第47章:幻想郷の戦闘
異変の兆しは、音もなく幻想郷全体を包み込もうとしていた。
「……また、来たわ」
博麗神社。祈りを終えたばかりの博麗霊夢は、突如として襲った空間の歪みに驚きつつも、目を細めた。肌を刺すような空気、狂ったように乱れる磁気センサー、そして――博麗の勘が告げる。これは、懸念すべき「敵」の到来だ。
「また来たわ、敵……私たちの安全を脅かす連中が」
表情には緊張があった。
「わかった、準備するぜ、霊夢」
魔理沙もすぐに察し、ミニ八卦炉を握りしめる。
朝田三佐は神社の庭に出て、部隊の動きを指示する。
「霊夢さん、我々がいます。安心してください」
その言葉に、霊夢の心は少しだけ和らいだ。
一方、魔法の森でも、空気の異常にアリスが眉をひそめていた。彼女の隣には、フランス陸軍のマルク大尉がいた。
大尉の無線機が雑音を交えて緊急信号を告げる。
『非常事態発生。全隊員は指定地点へ急行せよ』
アリスの視線が不安げに彼を捉える。
「……大丈夫なの?」
「ご心配なく、お嬢さん。我々が存在する限り、この森も貴女も、守ってみせます」
マルク大尉の静かな決意に、アリスの胸に小さな灯がともる。
その頃――
妖怪の山付近で、ハンガリー陸軍の哨戒部隊が奇妙な影を目撃した。身分を隠すように、階級章も国旗もない5人の兵士たち。だが装備は、北朝鮮軍が用いるものである。
『こちら"596第2分隊"、ポイント"ズールー"に到着』
交信内容はやはり朝鮮語。それは、先程、幻想郷に現れた異常と同じ性質を持つものだった。部隊の装備には西側兵器の相場に近い要素もあり、偽装は徹底されていた。その
第2分隊が来たのだ
哨戒中のハンガリー軍、チェルナク大尉率いる部隊は即座にUAZ-469で展開。
そして、山の尾根を越えた瞬間――銃声が響いた。
AK-74の乾いた発砲音。幻想郷で、初めて火薬の匂いが風に乗って流れる。
『敵襲!!』
草が生い茂る中でAK-74の銃声が響き
Uaz-469に搭乗していたハンガリー軍が即座に展開し応戦する
『うぐっ!くそ!撃たれた!!』
NATO軍が幻想郷で負傷者を出した――それは記録と記憶に残る“最初の交戦”だった。
仮設基地で報を受けたマクファーレン中将は、眉をしかめた。
「……ついに来たか」
哨戒部隊を増派し、全エリアに非常警戒態勢を通達する。
追跡を交わしながら、北朝鮮の特殊部隊
【596】部隊は、山の頂上付近から湖を見渡し、双眼鏡越しに「きりさめ」を捉えていた。
「……やはり、奴らは既に軍事拠点を建設しているのか」
隊長が呟く。彼らの目的はNATOの影響力の調査。その瞳は鋭く、冷たかった。
同じ頃、護衛艦「きりさめ」艦内でも、異常発生の一報を受け、鬼頭艦長と伊吹副長を中心に対応策が検討されていた。
「ここは幻想郷、されど軍艦".が存在している事実を突かれるのは避けられませんね」
「情報の管理と周囲の警戒強化を徹底してほしい。
それから総監部に連絡!伊吹副長、次の航行予定の見直しを」
そして、博麗神社ではマクファーソン准将が霊夢たちに向き直る。
「我々がここで守りきれなければ、幻想郷も、外の世界も、紛争の道を辿ることになる、このまま何もしないわけにはいかない」
霊夢はその言葉に静かにうなずき、そして呟いた。
「……異変とは違う。あいつら、本気で殺しに来てる」
魔理沙と華扇が並んで立ち、朝田三佐が前へ出た。
「霊夢さん、私たちはここにいる。……守ると決めたのです。自衛隊が存在する理由、今こそお見せします」
幻想郷の空が、薄く暗く染まり始めていた。