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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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上に昇る

 ヒグチさんに始めに話を聞いたのは今よりいくらか前になる。そのときに彼は幽霊に対して腹を立てていた。そこから話を始めよう。


「マジでうっさいんですよね、時間考えて騒げっての」


 彼はその頃、住んでいるアパートで騒音問題に悩まされていた。何故そんなご近所トラブルに首を突っ込むかと言えば……


「なんで2階建てのアパートの二階に住んでんのに上から音がするんだよ、理不尽すぎるっての」


 彼は当時、格安の二階建てアパートに住んでいた。貧乏学生だったが生活には困っていなかった。ただ、一時から騒音が響いてきた。両隣を確認したが、間違いなく何も音を出しておらず、音源は天井から響いていた。


 一応屋上の確認をしてもらったこともあるが、異常なしで片付けられてしまった。瑕疵物件という言葉も浮かんだが、それにしては家賃は相場だし、告知もされていない。わざわざリスクをとって僅かな利益をかすめようとは思えない不動産屋だったのでそれは疑わなかった。


 とはいえ騒がしいのは確かなのでなんとかして欲しい。こまるなあと思いながら毎夜なんとか寝ていた。幽霊なのは間違いない、でなければ毎日夜中に騒げるものか。もし人間だとしたら昼間に寝て夜わざわざ屋上に上がって騒いでいることになる。そんな馬鹿馬鹿しいことをする奴がいるはずはない。


 迷惑だったが、何か対策が浮かぶわけでも無いので引っ越しを考えているときに、私が心霊現象に謝礼を出していると見てこれ幸いと連絡をしてきたそうだ。


「それで、分かれば出いいんですが引っ越すまでに何かあの幽霊どもを黙らせる方法は無いですかね?」


 そう言われても困るのだが……


「盛り塩でもされては如何でしょう?」


「それ、もうやったんですよ。スーパーで買ってきて塩を盛ったんですけど効果無かったですよ。


 残念、もうそのくらいのことはしたのか。そこでふと気が付いた、音は上から聞こえてくるのだろう。


「お線香を焚くのはどうでしょうか? 燃え移らないよう気をつかう必要はありますが、煙は上っていくので効果があるんじゃないでしょうか?」


 私も半ば当てずっぽうで言った。


「そうですね! それまだ試してなかったですし、帰ったら試してみますよ!」


 それで彼との始めの連絡は終わった。数日後、彼からメールが再び来ていた。


『ありがとうございます! いやーマジで線香って効きますね! 使い始めてからめっちゃ快適ですよ!」


 それから私へのお礼が書かれていたので、これで無事終わった話になるのだろうと思い、彼とのやりとりの記録を整理することにした。


 最後に彼からメールがあったのはそれからしばらくしてのことだ。


『線香を焚きすぎて部屋に臭いが付いたとかで敷金と追加で代金を取られました……』


 彼に申し訳ない気持ちはあったもののどうしようもない。ただ、彼の引っ越しは無事終わったそうなので一応の解決を見た。


 その後、たまたまその周辺を歩くことがあったのでそのアパートに寄って見上げてみた。二階の一室にのみカーテンも付いておらず、あそこが現場なんだろうなと一目で分かった。不動産業者には気の毒だが、線香を我慢して彼を説得すればよかったのになどと私は勝手に思ってしまう。

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