深める懸念・黒い思惑
:「兆しの風、迫る影」
【プロローグ:重なる懸念】
幻想郷での大演習「シールド・ライン」が終わり、空は澄み渡り、静けさが戻ったかのように見えた。だが、外の世界では、演習の余波が静かに、しかし確実に波紋を広げていた。
北朝鮮――その名が再び、各国の情報部の報告書に現れる。
ロシアの支援のもと、ウクライナ戦線への協力を口実に得た“技術的支援”の中には、旧式ながらも衛星転送・追跡システムである**「ザリヤ」**の機材が含まれていた。北朝鮮はこれを用い、自国の特殊工作部隊を幻想郷へ密かに送り込む計画を進めていた。
北朝鮮高官:「我々の兵士が幻想郷の地形・住民情報を掌握すれば、次の“対抗策”の礎になる」
【ロシアの作戦計画:レッド・ライン】
一方、ロシア連邦保安庁(FSB)と参謀本部内で密かに進行する作戦コード――“レッド・ライン”。
ロシア軍高官:「幻想郷に拠点を築かれる前に、“紛争の種”を撒く必要がある」
ロシアは、イランの革命防衛隊の一部過激派と、フーシ派民兵、そして欧州に潜伏する親露テロ組織を活用し、ザリヤの特殊転送装置を通じて非国家勢力を幻想郷へ送り込もうとしていた。
目的は“安定化阻止”と、“幻想郷を多国間紛争に巻き込む”こと。
【幻想郷:霊夢の揺れる心】
博麗神社にて、霊夢は一人、神前に座していた。澄んだ風、遠くで鳥の声、見慣れた木々――それらがなぜか、心に染みない。
霊夢:「……何かが、違うのよ。外の気配が、だんだんと濃くなってきてる。風の中に……戦いの匂いが混ざってる気がするの」
魔理沙はちゃぶ台越しに、いつものように湯飲みを持ち上げながら口を開く。
魔理沙:「なーに、そんな難しく考えることないって。外の連中と付き合うってことは、そーゆーことさ」
だがその言葉の後、彼女もまた沈黙する。霊夢の瞳に、いつもの強さと違う、誰かを守りたいと願う巫女の祈りが宿っていることに気づいたからだ。
霖之助と華扇も、静かに座して耳を傾けていた。
華扇:「今のあなたの感じてることは、大事な兆候かもしれない。博麗の巫女として、あるいは一人の人間として……どちらも、無視してはいけないわ」
霖之助:「力だけでは、きっと幻想郷は守れない。だが、力を拒むこともできない。……今必要なのは、真剣な対話と、“約束”だ」
その言葉に応えるように、鳥居の向こうから制服姿の男が歩いてきた。
「……約束を果たしに来ました」
朝田三佐――かつて霊夢に「なぜ戦うのか」を語った自衛官が、再び神社の石段に立っていた。
【紫の動き:対策協議】
八雲紫もまた、水面下で動き出していた。
彼女は日本政府との通信会談を持ち、**「幻想郷の安定と安全保障に関する協議体の創設」**を提案する。
紫:「幻想郷が外の世界と繋がることに賛否はあるけれど、いずれにせよ、混乱が訪れることは避けられません。ならば“望まれる関与”と“望まぬ侵入”を、こちらで選ばせていただきたい」
政府側は、幻想郷側の代表がこのように冷静に外交姿勢を取ることに驚きつつも、紫の懸念に真摯に向き合う姿勢を見せた。
【エンディング:新たな嵐の前】
夕刻、霊夢は境内で風に吹かれながら、ふと呟いた。
霊夢:「私、信じたいのよ……外の人たちが、本当に“守るために来た”って。でも、それが本当かどうか……もうすぐ分かる気がするの」
遠く、風の中に不協和音が混じっていた。それは、希望と危機が交錯する、新たな局面の訪れを告げていた――。