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第35章:"幻想に現実の軍事は必要なのか"

幻想郷各地を訪れた自衛隊・NATOの将校たちは、それぞれの地で実力者たちと面会し、問いに答えていく。

冥界の西行寺幽々子には、「生と死の境にあるこの地で、なぜ“現実”の軍事を持ち込むのか」と問われ、藤野陸将補が静かに答える。

「武器は恐怖を生むが、理解のない力こそ、より大きな戦火を招く。だからこそ、我々は話す。訓練をする。守るために――」


仙界の閻魔、四季映姫はこう言う。

「幻想郷の秩序は、“力の行使”ではなく、“信頼”によって成り立っています。あなたたちの世界とは違うと理解できていますか?」

その問いに、フランス軍NATOの士官が語る。

「私たちの国々も、かつては信頼を失い、幾度となく争いました。だからこそ、我々は今、対話と抑止の両輪を学び続けているのです」


隠岐奈はただ、微笑を浮かべる。

「あなたたちは“守るための力”と言うけれど、その力に守られる者が、必ずしも同じ理を共有するとは限らないわ」


それでも自衛隊の海江田海将補は答える。

「ええ、だからこそ、我々は命を賭けても説明し続けます。誤解される覚悟を持って、ここに立っています」


そして、妖怪の山では、陸上自衛隊の東部方面隊

立川駐屯地所属【レンジャー部隊】の森田一佐が

伊吹萃香、茨木華扇、星熊勇儀の三名と対話に臨む。

彼は、レンジャーになる上で富士山麓にて行われた1週間に渡る過酷な訓練、熊本震災での災害派遣で何度も山間部に入った経験を語る


「我々"自衛隊"は人を助けるために存在する防衛組織です、そこを強調します」としての自衛隊を説明する。


「自衛官は戦うためにだけ存在するのではありません。必要なのは、“何のために戦うか”を問い続けること。

それが、我々の制服の意味です」


勇儀は腕を組み、萃香は興味深そうに首を傾げる。

そして華扇が呟く。

「……その覚悟と思想が、幻想郷を乱すものでなければ、話す価値はあるわね」


一方、月の勢力との会談は、未だ慎重に進められていた。彼女たちは、地上の“力”が月に波及する危険性を懸念しており、衛星通信による限定的な対話のみが許可されていた。


【妖怪の山/地脈の広場】


標高の高い風が吹く開けた場所。妖怪の山の奥地に、

自衛隊の簡易ブリーフィングテントが設営され、その前に【特務隊】と呼ばれる自衛隊の特殊部隊指揮官の

山森一佐が立つ。彼は迷彩服の上に階級章をつけ、まっすぐに萃香たち三人を見つめていた。


「……我々は軍靴でこの地を踏みしめたこと、まずはお詫びしなければなりません。ここはあなたたちの故郷であり、私たちは部外者ですから」


伊吹萃香は瓢箪を傾けながら肩をすくめた。

「ま、話を聞くくらいはするよ。こちとら千年の暇人なんでね」


茨木華扇は険しい表情のまま、問いかける。

「“演習”という名の力の誇示。あなたたちの世界ではそれが“平和”なのですか?」


山森は一呼吸おいて、口を開いた。

「我々が演習を行うのは、戦うためではありません。“戦わなくて済むようにするため”です。

自衛官は、敵を倒す前に、まず“国民の命を守る者”として訓練を積んでいます。

災害、紛争、国際的な救援活動・海賊退治、そして戦争の備え。世界で起こるあらゆる危機に備えるのが我々自衛官の責任です」


萃香が眉をひそめる。

「でもさ、それって“怖がらせる力”でもあるだろ? 見せつける必要あるのかい?」


「分かります。ですが――」と山森は続ける。

「現実には、話し合いだけでは止まらない暴力も存在します。私は自衛官になる前、阪神淡路大震災と東日本大震災の現場に救援隊員として参加しました。

泥に埋もれた街で、子供の手を握ったまま冷たくなった母親を、私は何人も見ました。助けられなかった後悔が、今も私の胸にあります。

そして、助けるためには“備え”が必要なのだと、痛感しました」


その目に宿るのは、軍人の冷静さではなく、一人の人間としての苦悩と覚悟だった。


星熊勇儀が腕を組み、無言のまま山森の目を見つめる。そして静かに言った。


「覚悟だけじゃ、世界は変わらない。でも――覚悟のない奴が世界を守れるとも思わない」


「ご理解頂き、ありがとうございます」と

山森は頭を下げた。

「私たちの覚悟は、何も銃を撃つためのものではありません。撃たずに済むように、対話と訓練を重ねるための覚悟です。

この地で演習を行うことにも賛否があるのは理解しています。だからこそ、こうして皆さんと話し合うことが必要なのです」


華扇は黙って彼の言葉を噛み締めるように視線を落とし、やがて言った。

「……自衛官であっても、そうやって“話す”ことを選ぶのなら、私たちも“聞く”ことを拒む理由はないわ」


萃香がにやりと笑い、瓢箪を放り上げた。

「面白い自衛官じゃないか。いいぜ、演習とやら、ちょっと見せてもらおうじゃないか」


勇儀は頷き、こう結んだ。

「力がある者が語る言葉ほど、重いものはない。――お前の言葉、しかと聞いたぞ」


『ありがとうございます』

山森一佐は実力者たる鬼の三人に認められたことに感謝し

敬礼を行った

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