第43章:空と陸からの連携・実戦への備え
テラエル・M270・RM-70・HIMARSが多連装ロケットを発射し弾幕を作りながら標的群に命中させていく
大地を震わせる砲声と共に、歩兵部隊が地を這うように前進していた。その一つの小隊に、朝田三佐の姿があった。
無線機から緊張感のある声が走る。
「こちらヒトハチ(18)、現在、ポイント**ナイン(9)**向け前進中!」
野戦図上では、演習用に設定された標的区域。だがそこに“敵役”として投入された実戦さながらの自走模型と電子標的が点在する。
朝田三佐は双眼鏡を手に、前方に異変を察知。すぐに無線を切り替える。
「前方1350!北方向に敵のBMP-2らしき車両を確認!航空支援を要請する!」
その報告が中継され、航空戦力指揮所へと迅速に伝達された。わずか十数秒の間――。
「こちらコールサイン“サンダー1”。支援に向かう」
空から低い咆哮が響いた。
遥か上空より、A-10C サンダーボルトII 攻撃機が2機、音速以下で地を這うように降下。機体の下部にはGAU-8アヴェンジャーの砲口が光る。
「サンダー1、標的ロックオン。攻撃開始」
次の瞬間、A-10の機関砲が唸りを上げ、BMPを模した標的が黒煙と火花を上げて吹き飛んだ。演習であっても、その迫力は戦場さながら。
「ヒトハチよりサンダー1。命中確認、感謝する。前進再開する!」
朝田三佐が無線で報告を上げると、小隊は見事な連携で次の遮蔽へ移動。背後からは支援部隊が追従し、戦術的優位を維持しながら展開していく。
それを遠くから見つめていたのは、博麗霊夢たち。そして魔理沙が目を見開き、驚き混じりに呟いた。
「……彼等は、本気だぜ」
すぐ隣で、カメラ片手に記録を取っていた河城にとりが同意する。
「あんな機動と支援、あたしらじゃ真似できないね……それに、あの無線の速さ。ミスの余地がない」
さらに、天狗の哨戒隊たちが双眼鏡で空を追いながら感嘆の声を漏らす。
「我々の哨戒とは別次元の動きだな……これは“精密”というやつか」
そして空――。
上空に現れた小型ドローンの群れ。これは演習における“敵ドローンによる攻撃”を想定した項目だった。
その瞬間、地上では対ドローン防衛システムが即座に起動。
まず火を噴いたのは――
ゲパルト2自走高射砲、シルカZSU-23-4、マークスマン自走砲、そして87式自走高射機関砲。
それぞれの砲身が自動追尾し、高速で飛来する模擬ドローンを正確に射抜いていく。直撃、直撃、連続命中。
さらに、ストライカーDE・SHORAD(近距離防空システム)が起動。搭載された高出力レーザー兵器が光の筋となって空を切り裂き、標的を蒸発させていく。
「おお!レーザーじゃないか、私のように派手じゃないが……すげぇ!これが……未来の戦いか……!」
思わず魔理沙が声を漏らす。
「けど、未来の力だけじゃない。あれは……連携の力だ。命令が正確で、動きが一致してて、指揮官の判断も速い」
にとりや天狗たちは真剣な面持ちで頷く。誰もがこの演習を「ただの訓練」ではなく、「意志と覚悟を持った行為」として認識し始めていた。
その中心で、朝田三佐をはじめとする兵たちは、黙々と任務を遂行していく。
演習とはいえ、彼らにとっては常に実戦を想定した責任と覚悟がある。
そしてその姿に、幻想郷の者たちは次第に――尊敬と理解を抱き始めていた。