青年自衛官から送られた歌
完全な自己満足で作りました!
もしかしたら気持ち悪いと思う方もいらっしゃるかもしれないですね…
朝田三佐の歌声は、澄み切った空気の中に優しく響いた。
満月が夜空を照らし、神社の境内を白く染めている。まるでふたりのために用意された舞台のようだった。
『小さな木でも〜青空に伸びゆく自由を持っている〜
嵐を支え〜その木を守れ〜君のその手で
僕のこの手で〜伸びゆく日本の平和を自由を守れ〜』
その歌声には、静かな決意と覚悟、そして温かな思いが込められていた。
霊夢は真剣な顔つきで耳を傾けていたが、どこか心の奥で何かを――期待していた。
歌い終えた朝田は、少し照れたような笑みを浮かべながら口を開いた。
「……この歌は、自衛官として日本の自由を守るということ。
でも、それだけじゃないんです。時に、守ることは一人では難しい。
そんなときに――支えてくれる“手”があるんです。仲間かもしれない。家族かもしれない。恋人かもしれない。
その答えは人それぞれですが、大切なものがあるからこそ……人は支え合える」
その言葉を聞いた霊夢は、そっと目を伏せた。
「……良いわね。その歌。『君のその手で』……か」
微笑みながら呟く霊夢。しかしその微笑みは、次第に揺らぎ始める。
朝田の言葉の中にあった「恋人」という言葉が、どこか心に引っかかったのだ。
最初は何気なく聞き流そうとした。けれど、どうしてもその一言が胸に残って離れない。
(……恋人、か)
霊夢はゆっくりと朝田を見つめる。
焚き火の光に照らされた彼の横顔は、静かで、どこか優しかった。
そして、自分の胸の奥で、何かが小さく震えているのを感じた。
自分がずっと探していた“答え”――それが、すぐ近くにあるのかもしれないという予感。
「……ねえ、朝田さん」
「はい?」
「その“手”って……私が、もし誰かの手になれるなら……嬉しい、って思ってもいいのかしら」
霊夢の声は静かで、でも確かに揺れていた。
それは巫女としてではなく、恋する少女としての、心からの問いかけだった。
朝田はすぐには答えなかった。けれど、その表情ははっきりと――優しく微笑んでいた。
「……ええ。そう思ってくれるなら、それだけで、私は……救われます」
二人の間に、静かに夜風が通り過ぎていった。
満月が、ただ静かにその光を降り注いでいた。
焚き火の音が、静かな夜に優しく弾ける。
霊夢は、少しだけ伏せていた目をゆっくりと上げる。
満天の星空と明るい満月が、まるで二人の時間を照らす舞台のようだった。
(君のその手で……ね。もしかして――)
朝田三佐が歌った、自衛官としての誇りと使命を綴ったその歌。
けれど霊夢には、どこかそれだけではない想いが込められていたように思えた。
「君のその手で、僕のこの手で――」
彼のまっすぐな眼差しが、なぜか胸の奥に残って離れない。
(……君の“その手”って、私のこと?)
心の奥に小さな火が灯る。
それはやがて、彼女自身が綴った歌の一節を思い出させる。
「揺らぐこの独占力は〜秤に掛けれぬ〜我儘な愛〜」
ずっとその歌詞に込めた意味が曖昧だった。
誰のことなのか、何を伝えたかったのか。
でも今、ふと気づいた――
この想いが向かっていた先は、きっと。
霊夢の顔が、そっと赤らむ。
魔理沙、早苗、霖之助、紫、華扇――
どれも大切な仲間たち。
けれど、その誰でもない“誰か”が、この歌詞に宿っていた。
そしてそれが今、目の前にいる青年自衛官なのだと――
(……私、気づいてたのかな。ずっと前から)
想いの正体に気づいた瞬間、霊夢の表情は凛とした巫女ではなく、一人の少女の顔になる。
火の揺らぎがその頬をそっと照らし、月明かりがその瞳を輝かせる。
胸の中の“我儘な愛”はまだ形にはならない。
でも、確かにここにある。
それを今は、ただ胸の奥で大切に包み込んでいた。
傍らの朝田は、何も言わず、ただ静かに星空を見上げていた。
その姿に霊夢はふっと微笑む。
まるで、自分の気持ちをすべて見透かしているようで、けれど何も言わずにいてくれるその優しさに――
心が、そっと寄り添っていた。