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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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神様の家庭教師

 ミタムラさんは小学生の頃から某所の学問の神様を祀っている神社に参拝を欠かさないそうだ。彼によると、今の大学に無事入学できたのもそのおかげだという。ただ、御利益があったとかそういう話ではないらしい。


「なんて言うんですかね……直接神様に指導してもらったんですよ」


 彼はそんな新興宗教の勧誘文句の言葉のような発言から話を進めた。


 初めてお参りしたのは小学生のころっすね、ガキなりになんだか厳格な場所だというのは分かったので俺を連れてきた祖父母の真似をして手を合わせてたんすよ。そのときに一万円を迷いなく放り込む物だから思わずそれに手が伸びそうになりましたよ。


 結構信心深いようで、俺なんかに期待してたんでしょうね。お世辞にも褒められたガキじゃなかったんですがね、神の力でどうにかしようとでも思ったんでしょう。


 それから何事もなかったので特別なことはなかったと思っていたんすよね。小学校から帰って宿題をやって遊ぶ、それだけの生活だったんですが、そのときに友達が居まして、ソイツが面倒な問題をスラスラ解いていくんすよ。小学生の俺からすれば魔法みたいに視えていましたね。それで、なかなか時間がかかっていた俺はその子に解き方を教えてもらったんすね。


 でさあ、ソイツがまた教え方が上手なんすよ。もう驚くくらいソイツに教えてもらうと問題がスラスラ解けるんです。勉強は昔からずっと嫌いなんすけど、面倒なことがソイツに教わると一気に片付くので宿題の部分だけはしっかり教えてもらいましたよ。おかげで小学校時代は成績に苦労することは無かったっすよ。


 中学に上がってからもソイツと一緒に課題を片付けてたんす。それと同時に正月に初詣に行くんすけど爺さんとばあさんは熱心に祈ってるんですよ。それから迷わず一万円を入れるので、その分お年玉が減るんですよ。だったら俺にくれよって毎回思ってましたよ。


 そのままソイツと課題を片付けて軽く遊んだ後で別れていました。そんな生活が高校まで続いたんすよ。高校じゃソイツが予習と復習まで教えてくれるもんだから次の日に指名されるときとかスゲー助かりましたよ。


 おかげさまでこうして上京を許される程度には良い代学に行けたんすけど、この前小学校の同窓会があったんすよ。長期休みにのんびり出来るのも今年くらいかと思って帰省したときに参加したんすけど……


「お前いつも一人で帰ってたよな? ずっと勉強してたのか? やっぱ偏差値の高いヤツは意識が違うな」


 そう言われて、はて? と思ったんすよ。だって帰るなりあの子と勉強を一気に終わらせて……


「いや、ちゃんと一緒に帰っていたヤツが……」


 そこで気が付いたんすけど、俺、アイツの顔も名前も声さえも思い出せないんすよ。じゃあどうやって教えてもらってたんだって話なんすけど、教えてもらった内容は覚えているのに、どうしてもアイツの声が思い出せないんすよね。


 同窓会って事だからアイツも来てるんじゃないかって思ったんすけどやっぱり居なかったんす。俺は誰に勉強を教えてもらってたのか分かんなくなりましたよ。


 それから実家に帰ると、『そりゃあ神様の使いじゃろ』とばあさんが言うんです。反論したかったんすけどあまりにもそれで説明がついてしまうんですよね……


 結局、今でも時期に差はあれど実家に帰ってそこに参ってますよ。バイト代から出すのは勇気がいりますけど、泣く泣く一万円を投入しています。効き目があったのか単位を落としてないんすよね。今じゃ一万で単位を買ってるんだと納得してますよ。


 そう言って彼は笑った。私は話の謝礼を渡すと、彼は『神様への支払いが少し楽になりますよ』と言って笑う。とりあえず大学を卒業するまではそこに通うのを辞めるつもりはないらしい。

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