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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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そのせいじゃない?

 ホグチさんは今住んでいるアパートで毎晩金縛りに遭っているらしい。私に何か金縛りに効くものは無いのかと聞かれた。


「一応金縛りは霊的なものと言い切ることは出来ないので熟睡できる薬を処方してもらうといいかも知れませんね」


 そう答えたのだが、彼の顔色は芳しくない。どうやらそう言った人体の生理現象ではない確信があるようだ。


「いや、ストレスの元とかも無いですし、夜目が覚めて動けないのは確かなんですがね……」


 彼にも思うところがあるようだ。


 ああいや、そういやストレスの元もあったな。いや、別れた……向こうはその気じゃないみたいだが、彼女がいたんだよ。ソイツが重い女でさ、少し何かしようとする旅にしつこいんだよ。


 でさ、そうなってくるとイライラしてくるじゃん? 距離を置いたわけよ、そうしたら電話が時々非通知でかかってくるんだよな。迷惑なんだけど非通知で掛けてきて電話に出ないといつまでも鳴らすんだよ。近所迷惑だから仕方なく出てすぐに受話器を置くんだ。迷惑な女だよ。


 しかもソイツがメンタルをやっているときてる。どう考えても嫌だろ? そんな迷惑な女と進んで関わりたくないんだよ。それで今でも電話は来るんだが、話したことはないな。口を聞く前に切ってるよ。


 一応今住んでいるアパートの周辺で見たこともあるんだが、アイツ何もしないんだよなあ……いっそ何かやれば警察がパクってくれるんだろうけどな……


 俺が付き合いきれないっていったときはそりゃもう酷かったよ。号泣からのブチ切れって情緒どうなってんだよって感じになってさ、『絶対に別れない』っていうんだよ。俺も引っ越すにしても職場との距離があるし、家賃の都合もあるからな、今の部屋を移れないんだよな。


 嫌々住んではいるんだが、言ったとおり今は金縛りに遭っててなあ……引っ越したいんだよなあ。


 金縛りなんだけどな、軽く調べると寝ているときに脳だけが目覚めて体は寝たままだから怒る事って説明があるだろ? それにしちゃあおかしいんだよ。


 何がって金縛りの時になんか妙に暑いんだよ。体が火照ったような感覚になってな……それから体が動かないって言ったろ? 不思議なんだけどな、動けないって言ってもなんというか……縛り付けられているような感覚があるんだよ。脳だけ起きてるとかそんな状態じゃなくて簀巻きにされてるんじゃないかってくらい体に圧がかかるんだよな……


 その……暑いって言ったろ? それがなんだか体温高めの人に抱きつかれたような感覚なんだよ。まるで誰かが子泣きじじいみたいに抱きついているみたいでさ……不気味だろ?


 ああいや、あの女のせいじゃないかってのは分かるんだよ。でもそうだとしたら俺はアイツから逃げられないだろ? だから何とか霊的な理由をつけて安心したいんだ。アンタも怪談が好きなんだろ? 何か幽霊が出そうな原因とか思いつかないか?


 彼は必死にそう言ったのだが、私にはどうしようもなかった。ただ、その原因が彼女で有るだろう事は彼も大体分かっているようだったので、そっと有名な縁切り神社の地図を書いて渡した。


 それ以来、彼が上手に彼女と縁を切れたという連絡は入っていない。

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