんだなと妙に感心した。たぶんその店は霊とそれなりに共存していくのではないだろうか。

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