第7章:アリスとの接触
ドイツ・ラムシュタイン空軍基地北西―現地時間 05:43
異常空間に覆われた森林地帯で、展開された
NATO多国籍調査隊「Global Force」は、米軍が極秘裏に投入した秘匿部隊「Ghost Army」と合流し、深部への潜入を開始していた。
その指揮を執るのは、マクファーソン准将。
米陸軍特殊作戦軍(SOCOM)出身。コロンビア・
イエメン・アフガニスタン、イラク、シリアにおける数々の対テロ作戦を指揮し、「静かなる猛将」と呼ばれた男である
彼のすぐ側には、若くして情報戦と現地対応の両面で優秀な戦績を誇るアレン少佐、そして都市戦・極地戦闘に精通する指揮官、ラミレス大尉の姿があった。
「環境異常、重力0.94G、電磁パルス値変動大。これは地球上の空間じゃない……」
アレン少佐が端末を確認しながらそうつぶやく。
ラミレス大尉は身構え、サーモ・グラフィーを通じて前方に“人影”のようなものを捉える。
その時だった。
霧が晴れ、森の中に、まるで人形劇の舞台のような家屋が現れた。扉が音もなく開き、中から現れたのは――
金髪、青い瞳。西洋風のドレスに身を包み、両手には糸で操られた人形を従えた少女だった。
「ようこそ、幻想郷へ。あなたたちは初めてよね?」
隊員達が即座にM4・SCARの銃口を向けられたが、
マクファーソン准将はそれを制した。
彼の目は少女――アリス・マーガトロイドと名乗った存在の眼差しを見逃さなかった。
「ふむ…間違いない、報告にあった少女だ…敵意はない……むしろ、導こうとしている。」
森の周囲には先に到着したと思われるドイツ軍の簡易的な
拠点が設けられていた
第17歩兵連隊との合同任務開始
アメリカ統合作戦本部は急遽、アリスとの交渉・協力関係構築を最優先任務に変更。
アリスは「幻想郷」と呼ばれる異世界の住人であり、ラムシュタインに起きた空間置換は、“向こう側でも起きた歪み”によるものであることを明かす。
マクファーソン准将はアリスの協力のもと、合同部隊を二手に分けて進軍させた。
第1分隊(Global Force主導):異常空間の物理的・科学的調査、およびルート確保。アレン少佐指揮。
第2分隊(Ghost Army主導):人型生命体の接触・交渉と、必要時における対処。ラミレス大尉指揮。
アリスは、その両方の案内役として、彼らを幻想郷の“辺縁”へと導いていく。