第42章:始まる演習・有事への備え
【18】「状況開始」――動き出すシールド・ライン
幻想郷北部、特設演習区域――。
乾いた風が草原を撫で、視界の果てまで軍用車両と装甲戦力が広がっていた。遠くには移動式レーダー、前線指揮所、仮設司令部のアンテナが林立し、地平線の向こうには「きりさめ」が湖上に浮かび、静かに主砲の旋回を行っていた。
自衛隊、在日米軍、そしてNATO各国の部隊が続々と配置に着く。ドイツ、イギリス、フランス、カナダ、ポーランド、イタリア……。国旗のついたワッペンが迷彩服に光る。
参加総人数、およそ7千2百名。
その中には、合同幕僚監部の指揮官たちをはじめ、東部方面隊総監、在日米軍司令官、各国の将官たちが集まっていた。
演習開始直前、野外司令部前に集められた各部隊の代表たちを前に、東部方面隊総監が一歩前に出る。
「諸君――本日より、**演習“シールド・ライン”**を開始する!」
風を切るような厳しい声が響き渡る。
「今までの訓練と経験、その全てをこの地で発揮する時がきた!何のために、我々は戦い、ここにいるのか――その答えを、各自の行動で示してもらいたい!」
静まり返る空気の中、在日米軍司令官が続けて声を張る。
「だが最も大切なのは、生きて帰ることだ!全員が無事にこの演習を終えるよう、互いに連携し、支え合い、力を尽くせ!」
「そしてこの場を与えてくれた幻想郷の皆様、協力してくださった関係者に、心より感謝申し上げます」
その視線の先には、紅白の巫女服を着た博麗霊夢、魔理沙、早苗、華扇、そして地霊殿や妖怪の山、地獄、冥界などの代表が整列していた。
そしてその後方には、どこか重々しく、それでいてどこか楽しげな笑みを浮かべた八雲紫の姿もあった。
「……よく通る声ね。軍人というのはどこでも同じように、誇りを持って生きてるのね」
紫が小さく呟くと、霊夢はその言葉に黙ってうなずいた。
朝田三佐は既に部隊の中で、地図と命令を再確認していた。山森一佐は前線の歩兵部隊の中におり、ラミレス大尉とアレン少佐も、それぞれの小隊と共に臨戦態勢に入っていた。
そして――
「状況開始!」
無線に乗って発せられたその一言と同時に、静寂は破られた。
前線に配備された155mm榴弾砲が、耳をつんざく咆哮とともに火を噴く。M-109・99式・AS-90などが砲撃を開始し標的に命中させる
その爆音を合図に、湖上の「きりさめ」からも主砲による精密支援砲撃が地上の目標へ向けて炸裂。爆風が大地を揺らし、黒煙が高く舞い上がる。
上空からはUH-60J・CH-47G輸送ヘリが舞い降り、後方の物資輸送と兵員展開を展開。続けてAH-64Eアパッチ・ガーディアン、そしてD型が低空飛行で火力支援に入り、レーザー誘導ミサイルを発射。
地上では96式装輪装甲車、10式戦車、16式機動戦闘車、アメリカのM1エイブラムス、ブラッドレー歩兵戦闘車、ストライカー装甲車、さらにはイギリスのエイジャックス・ウォーリアー・シミター装甲車が、土埃を巻き上げながら一斉に前進を開始する。
その横には歩兵部隊が進む
ドローンが展開し偵察・攻撃・観測を行う
後方司令部から命令が出され、偽装されたCV-90、
Strif9040・ピサロが現れ兵士達が展開していく
その横を猛スピードで駆け抜けるランドローバー
【ディフェンダー】
機甲師団が道を拓き、歩兵たちはその後を続き、
訓練された動きで遮蔽物を確保し、射線を確保しながら連携を取っていた。
各国の無線が飛び交い、指揮官たちは状況を逐次把握しながら戦術を展開。
C-2から空挺団・C-17から【ハンヴィー】がA-400M輸送機から空挺戦車【ヴィーゼル2】から降下し空挺が
パラシュートで降り立つ
その様子を、後方の高台から見つめていたのは――霊夢、魔理沙、早苗、そして八雲紫。
「……これは、戦争の真似事とは思えないぜ」
魔理沙がぼそりと呟いた。
「でも、誰も死なせないためにしてるのよ。これが、本気で戦うってこと……なんだと思う」
霊夢の声は静かだったが、目は真剣そのものだった。
早苗も拳を握りしめ、吐息を漏らした。
「私たちも……ただの『幻想』じゃ、いられない時代が来ているのかもしれない」
紫は微笑を浮かべながらも、目だけは厳しかった。
「さあ――幻想郷の地に、人間たちは何を見せてくれるのかしら?」
その視線の先、砲煙と砂塵にまみれながら、**人間たちの「努力」と「意志」**が、確かに前進を続けていた。