表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/82

:演習後のブリーフィング・霊夢と青年自衛官の交流

「戦いの後に残るもの」——戦術会議と幻想郷対応案

演習終了から数日後、仮説戦術会議が、旧人間の里防衛区画に設けられた合同作戦本部で開かれた。各国・各部隊の高官たちが顔を揃える。


主な議題は、「幻想郷という環境下での連携と戦術の最適化」および「今後の備えの方針」だった。


◆アメリカ陸軍レンジャー中隊長:スコット・H・メンデス


「森林地帯での接敵率が高く、視界の制限が極端だった。現地案内人や地理解析班の配置が必要になる。加えて、魔力探知装備とのリンクも不可欠」


◆NATO空挺部隊副隊長:ドイツ連邦軍降下猟兵

ヨーゼフ・グランスト中佐


「高度からの降下は風の流れが読めない。加えて“空の結界”が物理法則を狂わせます。特殊気象班を設けるか、幻想郷特有の『気流解析ユニット』が必要です」


フランス空挺・イタリア空挺からも同様の意見が出た


◆山森一佐(陸上自衛隊):


「特殊地形と非対称的存在への対応は、“思考型の柔軟戦術”が求められる。『型にはめる戦い』ではなく、『相手に応じて変化する力』。これは災害派遣の経験からも通じることかと」


彼の言葉に、一瞬場が静まり、数名の指揮官が深く頷いた。


◆マクファーソン中将(米・戦略統合作戦部):


「幻想郷は特殊空間であるが、軍事的には“次世代戦域”と捉えるべきだろう。次回以降の演習案、戦術対応マニュアル草案、連携強化プランをまとめ、八雲紫ら幻想郷側管理者に提示する予定だ」


「加えて、現場での判断力に優れたマクファーソン准将や山森一佐らの意見も反映する。幻想郷との“信頼の構築”には、軍だけではなく人の理解が鍵となるだろう」


【29】「ある神社の約束」——霊夢と朝田三佐

その夜、霊夢は演習場近くの仮設詰所を訪れた。そこには朝田三佐が、報告書の束を前に静かに佇んでいた。


「……あ、霊夢さん」


「朝田三佐、ようやく会えたわ」


霊夢は少し微笑んだ。


「演習中、無線越しに何度もあなたの声が聞こえた。はっきりしてて、冷静で、ちょっと安心したの。正直な話……あの混沌の中じゃ、どれが味方かすら分からなくなりそうだったから」


「……そう言ってもらえると、救われます。私たちも、幻想郷での任務は初めてで。ですが、我々が守りたかったのは“無事に帰すこと”ですから」


霊夢はしばらく黙ってから、ぽつりと呟く。


「たまには、博麗神社に寄って。そうね、お札でも渡してあげる。自衛官には必要でしょ? お守りと悪霊よけ」


「えっ……それは、縁起がいいんですかね?」


「もちろんよ。ついでに、お茶くらい出すわよ。ま、お神酒はないけど」


二人の間に、ほんの少しだけ柔らかな空気が流れる。戦術と武力、そして信仰と信頼。交わることのなかった二つの世界が、少しずつ交差し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ