第37章:幕僚長達の残した意思そして次なる交流
翌日の午前7:45分
朝の幻想郷には、どこか清らかな空気が流れていた。紅魔館の広場、そこには自衛官たちの整列した姿、NATO兵士たちの凛とした敬礼、そしてアメリカ軍の将兵たちが整然と並んでいた。
その中央を、73式小型トラック・軽装甲機動車・トヨタ
【クラウン】の覆面パトカーに護衛された、一台の黒塗りのセンチュリーが静かに進んでいく。
中に乗っているのは――統合幕僚長、南雲統合作戦司令、および随行の高級幕僚たち。幻想郷訪問の使命を終え、彼らは静かに、再び「外の世界」へと帰っていく。
その間、彼等は笑顔で手を振り敬礼を行いながら…
センチュリーの車列が見えなくなるその瞬間まで、誰一人として敬礼の姿勢を崩す者はいなかった。
遠く離れたテラスから、それを見届けた者がいた。
それは紅魔館の主、レミリア・スカーレット。
赤い瞳を細めながら、静かに言葉を紡いだ。
レミリア
「……外の世界にも、まだ“高貴な心”を持つ軍人がいるのね。なんだか……少し安心したわ」
その言葉に、後ろで控えていた咲夜が柔らかく微笑む。
十六夜咲夜
「彼らの敬礼には、誇りと覚悟がありました。…あれが、“守る者”の背中ですね」
咲夜『守る銃後に憂いなしですか』
そして広場に戻った鬼頭二佐たちは、南雲司令から伝えられた“次の任務”を思い出していた。
【作戦指令:きりさめ地域交流イベント】
南雲司令からの指示は明確だった。
「幻想郷の者たちに、自衛隊とは何か――我々が何を想い、何のために存在するのか。
それを“言葉”や“演説”だけでなく、“行動”と“交流”を通じて伝えていきたい。
君たちには、護衛艦『きりさめ』を用いた一般公開や、防災展示などのイベント企画を任せたい」
艦長である鬼頭二佐は、その言葉を受けて腕を組む。
鬼頭二佐(きりさめ艦長)
「はい……やるからには、完璧にやらせてもらいます。
これはただのイベントじゃない。幻想郷の人々と、本当の意味で“繋がる”第一歩だと考えよろしいですね?」
幕僚長は静かに頷く
隣にいた朝田三佐は頷き、続けた。
朝田三佐
「演説や戦術では伝えきれない想いがあります。
地域に根差した活動こそが、我々自衛官の真価です」
さらに、山森一佐も熱を込めて言う。
山森一佐
「私は山で命を救われた妖怪たちの言葉を忘れません。
“あなたたちはただの軍人じゃない”……そう言ってもらえた意味を、今度はこちらから示す番です」
マクファーソン准将も、傍らで一言、静かに加えた。
マクファーソン准将
「いい動きですな。信頼とは戦場で築くだけではない。
日常の中でこそ、人は“味方”を見極める。
我々、NATOも協力しよう。彼女たちの笑顔を守るために、"誰かの笑顔を守るために戦う"…それは私が軍士官学校を卒業した日…自分の信念として胸に抱いた想いです」
こうして、護衛艦**「きりさめ」一般公開および防災・交流イベント企画**が静かに動き出す。
それは単なる軍事展示ではない。自衛隊が幻想郷という“異なる文化”に対し、
「対話と信頼を紡ぐ」ための最初の橋であった。
幕僚長達の信念を引き継ぎ、次の世代へと繋げる。
それが、この幻想郷に現れた“誇り高き軍人たち”の役目だった。