【紅魔館・来賓用応接間ーー夜】
会談を終えた後、統合幕僚長と南雲統合作戦司令は、紅魔館内に用意された部屋で静かに言葉を交わしていた。天井には洋風のシャンデリアが揺れ、重厚な木製のテーブルに湯気を立てる紅茶の香りが漂っている。
吉田統合幕僚長
「……我々を、信じてくれるだろうか」
南雲司令
「いえ、まだでしょう。幻想郷の者たちは簡単には心を許さない。しかし――
それでも、ほんの少しでも我々の“信念”が伝わったのなら……それだけで十分です」
そのとき、ノックの音が響く。扉が開かれ、入ってきたのはマクファーレン中将、そしてマクファーソン准将だった。
マクファーレン中将
「静かな夜ですね。将官たるもの、静かな時にこそ一番思考が研ぎ澄まされるものです」
(椅子に腰を下ろすと、深いため息をついて)
「……正直に申し上げますと私は今日の会談で、自らの“誇り”を失いかけていたことに気づかされました。
私は多くの戦場を経てきたが、その中で目的が薄れていた。だが――」
マクファーソン准将
「“なぜ守るのか”、その問いに真正面から答える姿勢。
私は日本の自衛官から、それを思い出させてもらうことができた、ありがとう。アメリカの軍人としての誇りを、再び握りしめることができましたよ」
そこへ、扉の向こうから足音が響き、朝田三佐、鬼頭二佐、山森一佐、霊夢、魔理沙、早苗たちが姿を見せる。
朝田三佐(敬礼をしながら)
「お見事でした。吉田統合幕僚長、南雲司令。我々も、なぜ戦うのか――その答えを見つける一助となりました」
鬼頭二佐
「艦長として、兵を預かる者として、非常に貴重な学びを得ました」
山森一佐
「我々の世代が、それを次に繋げていきます。どうか、見守っていてください」
統合幕僚長は静かに頷き、深く椅子に背を預けながら言う。
統合幕僚長
「期待している。君たちのような若い世代が、次の平和を担うのだ。
我々は“未来に託す覚悟”を持たなければならない。
そのために、今を生き抜き、信念を示す義務がある」
その言葉に、霊夢たちも押し黙る。沈黙は決して重苦しいものではなく、心を震わせる静けさだった。
そのとき、小さな足音が廊下から近づき、扉の隙間から顔をのぞかせたのは――フランドール・スカーレットだった。
フランドール
「ねえ……あなたたち、立派な軍人だね。私、聞いてもいい?なぜ、そこまでして……私たちを守ろうとするの?」
部屋が一瞬、静寂に包まれた。全員の視線が統合幕僚長に向けられる。
彼は立ち上がり、フランの目線に合わせて膝をつき、真摯な声で答えた。
統合幕僚長
「私たちが守るのは、“国”や“命令”だけではない。
目の前で怯えている誰か、声を上げられない誰か――
その人たちの“希望”を守るために、私たちは立っている。
それが、自衛官としての役目であり……私個人の信念でもある」
その言葉に、部屋の誰もが息を呑んだ。
そして――
部屋の奥でその様子を見ていた八雲紫が、無言で歩み寄り、統合幕僚長にそっと手を差し出した。
八雲紫
「あなたは、まぎれもなく“守るための軍人”ね。その信念を忘れないで、誇り高くそして強い意志を持ち戦う姿、とても良いわ、吉田陸将・南雲陸将――ようこそ、幻想郷へ」
統合幕僚長はその手を、力強く握り返した。幻想郷と人間の世界――
山森一佐『け、敬礼!!』その号令を合図に
朝田三佐等自衛官は敬礼を行う、その姿勢はまさに気品に溢れていた、間にあった“疑念”という霧が、ほんの少しだけ、晴れた夜だった。