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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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伝わる呪い

 チヨダさんは家を買ったとき、家鳴りに悩んでいたそうだ。


「普通じゃないんですよ、家鳴りって言ったら穏やかですが、実際はギィギィとかバタバタとかやかましくてかないませんでした」


 母親と喧嘩をして逃げるように一人暮らしを始めたんですが、そのときに住んでいたアパートでも同じような音がしていたんです。そのときは保証人無しで借りられるアパートなんてこんなものだと思ってたんですが……家を買っても同じ音が鳴るとは思えませんよね?


 いろいろと困っていたのですけど、音がどうも子供の声らしいことに気が付いたんです。足音がして、キィキィというのは人が登らないような梁なんかの上を歩いているようでした。


 しかし未婚なのに子供も何もないだろうと思いながら気にしていなかったんですが、そうしたら幽霊もつけあがったのか寝室でワイワイ話し出したんです。迷惑だなと思いながら無視を続けていたんですがね。


 彼女はなかなかの胆力の持ち主のようだ。霊が見えるだけでも体調を崩す人が多いなか、彼女ははっきり霊を感じても健康には影響しなかったらしい。


 実害は無いので放置で良いかなと思っていたんですが、私は無視できても家に来てくれた人は皆理由をつけて帰っちゃうんですよ。はっきり幽霊が出るからなんて言いませんけど、口調からなんとなく、見るか聞くかしたんだろうなと思いました。


 友人たちが誰も来てくれなくなると、流石に何か対策をした方が良いんじゃないかと思う反面、自分が友人の所へ行っても嫌な顔をされないならこのままで良いかとも思ったんです。でも、話が変わったのはお正月でした。


『初詣に行こう』友人はそう誘ってきたんです。断る理由も無いですし、普通に初詣に行ったんです。大きめの神社なので結構な時間を待たされたんですが、ようやく本殿の前に来たのでお賽銭を入れて、友人とお土産みたいな感覚で『家内安全』というお守りを買ったんです。


 それから一人で家に帰ったんですけど、空気が澄んでいるというか、いつもの見慣れた風景なのになんとなく新鮮に感じたんですよ。


 初詣も行ってみるものだなって思ったんですがその晩、アレだけの喧嘩をして家を飛び出して以来没交渉だった母親からスマホに電話が来たんですよ。


「アンタ、元気でやってる? なんで急にって……それは親が子を心配するのは当然でしょう」


 そんなことを言っていましたが、母はろくに連絡なんてしてきませんでしたし、今更白々しいなと思ったんですが適当に相槌を打っていたんです。


「ところで、何か変わったことない?」


「はぁ? 無いけど……」


「そう、ならいいわ」


 それだけで電話は切れたんですけどね……電話をしている間中、向こうから子供の声が聞こえていたんですよ。不気味としか言いようが無いんですよね。それで神社で家内安全のお守りをもらってきたなと思い出しました。


 それと一緒に何故このタイミングで母が電話をかけてきたのかと考えました。そこでふと自宅から霊がいなくなって、母親が変な連絡を入れてくる、勘ぐりすぎなんだと思いたいんですが……なんとなく紐付きますよね。私の家から追い出された幽霊がっていう……できれば実の娘にそんなことをしていたなんて考えたくはないんですがね……あんなんでも母は母なので、出来ることなら偶然であって欲しいと思っています。


 それが彼女の話だった。今のところ彼女の母に実害は出ていないそうだが、時折連絡が来るという。そして彼女は毎年神社に参拝してしっかり家内安全のお守りを買っているそうだ。

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