【第38章:備え期待、繋がる日へ】
【現地との交流経て初めて信頼は生まれる】
護衛艦【きりさめ】が停泊する'霧の湖"は、いつにも増して人と物の動きがあった。
艦のデッキでは隊員たちがテントや展示資材を運び、整然とした動きで次々と設営を進めていく。艦橋では鬼頭二佐が資料を手に取りながら、マイクを通じて各部署に指示を飛ばしていた。
鬼頭二佐
「展示ルートは艦橋からCIWS前を経由して、艦尾の救命装備紹介へ。
子どもが多く来ることを想定して、安全ロープの確認を忘れるな」
『はっ!艦長!!』
伊吹副長『当日には多くの一般の方々が来られる!気合いを入れていくぞ!!』
『おお!!艦長と副長に続けぇぇ!!』
その傍らには、自衛官と共に歩くNATO兵の姿、アメリカ軍の軍医チームも。
彼らは自衛隊と連携して、災害医療ブースや衛生教育コーナーの設営を進めていた。
これは単なる艦内公開ではない。
「外の世界の“力”を、幻想郷の人々に“安心”として示すための大事な一歩」――
そう、南雲司令や吉田統合幕僚長たちがこの企画に込めた意志を、彼らは誰よりも理解していた。
一方、人間の里では
張り紙が掲示板に貼られ、住民たちが興味深そうに立ち止まっていた。
【告知】護衛艦「きりさめ」一般公開ならびに交流イベント開催
日時:5月29日 場所:霧の湖・きりさめ艦上
内容:艦内見学、防災展示、訓練、飲食ブース・
SH-60Lの試乗体験等
人々の間では、外の世界の艦や自衛隊に対する不安と同時に、好奇心も広がっていた。
村の青年
「戦のための艦、って聞いてたけど……なんだか、思ってたのと違うな」
農婦
「訓練? 何をするんだろうかねぇ?」
そして――幻想郷の少女たちにも、その情報は確実に届いていた。
魔理沙
「ふっふっふ、護衛艦【きりさめ】艦の中に入れるってよ。
こりゃ行くしかないだろ! どうせなら自衛隊が使ってる装備も見てぇしな!」
早苗
「展示ブースに『気象観測装置』って書いてありますよ! 気になりますねぇ!しかも対潜ヘリコプター【SH-60L】に試乗できるそうです」
萃香
「宴会はあるのかい? それが一番大事だよ♪」
紅魔館の咲夜もすでに厨房スタッフに指示を出していた。
「外の世界の食事に合う、幻想郷風アレンジ料理をいくつか用意するわ。お嬢様のお口にも合うように」
そんな中、霊夢は神社で招待状を見ながら、溜め息まじりに呟く。
霊夢
「まったく、面倒ね……でも、こういう時こそ行かなきゃいけないのよね。
“幻想郷の顔”ってのも、楽じゃないわ」
こうして、護衛艦【きりさめ】と幻想郷の間には、ひとつの“繋がり”が築かれ始めていた。
軍服に身を包んだ者たちがただ“威圧”ではなく、“対話と信頼”を生む存在になろうとしている。
そして、幻想郷の住人たちもそれに気づき始めていた。
次なる日――
交流という名の橋が、いま静かに、しかし確かに架けられようとしていた。