第44章:精鋭達の動きと黒い監察部隊
【20】「制圧」――精鋭の動きと静かなる監視者
轟音とともに、空から影が降りてくる。
ポーランド軍の精鋭特殊部隊――GROM(グループ・フォー・オペレーショナル・マヌエヴル)。その隊員たちは、上空を旋回する旧ソ連製の輸送ヘリMi-8から一斉にロープ降下を開始した。
大型の演習監視モニターにその様子が映し出される。天狗たちの持ち込んだ記録装置や、河城にとりの中継装置を通して、幻想郷の主要な来訪者たちがこの演習を遠くから見守っていた。
GROMの隊員たちは、迷彩を施した暗色の装備をまとい、無駄のない動きで**目標建物**を囲む。数秒の無言――そして一気に突入。
「クリア!」
「右側、制圧完了!」
爆薬による破壊もなく、静かに、迅速に、的確に。数十秒で一棟を制圧する姿に、思わず魔理沙が呟いた。
「……こいつら、ただものじゃねえな……」
その直後、さらなる空からの来襲――。
アメリカ海兵隊の部隊が、CH-53KおよびMV-22オスプレイから、建物すれすれの高度で降下。
ほぼ滑るように地面に到達した隊員たちは即座に展開。数秒遅れて、UH-72ラコタ、AH-6リトルバード、そしてフランス製のガゼル・スカウトヘリが到着。上空からの監視・火力支援の体制を整える。
さらに――
「K-9チーム、グリーンベレー展開!」
低空を飛ぶMH-6から、軍用犬を連れた特殊部隊員と、アメリカ陸軍特殊部隊・グリーンベレーが次々と滑空し、地表へと着地。その洗練された動きに、現場は完全に封鎖されていた。
その様子に、幻想郷の軍事知識に疎い者たちでさえ、圧倒された。
「まるで音もなく、空気のように動いている……」
と、にとりが呟き、
「我々の天狗部隊でも、あの同時連携は難しい……」
と、文が珍しく息を呑む。
それから十数分後――
演習状況表示板に、**“目標アルファ制圧・負傷者ゼロ”**の文字が表示された。
直後、地上から装甲車両が到着。ドイツ製「ボクサー」装甲戦闘車両と、スイス開発「ピラーニャ」シリーズが現場に姿を現すが、その頃には既に建物の安全確認まで完了していた。さらにはフランス軍がVBCI-2・VAB・VBLが
到着する
「各ユニット、見事な制圧だった。現在、次の目標に向けて再展開準備中」と無線が響く。
その頃、自衛隊側でも西部方面普通科連隊(西普連)を中心とした精鋭が投入され、朝田三佐の隊とは別に目標アルファの隣接建物を制圧。見事な連携を見せ、時間通りに制圧を完了していた。
「こちらアルファツー、目標制圧完了。負傷者なし、現場クリア。次の展開地点へ移動開始します」
その動きもまた、幻想郷の者たちの目に強く焼きついた。
だが、その時――。
遠くの木陰に、双眼鏡を構える数人の兵士の影があった。
彼らは演習に参加している部隊ではない。迷彩も異なり、所属不明の状態で、演習場の端から全体の動きを見張っている。
「……“奴ら”か」
その姿を、ある監視員が報告書に記録する。身元不明、旗も徽章も持たない兵士たち――。
この演習の様子は、すでに外部の目にも監視され始めていた。