【鋼鉄の番犬と少女・各国の評価と洞察】
フランとポーランド戦車兵
演習終了後、戦車展示区画で再びフランはPT-91に近づいていた。だが今回は、彼女は飛びついたりせず、ただ大きな砲塔を見上げていた。
「……やっぱり、かっこいいね!。あれで守ってるんだよね、人を」
そこに現れたのは、ポーランド陸軍の戦車兵。迷彩服の胸元に「Nowak」のネームパッチ。
「君は、さっきこの子に登ってた子だな?」
「えへへ……ごめん。ちょっと興奮しすぎたかな」
「いや、驚いただけだ。君が傷つかなかったなら、それでいい。だけど……この戦車はおもちゃじゃない。人を守るために、必要なときだけ牙を剥く、覚えておいて欲しい」
ノヴァクは穏やかに言った。その言葉に、フランの瞳が少し陰る。
「……じゃあ、私はまだ遊ぶには早いか。けど、なんかね……守るために“戦う”って、すごくカッコよく見えたの」
「君の目がそう見えたのなら、俺たちの存在には意味がある。ありがとう。……そうだな、少し中を案内してやろう。だが触っちゃだめだぞ?」
「うんっ!」
二人の間に笑みが交わされる。鋼鉄の怪物と戦車長と紅の魔の少女。奇妙な組み合わせが、確かに心を通わせていた。
【26】「指揮官たちの評価」
演習終了後、各国の指揮官会談が開催された。自衛隊、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、ドイツ、韓国、台湾――そして、NATO統合作戦指揮本部からも評価官が参加する。
マクファーソン准将:
「幻想郷という未知の領域において、我々がどれだけ冷静に連携できるかが試された。結果は……及第点だが、油断は禁物だ」
朝田三佐(陸上自衛隊):
「住民との接触を前提とした訓練であり、住民保護と交戦規則の訓練が大きな成果。今後、情報戦の強化が必要と判断します」
英国陸軍中佐:
「予想以上の環境適応が見られた。特に“非伝統的環境下”での指揮統制は今後の訓練指針となるだろう」
台湾軍代表:
「我々にとって、この演習は明日への備えそのもの。実戦への距離感を意識できたことは大きい」
韓国軍大佐:パク・チェミョン
「我々は明確な脅威を抱えている。この演習は“日常にある緊張”に対する実践だ」
【27】「世界の反応」——それぞれの思惑
◆北朝鮮:怒りと警戒
平壌。労働党中央軍事委員会の報告会で、演習の映像が映し出される。
「これは明確な挑発行為であり、我が国への軍事的威嚇である!」
「韓国・日本・台湾・NATOが連携?アメリカと
西側の傀儡どもが幻想郷という“新戦線”を開こうとしている!」
最高指導者"金正恩"は沈黙したまま、じっとモニターを見つめていた。
そして一言。
「将軍!直ちに核戦力とサイバー部隊の再点検を行え」
◆ロシア:沈黙と影
演習の進行中、ロシア軍偵察衛星が数度、軌道を修正していた。
ヴェルニエフ上級大将は黒海艦隊司令部にて、ゆっくりと葉巻に火をつける。
「……米国の動きも、自衛隊も。よく動いたな。私の評価はAだ…今回、ウクライナは参加しなかったのか…
うーむ、次は我々の番か?」
参謀の一人が尋ねる。「『オムスク計画』は――」
「まだだ。時を待て。幻想郷は“焦って飛び込む場所”ではない。必ず“隙”が生まれる」
◆謎の部隊『ジョンドゥー』:消失
演習中に発見された**所属不明部隊『ジョンドゥー』**は、演習終盤と同時に姿を消した。痕跡も、装備の残留もない。
「"評価"を終了し大統領へ報告する」
という通信ログだけが残されていた。
各国諜報機関は追跡を試みたが、手がかりは途絶えた。まるで最初から存在していなかったかのように――
◆中国:警戒と観測
北京。中国共産党中央軍事委員会。
「幻想郷にこれだけの勢力が集まるのは、我が国の周辺安全保障環境に重大な影響を与える」
「自衛隊、米海兵隊、台湾海軍、韓国陸軍、NATO軍
――これは“我が国への包囲網の演習”だ。我々はただの観客ではいられない」
情報部報告:「ジョンドゥーと呼ばれる部隊、我が方でも正体不明。おそらく■■■所属の兵士」
「対応を検討しろ。幻想郷が“戦略資源”である以上、我が国の“沈黙”は許されない」
◆ASEAN・インド:団結と準備
ベトナム、フィリピン、インドネシア、シンガポール、そしてインド。
東南アジア諸国および**インド(QUAD参加国)**は演習を冷静に見つめていた。
ベトナム防衛省声明:
「幻想郷での演習は極めて高い戦術的意義を持ち、地域安全保障の新たな側面を示した。ベトナムは、どの勢力にも屈しない備えを持つ」
インド国防省:
「インドは、幻想郷が新たな“戦略的焦点”であることを認識している。QUADを含む多国間連携の深化が必要だ」
フィリピン・シンガポール:
「中国の拡張主義に対抗するためにも、我々は自由で開かれた秩序を支える」