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怪奇譚集「擬」  作者: にとろ


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ご利益のある神社

 井出さんは話したい階段があると言う旨をメールに書いて私に送ってきた。メールで直接書いていただいてもいいのだが、彼女はメールで書くには少々問題があるからと送ってきたので話を聞く事にした。


 ある地方にて、ファミレスを彼女は指定したので私がそこに向かうと、言ってはなんだがくたびれた格好をした女性が一人座って待っていた。


「こんにちは、お会い出来て何よりです。では話しましょうか」


 そう言って彼女は私がドリンクバーを注文すると話を始めた。


「私が小学生の頃なんですよ」


 そこには近くに『縁結びの神社』と言うものがあった。夜にこっそりとそこに忍び込んだのだと言う。当時彼女には好きだったクラスメイトがおり、誰にも言えなかったが淡い恋心を持っていた。


 そして人に言えないまま密かにその男子と仲良くなれるようにと、一人でこっそりその神社に参拝して神様に仲を取り持ってもらおうとした。


 夜の暗闇の中神社には誰もおらず、これならこっそりとお祈り出来るなと考え、誰かに見つかったら問題になるのでそれを避けるようにこっそりと本殿の方に向かった。


 誰にも見られないように気をつけながら懐から財布を取り出して千円札を一枚出す。小学生にとっては重い金額だったが、そのくらいの恋慕の感情は持っていたので賽銭箱にそれを入れて、鐘を鳴らさないように手を合わせるだけでお祈りを済ませた。


 その時、一陣の風が吹いて『ヨシ』と聞こえる音が耳に飛び込んだ。なんとなくこれで縁が結ばれるような気がしてその日は満足して帰宅した。音を立てないように玄関を開け、部屋にこっそり戻るとそのまま寝てしまった。


 翌日、彼と何かあるのではないかと期待していたのだが、得に何も無く彼は登校してきて普通に過ごしていた。千円も入れたのに、とは思ったが、神社に仲を取り持ってもらおうなどというのが間違いだったのだと思いながらその日は帰った。


 その次の日、それは起こった。彼が交通事故に遭ったのだと学校で伝えられた。先生が詳しくは言わなかったものの、かなりの怪我をしたのだろう事は分かった。


 それから当時はそれほど厳しくなかった個人情報の保護故に、しばらくして彼に会いに行くときに『クラスメイトです』と言うとあっさり会う事ができた。彼は両足が満足に動かせないような状態で、突然やって来た彼女に怒鳴るでも無く空虚な目を向けるだけだった。


 それから少しして彼は退院して車椅子での生活となった。彼自身も体力を付けて動けるようになっていたが、一緒に居るときは彼の車椅子を押す役目を彼女はしていた。そのまま自然に恋人のような関係になり、成り行きに任せて本物の恋人になった。


 それが一連の流れだと言うが、彼女は目尻に涙を浮かべて言う。


「私は何か悪い事をしたんでしょうか? お祈りしたのがそんなに悪い事なんでしょうか? 私は彼と仲良くなりたいと願っただけです……こんな形でか叶うなんて思ってなかったんですよ。ねえ、神様が勝手にやった事ですよね?」


 そう悲しそうに言う彼女に私は何も言えず、黙ったままコーヒーをすすった。それがいつもより苦い気がしたのは砂糖を入れ忘れたせいだけではないだろう。

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