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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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退職後の趣味

 タマさんは普通に会社を定年まで勤め上げたのだが、趣味らしい趣味を持っていなかったので何か無いかと考え、定年退職後は登山を趣味にしようと考えた。


「なんとも怖いんですねえ……山が危ないというのはほんまなんです」


 そう語るタマさんは、悪意があるような体験をしたそうだ。


 定年退職前に登山の道具を揃え、ネットで近場の初心者でも登れる山を探した。それから下調べをして計画を立てた。


 退職してから割とすぐに山に登る計画を立てる。夫は無趣味な人で定年退職後、抜け殻のようになってしまったので、そうなるのは嫌だなと思い、自分は仕事以外にも何か出来ることをしようと思っていた。


 天気の良い日に低い山に登る程度なら大丈夫だろうと思い、天気予報をスマホでチェックしていた。


 案外早く登山に適切な日が来たので、十分な装備で出かけ、登山を開始した。夫にも来ないの? とは訊いたが、『なんで山なんて登るんだ』とまるで興味の無い反応をされ、何か趣味を持てば良いのにと思いながら山を登った。道案内の看板もしっかり設置してあり、まるで舗装されているように歩きやすい道を上っていく。急な坂では無いのだが、やはり定年を迎える年ということで体力が徐々に奪われていく。しかしそれも計算して、山頂前でも引き返す準備はしていた。


 いい感じに登れるのでは無いかとどこかで思いつつ、時折すれ違う人に挨拶をしながら登っていった。


 しかし、途中で問題があった。二つに分かれた道がある。どちらもしっかり人が通った跡があって、どちらに進むべきだろうかと考える。一応看板は出ており、一方を登山道と示していたのだが、その看板がなんだかおかしい。まるで昔の看板のように、塗装が剥げて赤さびが浮かんでいて、一応読めるくらいの古さだった。


 もしかして新しい登山道があるかもしれない、そう思いスマホを取り出し、事前にダウンロードしていたこの山のマップを確認した。方向を確かめると、その古い看板の指している方には滝があることになっていた。


 誰がこんな危ない道を案内しようとしたのか、悪質なイタズラだろうかと思いながら看板の指していない方の道を進んで山頂に出た。そこでいったん休憩をしてから下山を開始する。登りだろうが下りだろうが転ぶと危ないのは一緒なので慎重に歩いていった。時折登ってくるときにお世話になった案内板などを見かけながら下っていってある地点に着いた。


 そこは山頂への道を間違って示していた看板のあった場所だ。そこには真新しい看板が、さっき自分の下りてきた山頂の方に矢印を出しており、もう一方の方の道は獣道のようになっていて、間違えて入らないようにロープまで張ってあった。


 始めは場所を勘違いしてるのかと思ったが、試しにスマホでマップを見ると、確かに登りで迷っていた場所だった。イタズラにしては手が込みすぎているし、わざわざ古い看板を用意する意味は無い、イタズラなら適当な看板をでっち上げた方が早いので、上りに見たようなものを用意する理由は無い。


 おかしいなとは思いつつもそのままの下っていった。そうして彼女の初登山は成功したのだが、なんとなく山が怖いものに思えてしまい、アレが人の仕業だったとしても、心霊的な現象だったとしても、怖いことに代わりはないので登山を趣味にするのは辞めてしまったそうだ。


 そんなタマさんは、現在登山の助けにと購入したスマートフォンでSNSを楽しむのにハマり、すっかりインドアな趣味に鞍替えしてしまったそうだ。ただ、彼女によるとその生活も無趣味よりはいくらか充実していると言う。

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