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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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30/66

前日

 ユノさんは車が趣味で、そこそこお金を掛けているらしい。ただ、会社に乗っていくには少し問題があるので出勤は電車でしているそうだ。そんなユノさんが車に乗っているときに起きた奇妙な体験だ。


「あの時は夏の帰省時期でした」


 時期は夏の長期休暇、前日によく寝てから翌日朝に車を出した。実家では口うるさく趣味についていわれたものだが、帰省時だけならとやかく言われないだろう。そう思って新幹線や飛行機ではなくあえて高速道路を飛ばした。


 勢いよく走っていたのだけれど、眠気がやって来た。昨日あれだけ寝たのになとは思ったが、人間は寝溜めなんて出来ないという話も聞く、仕方なくカフェイン入りガムを噛みながらなんとかサービスエリアまで意識を持たせ、駐車場の隅の方に車を止めるとすぐに眠気が来た。鍵だけ掛けたのを確認して目を閉じるとすぐに意識が落ちた。それからスッキリと目が覚めたのだが、時間が問題だった。


 周囲が真っ暗になっている。いくら眠いからといって午前中から夜まで寝るなんて……と思ったが、寝たものは仕方ない、ここからまだ離れているが実家までの道を急ぐことにした。先は長いが、眠気は綺麗さっぱり無くなっていたので制限速度ギリギリを保ったまま、時には車を抜きながら実家までの道を走らせた。


 高速をようやく降りる頃にはもうすでに空の隅っこが白み始めていた。いよいよ一日経ったかと思いながら、そう言えば丸一日近くかかったのにお腹が空いてないな、そんなことを考えつつ高速を降りて走らせていると、すっかり日が昇ってきた。そうなってようやく実家に着いた。日付が変わったので心配されているかと思いつつ玄関に鍵を差し込んだ。


「ユノ! アンタ何しとってん!」


 ああ、やっぱり一日も間が空くと驚かれるよなと思いながらそれっぽいいいわけを考えていた。そんな時に掛けられた声は思いも寄らないものだった。


「帰ってくるならちゃんと言いんさい!」


 何を言っているのだろう? 帰ることはきちんと連絡をしていたはずだし……しどろもどろになっていると、母親の後ろから父親が出てきた。


「まあそう言ってやるな、この子も早く会いたかったんだろう。昔からそうだったじゃないか」


「それはそうだけど……まあ良いわ、アンタきちんと早くなるときは早いって言いなさいよ」


 何かが噛み合っていない。時間が朝早いからかと思いスマホを見ると、日付がお盆休みの初日になっていた。つまり昨日から車を走らせないと間に合わない時間だ。むしろ自分は遅れていたはずなので丸々一日ズレていることになる。しかし会社できちんと休みの前に確認をしたはずだ。スマホにはお盆休みに入るので連絡がつきにくい旨を取引先などに送っている。


「ねえ、今日ってお盆の初日よね?」


「何言ってんの? 当たり前でしょう。まったく、夜なべで運転なんてして……」


 どうやら時間が丸一日ずれているようだ。どこでズレたかといえばサービスエリアになるだろう。あそこで自分は朝から夜まで寝てしまったと思ったが、実際は朝から前日夜までさかのぼったことになる。そんなことが可能なのだろうか?


 訳も分からず一通りのお盆を済ませて帰ったが、確かに出かけたのはお盆の初日だった。


「ねえ、サービスエリアってタイムリープ機能もついてるんでしょうか?」


 私は理解できない話だったので『それは心霊というより科学の範囲のような気がしますね』と答えることしか出来なかった。

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