宿題の日記
コイデさんが小学生だった頃のある夏休みの話だ。
彼は毎年夏休みの宿題には辟易していた。毎回休みの終わり近くまでロクに進めないのが悪いのだが、それでもやはり腹が立つものはたった。
うんざりしながら休みの間の宿題を片付けていたのだが、一つ困った課題があった。それは日記だ。
日記なんてつけていないのだから書きようがないだろうと思っていたのだが、課題は課題だし教師は怖い。そこで彼は一つの妙案を思いついた。
食事をしていないという人はほぼいないだろう、数少ない例外と言えば胃ろうぐらいだ。そんな当たり前のことに気が付いた彼は、毎日人間がしなくてはならないことで日記を埋めることだった。
食事とテレビとゲーム、これだけ揃うと当時の小学生は大体やっているので実際にやっていたかの確認などしようが無い。そこで夏休みにやったいろんなイベントは無視して、ただ文字を埋めるだけの作業を続けた。
運良く日記は絵日記ではなかったし、最低限のことが書かれていればいいという文章力の拙い子供でも出来る課題だったので、当たり前のことを延々と書いていった。無事日記帳が埋まる頃にふと気が付いた。まだ休みの終わりまでは一週間ほどある、それなのに日記はもう最後まで埋まってしまった。
しかし、どうせ当たり前のことを書いただけなのだから問題ないだろう。そう思って諦め他の宿題に手をつけていった。
毎日少しずつ続けるべきなのは確かだが、一気にまとめてでも終わらせただけ自分はマシだと思いながら課題を終わらせた。未提出のヤツよりマシと考え問題ないだろうと判断した。
そして残り数日の夏休みを楽しもうとしたのだが、ふと気が付いたことがある。
「かあさん、今日はどうしてオムライスなの?」
「なによ? オムライス嫌いだった?」
「そうじゃないけど……」
その違和感は、日記に書いたとおりのことが起きていると言うことだ。当然のことで文字を埋めただけなのだが、書いた日より先の食事についても書いてしまっていたが、何故かその日記に書かれたとおりに料理が出てきたのだ。
その不思議な現象の正体は分からなかったが、そのまま夏休みは終わった。あの日記を書いてから、書かれている部分には確かにその通りになってしまった。宿題に嘘がなくなってよかったじゃないかと思いながら宿題を提出したら、教師は日記の内容の薄さに露骨に嫌な顔をしながらも、低いなりにも点数をつけてくれた。
「そんな感じで一応ハッピーエンドって事でいいんですかね? ただ、どうしても今になって思うんですよ」
彼は最後に一言付け加えた。
「あの日記に書いたとおりになるのなら、親が買った宝くじが当たるとでも書いておけばよかったですよ」
そう言って彼は話を締めくくる。理由は全く心当たりがないそうだが、悪いものではないと思っているらしい。




