第33章:「それぞれの正義、交わる地点」
■幻想郷・守矢神社近郊、臨時連絡所にて
合同調査隊と幻想郷住民による技術・文化交流会が開かれていた。日本から持ち込まれた非常用電源、浄水装置、簡易衛生テントなどが設営され、早苗がその意味と背景を説明していた。
早苗
「ご説明いたします、これは災害時、避難民の衛生を確保するための“仮設インフラ”です。かつて私の故郷では、地震や津波のたびに使われてきました、そのたびに自衛隊・警察・消防・海上保安庁の方々が助けに来てくれました」
東風谷早苗は、元“外の世界”の人間。だからこそ、幻想郷と外の世界の価値観の差に敏感だった。
一方、里の者や妖怪たちは「機械の存在」に戸惑いを見せていた。冷たい金属の装置、規則正しい動き、そして「効率性」。
村人
「……便利かもしれないが、どこか“人間味”が無いように思えるな」
早苗
「でも、それで救われた命が何千とあるんです。無味乾燥でも、それは“命を支える形”なんです」
自衛官『これらの装備は全て実際に災害時などで使用され
2024年に発生した能登半島地震においても使用されました』
PKO活動・災害派遣を経験してしている彼等だからこそ言える話で里の人や妖怪たちは頷いた
■同時刻、月面軌道周辺—月の勢力・哨戒拠点
綿月依姫が静かにモニターを見つめていた。映っていたのは、幻想郷に展開する航空宇宙自衛隊の幕僚会議の記録。
綿月依姫(軍服を正しながら)
「人類はまた“力”を交渉材料として持ち込んだか……愚かにして、哀れ」
背後から、綿月豊姫が静かに言う。
豊姫
「でも依姫様、彼らは“滅ぼすための力”ではなく“護るための力”と称しているわ。
――それを“偽善”と断じるには、あまりに彼らの瞳が真っ直ぐすぎる」
依姫
「真っ直ぐすぎるがゆえに、簡単に折れる。
だが……もし折れなかったら?
それがこの幻想郷に何をもたらすのか、私は見極めなければならない。月の未来のためにも」
■日本・横田基地、在日アメリカ宇宙軍連絡事務所
【:実在人物モデルによる高官対話】
アメリカ宇宙軍:マーク・D・ホイットン大佐
航空宇宙自衛隊:志水二等空佐
ホイットン大佐
「我々はただの軍ではない。通信衛星の防衛、地球低軌道上の安全確保……この幻想郷が実在し、地理的にも“地球圏内”にある以上、放置はできない」
志水空佐
「同意します。日本としても、この空間が“どの座標に存在しているのか”を科学的に解明する義務があります。ただし、武力行使ではなく、あくまでも観察と協調によるアプローチが前提です」
■博麗神社・宵の頃
魔理沙と朝田三佐が境内の縁側に座っていた。
魔理沙
「なあ、朝田三佐。あんたたちって、すげー優しいな。でもそれが通じないやつが来たら、どうすんだ?」
朝田三佐(小さく息を吐く)
「そうですね……それでも、まずは話すよ。それでもダメなら、自衛のため必要最低限だけ戦う。
――“相手にも正義があること”を理解しようとする努力を諦めた瞬間、衝突となります、実際にカンボジア内戦で自衛官が殉職した事例があります」
自衛官『こういう言葉があります〈戦争に絶対悪はない"それぞれ違う"正義と正義"の衝突である〉と』
■ラストシーン:月の裏側—依姫、
幻想郷国際会議の進展を受け、綿月依姫は静かに月面神殿から空を見上げる。
依姫
「あなた方に問いましょう。
“力を持ちながら、それを振るわぬ覚悟”……その覚悟に、果たして“未来”を託す価値があるのか」
その目に浮かぶのは、怒りでも諦めでもない――淡い“希望”の光だった。
そしてモニター越しで志水二空佐は答える
志水二等空佐『あります、若者がいる限り、我々を信じている者達がいる限り我々は"価値"があると信じた疑いません。そして、いつか"分かり合える日"を待っている…
例え果てしない時間がかかろうとも、我々は努力を怠りません、そして次の世代に伝えなければならないのです、先人達が後世に残した大切な意思を…人を信じ互いを分かち合うという喜びを…私は心から信じています』
志水二等空佐の言葉に依姫は静かに頷いた
そして一言語った
依姫『なるほど…あなた方は高潔な精神をお持ちのですね』
依姫をはじめとする月の民の改革派・保守派の一部は
自衛官である彼の言葉に希望を見出した